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異世界吸血鬼 ~前世も吸血鬼なんだが?~  作者: としょいいん


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第63話 街造り

「ロードくん、次はこっちの区画をお願い! もう最初のところには材木が運び込まれてるから、今日のお昼までにこの区画の基礎工事を終わらせておかないとエルフの職人さんたちが手待ちになっちゃうからね?」


 オレの左腕に噛み付いたままのドロシーが、地面に右手を翳して土中にある石灰成分と粘土を抽出して適度にかき混ぜながら、付近にある石と岩の欠片を混入しながら四角形を基本とした基礎構造物を造り出して行く。


 オレは図面を見ながらドロシーに指示を与えて大きさ等の規格を揃えて行く事と、彼女の魔力が無くならないように魔力(の籠もった血)を補給する燃料タンクの役目だ。

 

 ディアーネからは住宅五十戸以上との指示だったが現地で監督してるリンとドロシーの二人と相談した結果、合計で百戸分のコンクリート製仮設住宅の基礎と躯体を一体成型した後に今度はエルフたちが住む為の木造住宅用の基礎五十戸分を作成している途中だ。


 たったの百戸しか無い仮設住宅を作成している途中でドロシーの魔力が切れかけてしまったのは、オレの製作方法と指示が間違っていたからだった。


 最初は土を掘ってから基礎となるコンクリートを合成して、その中に同じく土中から精錬させた鋼材の棒を仕込んでいたのだが、錬成とか錬金の経験が足りかったドロシーに必要以上の手間と魔力を使わせ過ぎてしまった。


「これくらい大丈夫や、ウチに任せとk……」


 錬成術によって土中の金属成分から鉄をかき集めて炭素を少し添加させて鋼を作りながら、もう片方でも土中にある石灰成分と粘土を合成しながら骨材となる砂と小石も混ぜて最後にコンクリートの中に鉄筋を配置していたのでは、地獄の賢者の名を持つドロシーでも魔力が枯渇して気を失うはずだ。


 ドロシーの魔力を回復させなければ工事が進まないという事もあって彼女にどうすれば良いか聞いてみたところ、オレとして妥協出来る方法がこれ(ドロシーに吸血される)しか無かったのだ。


(他の方法もあったが、今は聞かないでくれ)


 オレとした事が、この異世界にあった元居た世界での物理法則と建築手法を踏襲する必要など無いと気づいたのは、二十棟目に取り掛かってからだった。


 それからはコンクリートのみを先に合成して一棟目に作成した建屋と同じ大きさの四角い塊を造ってから、その中をくり抜いて部屋を造り最後に建屋全体に圧縮・凝結・強固の三重に魔法を掛けて構造強度のアップを行った。

 するとそれまで灰色だったコンクリートの色が段々と黒ずんで行き、最後はこの街の外周にある防護壁と同じような色となった。


(なるほど、あの時ドロシーに頼んだ外の防護壁はこうして造られていたのか)


 だがこのニ十棟目は失敗してもう一度造り治すハメとなる。何故なら凝結強固の魔法を掛けた後に色が黒く変色し建物の大きさが一割以上も縮んでしまったからだった。


 これは原子同士が結びついた状態を、更にお互いの結合間隔を圧縮させる事によって結合距離を減じた比率に対して二倍の二乗分だけ強度が上がるらしい。


 それだと元の大きさから小さくする途中でひび割れて壊れてしまうはずだが、ドロシーが言う「ええ塩梅」で魔力の照射加減を調整する事によって、元の形を保ったまま強度を上げて行けば良いと考えていたが、それだと想定していた大きさよりやや小さくなると言う事だった。


 それとコンクリートの成分を錬成する時に素材の強度だけではなく靭性、つまり靭やかさを上げて割れにくくする為に石灰と粘土の調合比率を変えながら、屋根の自重を軽減させる為にコンクリート内部に空気の泡を発生させるのだが、この作業にはフーカの精霊魔法が非常に役に立った。


