表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界吸血鬼 ~前世も吸血鬼なんだが?~  作者: としょいいん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/94

第6話 キャッスル・シルヴァニア

「ショコラ、この城がある地域情報をマップ上に重ねて表示してくれ」


挿絵(By みてみん)


 すると玉座の間の壁面に光が集まり空中に浮かび上がってきた四角形のパネルには、この城を中心とした付近のマップが表示される。城から北側は深い森というか森林地帯で魔族領という事になっており、その反対の南側を見れば約100キロメートルくらい離れた場所に人族の城塞都市があった。


(確かあの冒険者パーティも、あの城塞都市からやって来たと言ってたから、後で詳しい話でも聞いておこうか)


 そこはアルニード教国に属する街で『城塞都市サントール』と言って、街の人口は十万人くらいで、この世界では中規模都市に分類されるらしい。

 この城塞都市のさらに南側には、この街の食糧を賄う農耕地が広がっており、この場所が魔族の侵略から人間たちの生活圏を守る防衛拠点であり、逆に魔族領へと侵攻する際の前線基地となる重要な地点のようだった。


 ダンジョンを攻略しにやって来た冒険者パーティの処置が一段落着いたので、これからの方針を考えてみると、とりあえず今ここにある手持ちの戦力だけでは進撃はおろか、防衛するとしても戦力が足らない状態を先に何とかしないといけない。


(今はシミュレーションゲームで言うところの、内政ターンに集中すべきだろう)


 考察として、戦争がある時代の内政としては富国強兵策が基本だが、現在オレの配下と呼べるのはダンジョンコアのショコラを除くとレオンたち五体しかいない。

 そのうち三体には城の防衛任務を命じてあるが、元魔女っ子(エルダーリッチ)のドロシーが防護壁を造っている最中だし、元少女神官は精神OSの再起動中と言ったところか。


 少ない人数で防衛任務を担っているレオンたちには、直属の配下としてスケルトンソルジャーをポイント召喚してやれば、多少の助力にはなるだろう。

 できればスケルトンナイトやスケルトンメイジなどの上位アンデッドも召喚してやりたいが、これらの兵種にはポイント以外にキーとなる素材も必要で、今は召喚する事が出来なかった。

 現状の乏しい戦力を手っとり早く揃える方法としては、少女神官が言ってたように、どこかの騎士団でも攻めて来てくれれば、そいつらをまとめてアンデッドにして多少の人手不足解消になるとは思うが、そんな上手い話なんて、そうそう無いだろうな。


 そういえば、このダンジョン以外にも特異点が発生したと、少女神官が言っていたのを思い出す。


 その特異点とやらは、オレと同じように異世界から誰かがやって来てダンジョンを作ってるって事だろうか? ラノベとかゲームではダンジョン同士の戦争もあったから、オレもいつかどっかのダンジョンや、人族の国との戦争に巻き込まれると思うから、戦力の拡充は急いだ方が良い。


「マスター、この城の命名をお願いします」


 そういえば先ほどから気にはなっていたが、目の前に表示されているマップのアイコンには『名称未設定』と表示されたままになっている。

 まだ外観は確認していないが、仮にも西洋ファンタジー風の古城を選んであるから、それにマッチするカッチョイイ名前がいいに決まってる。


(だが何城と命名すればいいのか、それが閃かない)


 オレは元の世界において、『神の尖兵(ディバインワンズ)どもから『シルヴァーデビル』と呼ばれていたが、それはオレの銀髪姿が敵から見て判りやすい身体的特徴だったからで、別に自分から名乗った訳ではない。

 あの頃は特に気にもしなかったオレの二つ名だったが、いざ自分の居城となったこの場所に『シルバー』から始まるネーミングなら、しっくりくるかも知れない。


 オレの目の前には、両手を目の前に組んで瞳をキラキラさせたショコラが今も待ってるから、できるだけ早く決断した方がいいだろう。


挿絵(By みてみん)


「シルヴァニアだ」


 オレはぶっきらぼうに、ただ一言そう言ってショコラの反応を待つ。


「素晴らしいお名前です! まるで私のような人ならざる者たちが和気藹々と、永遠に仲良く、そして幸せに暮らせそうな気がして参りました。国名が『シルヴァニア』で、ここが『シルヴァニア城』という事は、私たちの眷属は『シルヴァニアファミリー』という事ですね! 了解です!!」


 ちょっと待て……確か元の世界でよく似た名前が商標登録されていたと記憶しているが、『ヴァ』と『バ』の違いがあるから大丈夫だろう。

 なんかパクリみたいで少し気が引けるが、喜んでるショコラに水を差すのも何か気まずい。まさか、こんな辺鄙な異世界までやって来て、今さら訴訟問題になるとは思えないから気にしない事にしよう。


 こうして正式にダンジョンマスターとなったオレは、ダンジョンの初期ポイントを使用してこの玉座の間の後ろに執務室と寝室、キッチン、リビング、シャワールームにトイレなど、文化的な生活を営むのに最低限必要な施設を次々と整備して行く。


