第77話 エリーゼの訴え
ロード:主人公、吸血鬼の君主
プリン:ロードの眷属、暗黒神官(元教会の神官)
エリーゼ:異世界転生者であるクロノの恋人、悪魔族、二人ともロードの配下
リン:元光の勇者、今はロードの眷属で光闇の勇者、ディアーネの幼馴染
ディアーネ:元光の聖女、今はロードの眷属で光闇の聖女、リンの幼馴染
ユナリア:元エルフのドッペルゲンガー、メイプルの双子の姉
フェイリン:吸血キョンシー(ヴァンシー)、泣かしたら殺される
シルヴァニア城へ戻りオレの執務室へ向かう廊下の途中で、どこかで見覚えのある魔族の女性がうちのプリンに行く手を阻まれて困っていたので声を掛けてみた。
「だから、アポ無くでやって来て、いきなりロードしゃまに会わせろなんておバカは死ねばいいの」
「だから私はロード様に血を授けて頂いた眷属ですと、先ほどから申し上げているではありませんか!?」
「ロードしゃまが貴女のようなケバケバしい女を相手にするワケ無いの。早くここを立ち去らないと死ぬより辛い運命が貴女を待ってるの」
二十代半ばの妙齢女性が目の前に居るJCくらいの少女を相手に、絶望的な戦いを始める前に発見出来たのは今日一番の幸運だと言えるだろう。
いくらその女性がデスデーモンと呼ばれる魔族で、かなりの実力者だったとしても、今彼女の目の前に居るプリンを相手にするなら、手も足も出ないうちに肉ダンゴにされる未来しか残されてはいない。
「そこに居るのはエリーゼじゃないのか?」
「ロードさま! エリーゼです! 今日はご相談したい事があって伺わせて頂きました!」
「だから、ロードしゃまはお忙しいの。アポ無し女なんてお会い出来る訳無いの。これわもうおダンゴにするしか無いのw」
「待て、プリン! 早まるんじゃない!」
確かにエリーゼが来るなんて聞いてはいなかったが、それを理由に彼女を亡き者に、ましてや肉ダンゴにするなど以ての外だ。相手は仮にもオレの血を分け与えた眷属の一人なんだぞ? 出来れば身内同士は仲良くして貰いたい。
そしてエリーゼを拐うようにして執務室の扉を潜ると、直ぐ後ろからショコラもついて入って来た。
「それで、クロノの事なんだろ? ここで話してくれ。向こうでは一体何が起こってるんだ?」
「はい、その事なのですが……」
それは、あの天使どもとの戦いの後、通常のダンジョン運営に戻り付近の探索を行っていた時に、ふらふらと行き倒れかけていた悪魔族の女性数名を保護したのが今回の発端であると聞いた。
悪魔族と一口に言っても、上は元天使の|堕天使から下は小悪魔までと、その種別は多岐に渡るが今回保護した者たちは自らをデビリッシュと名乗り、遥か昔に堕天した天魔が長い年月を経て悪魔族となった者たちという触れ込みだった。
クロノたちデモーニッシュとは全く別の種族ではあるが、その外見は非常に良く似通っておりオレたち部外者から見れば全く見分けがつかないと聞かされる。
でも、それだけなら特に問題は無いのだが保護した悪魔族全員が妙齢の女性たちで、保護したクロノに対して好意を抱く者が出てきたせいで今回の揉め事になったらしい。
ま……クロノのヤツもヤリたい盛りの元男子高校生だから、異性に対する免疫が弱くてまたやらかしてしまったのだろうが、それだけならタダの痴話ゲンカとして無視を決め込むつもりだったのだが、エリーゼが言うにはどうにも何かキナ臭いという事らしく、ただその理由が『女のカン』だけでは調査を始める理由としては十分ではない気が……。
「彼女たちは保護してくれたクロノが頼もしく見えて、感謝の念が親愛の情に変わっただけではないのか?」
「クロノさまが頼もしい訳無いじゃないですかーー!!。あれはきっと何らかの理由があって近づいて来たに間違いありません。そうで無ければヤツらの目を盗んでここまで飛んで来たりしません!」
一応はオレの血を分けたエリーゼの言う事なので、彼女の言動にウソやまやかしが無い事は判るが、そうなると一体誰が何の目的でクロノに近づいて来たのかが判らない。