 最終的には八割程度まで圧縮して強度を上げた状態で人が住める大きさの箱を作るのだが、弐十一棟目からは建物全体のコンクリートに小さな泡を発生させてアLC製とした事で、後から内部を削るのが楽になった。


 ただ、木造住宅用の基礎には自重も必要だろうと考え、基礎部分はALC化せずに黒ずんだ強化錬成コンクリート製としておいた。


 地中で撹拌させた土とコンクリートの混ぜ合わせた基礎を錬成してから、土台を乗せる部分だけは雨水が滲みて行かないように五十センチほどの立上りも作っておく。

 ここまでやっておけば土台を固定するアンカーから後の工程については別の者たちが施工してくれると聞いているから、オレたちはまた別の宅地へ行きそこで同じ作業を繰り返した。


 あの会議の翌日から作業を開始して、そのまた翌々日にはコンクリート製の仮設住宅の躯体と木造住宅用基礎が全て完成した。


 仮設住宅とは言ってもエルフたちが退去した後も別の人が入居する事を踏まえて、それなりのグレードの内装工事が施されており、今のまま工事が進めば一日二戸から三戸程度の住戸が完成する見込みだから、あと二十日もあれば全てのエルフ難民たちが天幕を出て風雨を気にせず暮らして行ける様にはなると思う。


 それとエルフ式木造住宅については作業員が少ない事もあって、最初に工事着手した十戸が完成するまで約一ヶ月は掛かるとの事だった。

 それでも元居た世界での戸建て住宅の工期から考えると三分の一程度の日数ではあるが、現在百人ほど居るエルフ難民たちがそこで暮らせるようになるには数カ月程度の日数が必要だった。


 そしてシンディが使役するグレーターデーモン軍団による開拓作業については彼女が口上した通り、たったの一日で開墾と耕作が完了しており、そこで働く予定だったエルフたちを驚かせた。


 その後もシンディは街の上空で滞空したまま各所の作業を見守り続けて、資材の運搬などの単純作業が発生した場所に配下のデーモンたちを適宜派遣してくれている。

 また、その際に通信用ピアスを持たせていない班への連絡と調整役には、インプのレアザが活躍してくれているみたいで助かってると聞いている。


 これで現地での作業が動き出し、森から切り出された木材が防護壁の内側へ続々と運ばれ、そこで加工が行われる。

 木材以外にも必要な建材として日干し煉瓦や石を加工した各種の平板、それから石灰石と粘土から錬成されるセメントを主材料としたモルタルを、主材又は接着剤として使用しながら内外装工事が着々と進められて行く。


 エルフたちの話では、もしここにドワーフの職人が居れば石とか土を使った工事をもっと早く、そしてキレイに施工出来るという事だったので将来的にはドワーフ族にも住んで貰いたいと考えている。


 ドワーフと比べて筋力が劣るエルフたちではあったが、戦士団の中にはデッドエルフとなった者が多く居た事が幸いして、木造住宅の建て方の際には普通のエルフと比べて五から十倍もの筋力を発揮して工事を大いに助けてくれた。


 一方で仮設住宅と木造住宅基礎を造り終えたオレとドロシーは、リンから次の工事場所へ向かうように指示されると、そこは既にも森の樹々が伐採されて宅地造成済みの開けた場所だった。


「ドロシー、ここには百人規模の兵舎を三棟建築する予定だけど、先ず最初にこの図面の大きさで造ってから問題が無いか確認しておきたい」


「ロードはん、これもウチに任せとけば大丈夫やでw」


 短辺二十三メートル六十センチ、長辺七十ニメートル、高さ十八メートルのコンクリートの塊を一気に錬成するのは大変だったので、七メートル二十センチを一区画として作成し、これを十区画繋げて一棟とした。

 このサイズなら途中で何度かオレの血を補給しながら作って行けば、三日もあれば完了出来そうな気がする。


《ロードくん、レオンさんたちに紫色のスライムを大量に捕まえて来るように頼んでおいて》


 現場監督のリンから通信用ピアスを通して依頼されたのはスライムの捕獲だった。


「何に使うんだ?」


《もう最初に着工した仮設住宅が完成しそうだから浄化槽の設置を急がないとダメなんだ。紫スライムは汚物を浄化してくれるからトイレを水洗にするなら絶対に必要だよ。あと森の中に竹に良く似た樹木があるから給排水用の配管素材としてかなりの量が必要になるよ》


