第78話 文明開化の銃声(おと)
オレはこれまで、こちらの異世界において産業革命のように劇的な文明の発展をさせないように考えて行動してきたが、前回の戦いで下位のアンデッドたちが属性相性が不利な天使どもに苦戦していたのを教訓とし、遠距離攻撃の手段を持たない死鬼たちに銃器を装備させて銃士隊の編成を考えていた。
さすがに知能レベルが低下した屍鬼にまで、細かな操作を習熟する必要がある銃器を持たせても効果が出ないので、屍鬼の次に頭数が揃え易い死鬼に扱わせるのが最適だと考えた。
経験を積んだ死鬼は、接近戦能力だけなら吸血鬼に引けを取らないくらい強くなるまで成長するから、こいつらに銃器を持たせたら正しく鬼に金棒……鉄砲か、とにかく武器による大幅な戦力アップが期待出来るという事だな。
簡単に銃器と言っても、こちらの異世界には魔術の結界とか色々な防御手段あって、元居た世界の常識では測り知れない事柄も多いから、苦労してNATO弾を使用するライフル銃を作ってみた所で全く通用しない相手がゴロゴロ居ると思われる。
なのでせっかく作るのなら、せめて古龍のドテッ腹に風穴をブチ抜けるほどの威力で無ければ武器として通用しないと考えておいた方が良いだろう。
オトコなら(使うのは配下の死鬼たちだが)銃にはロマンをいっぱい詰め込んで、一気にブッ放すのが正しい選択だと思うからな。
だから最初は12.7ミリ弾くらいなら製作出来るのではないかと考えたが、今の技術では魔法陣を仕込む為には最低でも20ミリ以上の大きさが必要だと開発陣から意見が上がってきた。
でもこれくらい大きなサイズなら、例え相手が現代戦車だったとしてもダメージを与える事が出来そうな気がしたので、こちらの異世界でもそれなりに役に立つはず……と、考えていた時期がオレにもあった。
構造がシンプルな火縄銃程度であれば問題なく試作品を完成させる事が出来たが、ショコラの3D生成スキルを用いる事無く、均一的かつ安定的な製造ラインを作るには色々と足りないモノが多すぎた。
なので魔術で銃弾を撃ち出すのでは無く攻撃魔術そのものをブッ放す仕様へと変更し、安価に製造できそうな鋳鉄製の薬莢に魔術式を仕込む事になったのだが、これは薬莢の鋳型に予め書き込んだ術式を転写させる方式だったのだが、鋳鉄素材にも改良を加える事で精密な図形を正確に刻印する事が可能となった。
そして銃本体については最初から小型化を目指すのではなく、最低限の機能のみを盛り込んだ魔法銃を後から量産が可能な形状を条件に作り込みを行い、部品数の減少化と水中や泥塗れになっても正確に稼動する構造を追求した結果、何故か元の世界で敵国が使用していたライフル銃を彷彿させる外観に行き着いたのだが……オレの拙い知識ではセミオート機構を完全に再現出来なかったので、次にボルトアクション機構も考えてみたのだが、中距離戦で使用するならレバーアクションの方が良いと考えて、それっぽいモノを作ってみた。
こうて完成したのは元居た世界ではアンチマテリアルライフルと呼ばれた銃器とよく似た外観を持つ、全長約1.5メートルほどの大型ライフルで、バレル長さが80センチ以上もあって、前方下部にある固定用二脚で銃身を安定させて大型スコープで狙いを付ける物々しいデザインとなった。
これほど高威力の攻撃魔術を撃ち出せる銃となれば、かなりの大きさと重量を伴う事になるが死鬼となった者たちの筋力なら片手で持ち運べるし、常人の十数倍もの腕力があるから銃の反動も無理やり抑え込めると思う。たぶん……。
また、これらの大型弾を使用する際に反動が大きすぎて狙いがブレるのを抑制する為、マズルブレーキ機構も盛り込んでおいたので、使用する魔術弾にもよるが最大有効射程は1000メートル以上の性能になった。
あと攻撃魔術の射出速度を確認したところ、弾丸を撃ち出す銃と比べて約2倍(秒速1800メートル)ものスピードが出ていたので実戦で使用するのに問題は無いだろう。
後は魔法銃の実戦テストを行って繰り返し改良を重ねて行けば、近いうちに通常サイズのライフルとかハンドガンも製作できるようになるはず。
それから城の地下迷宮に新たな階層を追加して、そこに射撃訓練場まで造って試射を重ねながら改良を加えて行く作業はオレの地道な性格に合っていたのか、とても楽しい時間を過ごさせて貰った。
あとオレの仲魔たちで狙撃の腕前が飛び抜けて上手かったのはメイで、彼女は動く目標に対しての命中確率がほぼ100パーセントと他者の追随を許さなかった。
さすが未来予知を持つメイは射撃チートのレベルが違った。