 この他にも地下から温泉が湧き出るとショコラに聞いたので大浴場の追加も行ったが、完成には数日は日数が必要だと言われたので辛抱強く待つ事にした。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 城内施設の作成指示を終えてから、城の周辺の状況が知りたかったので、ダンジョンコアのショコラから報告を聞く。


「シルヴァニア城の北北東、約20キロの地点において移動中の武装集団を発見しました。その数は約200名規模の部隊で、真っ直ぐ北を目指すルートを進んでいます。このままなら当方には気づかず通過する可能性が高いと思われますが如何致しますか?」


 先ほどこの城型ダンジョンに『シルヴァニア城』と命名した事によって、パッシブ型長距離レーダーを含む、いくつかの機能が解放されて少し便利になっていた。


 そしてここから武装集団までの距離が約20キロという事なので、探知スキルが使える者が居たら向こう側から城を発見されてもおかしくない距離だな。


 オレはこの異世界に来たばかりで何の準備も出来ていない現状なので、今はまだ他国や教会勢力とは比べるべくも無い弱小集団と言わざるを得ない。だからこちらが戦力を蓄えるまでの間は、出来るだけ自分たちの存在を秘匿しておきたいと考えている。


「ショコラ、この城に認識阻害か光学迷彩の結界を張る事は可能か?」


「既にその二つと併せて、対物理と対魔法シールドも展開済みです」


 うちのダンジョンコアは、かなり出来る子だったようで少し安心した。


 最初は話し方が簡素なAIっぽい印象で心配だったが、マスター契約した事でオレの持つ知識の一部を共有して意識レベルも向上したのだとショコラから聞く。


「先ほどの武装集団について詳細な情報が欲しいが、何か判る事はあるか?」


挿絵(By みてみん)


 すると、今度は壁面では無く目の前の空間に光が集まり大きなスクリーンが現れ、お揃いのスケイルメイルを装備し、槍と盾を背負いながら騎乗した一団が行軍している姿が映し出される。


 規模的には中隊規模の軍隊といったところだが、約200名も居る全員が騎馬兵とは、なかなか金の掛かった一大戦力と言えるが、魔術士とか神官などの魔法戦力が居ない騎馬隊のみの単一兵種であれば、今のオレにとってそれほどの脅威には成らない。

 それにこちらの異世界がテンプレ通りの設定なら、元の世界で言うところ中世くらいの文明レベルだと思うから、兵站の重要性についてそれほど理解が進んでいないだろうし、そういった事も踏まえて攻略をしてやれば少ない戦力で勝利するのは可能だろう。


 何しろ味方はアンデッドばかりで補給がほとんど要らないから、軍として考えた場合に反則チートレベルの強みだったっりする。


「奴らが何処へ向かっているか判るか?」


 集団の中には、馬上から使用する小型弓を背負ってる兵士も多く居るみたいだが、さすがにこれでは兵種が偏り過ぎている。


「マスター、推測ですがあの者たちはエルフの敗残兵を追撃している部隊だと思われます。彼らの前方約5キロ先に逃走中のエルフ4名の姿を確認しました」


 これがネット小説なら、エルフとドワーフは人族側勢力のはずなのだが、この世界では少し事情が違ってるみたいで、もしかしたら亜人種全てが迫害されてる世の中なのかも知れない。


 ショコラの説明によれば数が増えすぎた人族たちが、今やこの世界を席巻するほどの一大勢力となっており、食糧の確保の為の領土拡大政策の為に日頃から亜人種勢力への侵略を行っているが、その契機となったのは今から約2000年前にあった魔王大戦での敗北が理由だとされる。


 そして魔王が倒された後に、徐々に勢力を伸ばしてきた人族たちの間に天主教が広まり、その経典には人間のみによる世界の統一が記されていた。


 エルフとドワーフも最初は人間と一緒に魔族と戦った人族だったはずだなのだが、エルフの精霊魔法とドワーフの希少金属加工技術を欲した人間たちにとって、それらを一方的に奪っても罪に問われない天主教の経典は、彼らにとても都合が良かったのだろう。


 最後まで精霊魔法と加工技術などの情報開示を拒んだエルフとドワーフたちだったが、人間たちの国だけで連合軍が組織されると、獣人族と同様に彼らも奴隷狩りの対象として広く認知されるようになっていった。

 見目麗しく異種族故に妊娠しにくい身体を持つエルフの奴隷や、金の成る木とも言えるドワーフの工芸品の数々、それに多産で成長が早く力が強い獣人たちは人間社会の底辺を支える労働力として如実に必要とされた。


 人間以外の種族を『亜人種』とまとめて呼ぶ事によって、自分達とは違う下等な生物だという認識を植え付けると同時に、これによって自責の念は薄まり、他種族を狩り立てる行為に一層の拍車が掛かるようになっていく。


『人間でなければ人族ではない』


 この不穏な世論の流れに気がついた時はもう遅く、誰もこの負の連鎖を止める事は出来ない世界へと至っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