 さすがは異世界勇者と言ったところか? この異世界においても上下水道を完備した戸建て住宅を当たり前のように思っている所が凄い。


「レオン、それにクロウリー聞こえるか?」


 オレは直ぐに配下たちの命じてリン監督に言われた通り、紫スライムと竹の様な木材を集めるよう指示を出しておく。

 

「ショコラ、フーカにも通信用ピアスを渡しておいてくれないか?」


《もうすでにお渡ししてありますので、フーカ様とお呼びすればコール出来ると思います》


 さすがは出来る子AIのショコラだ、いつも君のおかげで助かってる。


「フーカ聞こえるか? オレだ」


《シルデビ様、聞こえてるよ。どうしたの?》


「今リンが仮設住宅の上下水道配管と浄化槽の設置を行ってるんだが、竹の様な樹木を繋げて配管として使用するのに適した接着剤の様なものを知らないか?」


《その木ならパイブーの木の事だね? 一本の長さが四〜六メートルくらいに育つ木だよ。それなら接着剤なんか要らないよ、私たちエルフなら木と木の細胞同士を繋げて一本の管材を作る事が出来るよ》


「その木と木を繋げるスキルを持ったエルフ数名を、リンが居る仮設住宅の区画へ向かわせてやってくれ」


《まかせといて、今直ぐそちらに誰か行かせるから。それと給水に使用するパイブーの木の内側に何か樹脂状の物質でコーティングが出来れば、将来の経年劣化を防げると思うんだけど今は無理だね》


 今まで生者の居なかったこの国では、メイがやって来た時に初めて食事と睡眠とトイレが必要となったが、その時はまだ彼女一人だけだったのでそれほど大掛かりな設備は必要無かった。


 だが、今回の様に不死者(イモータル)以外の者たちを大勢保護する必要が出て来れば、生者も一緒に暮らして行ける様な都市計画が必要になって来る。

 

 これから先の計画には生産系勇者とドワーフ職人の確保が必須事項だと思った工事だったが、便利さばかりを追い求めて必要以上に科学や魔法技術を進めて行かない様な舵取りも必要で、それには国が定めるルールも必要となって来る。


《マスター、アルニード教国方面から馬車二十台ほどの小隊がこちらに向かっていますが、どうされますか?》


 今ここに居る者たちは生者と不死者(イモータル)のほぼ全員が街造りに従事しているが、防護壁の外側には五百名もの死鬼(グール)中隊が警備に当たっているはすで、馬車二十台くらいの小隊など、どうにでもなるが……。


《マイロードさま、その小隊はフェイのトト様からの使いアル。きっとエルフたちの食料とか生活必需品を送って来てくれたと思うアル》


 いくら公爵家の当主だと言っても単独で馬車二十台もの物資を、こんなに離れた場所まで派遣するのはかなり大変な事だろう。


「フェイリン、明日お前の故郷のユーディス領へ向かう途中に教国首都へ寄ってバ=ロッティに礼を言って来てくれ。それと返礼品を持たせるからそれも届けて欲しい」


《マイロードさま、お金ならトト様は受け取らないと思うアルよ?》


「いや、ナイスミドルが必ず受け取るように後で手紙を書いておくから、それと一緒に渡して来るんだ。出来ればオレも行きたいが今の状況だと、いつになるか判らないからお前に頼みたい」


《わかたアル》


 オレとドロシーはその後も強化コンクリート製の住宅ユニットを作り続けるが、それは陽が暮れるまで続いた。

 不死者(イモータル)のオレたちなら夜も突貫して工事を継続する事が可能だが、それでは生きてるエルフたちの睡眠を阻害してしまうので、皆にはキリの良い所で工事を中断するように言っておいた。

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