仮にオレやクロノ以外の転生者が特異点として他に存在しており、たまたま見つけたクロノのダンジョンを攻略する為に戦力その他の情報を欲していたとして、わざわざ成功するかどうか判らないハニートラップを最初から仕掛けて来るのは非効率過ぎるだろ。
それにもし何らかの情報を元にハニトラが有効だと判断されて今の状況になったのだとすれば、オレたちの陣営は既に後手に回っていると言う事になるが……。
「ロードくん、何か問題なのかな?」
オレとショコラとエリーゼの三人以外、誰も居なかったはずの執務室に突如としてリンが姿を現す。
「リン、お客様が来てる時はテレポで部屋に来るのは禁止だと皆にも言っておいてくれ。それとお前にはカイのダンジョンの応援へ行って貰おうと考えていたんだ。カイの所が真っ昼間に地上の薬草を根こそぎ乱獲されて困ってるみたいだから、ここは昼間に制限を受けないリンに行って貰いたいんだ」
「いいよ、カイさんのとこだね。それなら直ぐに行って来るけど、今から誰かヘルプを連れて行ってもいいかな?」
「ああ、それならディアに頼んでくれれば良い。リンとディアのコンビならオレも安心だからな」
「ロードくん、今『ディアーネ』じゃなく『ディア』って呼んだね? さっきディアの機嫌が良かった理由はそれかな~w? それじゃちょっと行ってくるよ」
話しながら姿を消したリンが向かったのはディアの私室だろう。あの二人がコンビを組めば我が軍最高の戦力になるから、これでカイのダンジョンについては時間が解決してくれるだろう。
だがクロノの所は、まだ何が問題なのか詳しく調べる必要があり、諜報活動を頼むならユナが最適なのだが、さすがに未知の危険がある地下迷宮に彼女一人でと言う訳にはいかない。
ユナと一緒に組ませるのならメイが一番だと思うのだが、彼女はこの街の運営に深く関わっており今すぐ他の別の誰かに引き継ぐという訳にもいかないし、まだ吸血鬼の身体に慣れていないメイを危険な城外へ出すのは不安が残る。
「マイロードさま。ユナさまのヘルプなら、このフェイに任せて欲しいアル」
またしてもオレたち三人しか居ないはずの執務室の中から別の人物の声がした。
「フェイ、さっきリンにも行ったが執務室にはテレポで入って来るんじゃない」
「わかたアル!」
最悪の場合、フェイなら悪魔族の群れを相手に格闘戦になっても、単独でこの城まで戻って来られる実力を持ってるからその点は安心だが、彼女の性格で諜報活動なんて繊細な芸当が出来るのだろうか?
「たいじょぶアル。怪しいヤツはみんな捕まえて身体に聞いてくるアルよ?」
「ちなみにどうやって聞くんだ?」
「とてもマイロードさまには言えないアル……」
頬を赤らめながら斜め下へと視線を伏せたフェイが一瞬だけ可愛く見えるが、一体どのような方法なのか聞くのが怖くなってきたので、どうしようかと思い悩んでいると……。
「ロード君、私ならフェイと組んでも大丈夫だよ!」
「ユナ、さっきリンとフェイにも言ったんだけど……」
「この執務室にはテレポで来るな、でしょ?」
「判ってるなら入口から来てくれ」
「でも、このテレポって便利なスキルよね。それでクロノ様のダンジョンへ行けばいいの?」
とりあえずユナとフェイの二人には、エリーゼから相談を受けたクロノのダンジョンに居る悪魔族女性たちの目的を調べて欲しいと頼んでおく。
エリーゼはクロノの元へ帰りたがったが、悪魔族の女たちが敵だった場合にクロノの弱点であるエリーゼが狙われる可能性が高く、ユナたちの調査が終わるまでの間うちの城で待って貰う事にした。
「ロード君、それじゃ行って来るから!」
「マイロード様、行て来るアル!」
ユナとフェイの二人が部屋から姿を消した後、ショコラに頼んでエリーゼをゲストルームへ案内して貰ってから、オレはこれから工房へ用事がある伝えておいた。
画像生成AIでイラストを作成する時に、どうせなら過去に書いた作品のシーンを再現していたのですが、プロンプトを作成する時に話を読み進めているうちに、その続きを読みたくなってしまいました。
続きの話を書くと生成AIの時間が少なくなってしまいますし、生成AIでイラストを作成していると執筆が止まってしましますから困ったものです。




