表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウル・カートリッジ  作者: 鶸十六度
1/8

 

 少女は笑っていた。    


 何故だろうか、視界が霞んでいて口元しか見えない。少女の顔が近づいてくる。それから目を離せないでいると、彼女は俺に囁く。


  「ね、このまま……そう。上手よ」


 右腕をぎゅっと握られる。彼女の手は震えているようだった。俺は何かを言いたいようだったが、声が出ない。はくはくと口を動かすだけしかできなかった。代わりに彼女が口を開く。


「……大丈夫だから、捻って、お願い。ちょっと手首を捻るだけでいいの……」  


 何の、話だ?

 浮かんだ疑問に思わず手元に意識が向く。しかし見てはいけない気もして、綺麗に弧を描く少女の口元を──


「ゲホッ……ン、?」  


 ──血だ。少女の口の端から血が垂れている。視界が下にずれる。真っ赤だ。彼女の服も、俺の服も、俺の手も、それから、俺が握っているナイフも。

  あ、あ、と喉から漏れる小さな声をあげて彼女を突き飛ばす。肩を押した手はカタカタと震えている。少女は重力に従って大きな音を立てて後ろへと倒れ込んだ。うつろな瞳だけがキョロ、とこっちを向く。海の色をした青い目だった。 薄い唇が開く。血に汚れた犬歯が隙間から覗いた。


「へたくそ」


  彼女がそう呟いたのを最後に、視界は真っ白に染まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