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異世界吸血鬼 ~前世も吸血鬼なんだが?~  作者: としょいいん


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第55話 ショコラの決断

SIDE:闇の聖女ディアーネ


 今私の目の前にシンディーナさんが地面に横たわっています。


 出会った当時は彼女のプロポーションを見て驚愕し、この世界から細胞一つ残さず消し去りたいと考えていましたが、その後の彼女を見ていますと、いつも御方様の近くに立ちながら誰かに求められない限り口を開こうとしませんし、いつもにこやかな笑顔を振りまく彼女の事をどうしても嫌いになれませんでした。


 もし御方様の元でお会いしていなければ、きっと教会勢力と魔族との戦争に二人とも参加していたでしょうから、きっと何処かで仇敵の間柄として出会っていたでしょうね。

 そんなシンディーナさんが今も痛みを口にする事無く、全身を力で強張らせながら多くの汗をかき藻掻き苦しんでおられます。


 御方様とは私より後で知り合ったはずなのに、心の距離ではもう私よりもずっと御方様の近くに居るこの方を今ここで失ってしまえば御方様の心が大きく傷ついてしまわれます。

 それに彼女と私はこのファミリアの中では数少ない美乳派(又は巨乳派)の女子として、これからもリンを始めとする多くの美脚派女子たちを相手に御方様のご寵愛を競って行かねばなりません。


 ですが困った事に、今の私の力ではシンディーナさんを救う事は出来ないかも知れないのです。


 それは先ほどここへ到着して直ぐに彼女の容態を診てみましたが、身体の何処にも異常らしい異常が認められなかったからです。


 御方様から伺ったのは幻血召喚を行った時にシンディーナさんが体調不良を訴えて来たので村で休ませて欲しいと言う事でしたので、私は彼女の体内にある魔力の流れと御方様の不死因子の働きを調べているのですが、どこにもおかしな点は見当たりません。


 私たち聖職者が使用するヒーリングなどの治癒魔法は、その人の身体細胞の中にあるDNAやRNAの情報を元に、それらが本来在るべき正しい構造へと戻して行く魔法なのです。


 ですから医学の知識が無い経験の浅い神官でも使えば効力を発揮する大変便利な魔法なのですが、これらの便利魔法があるせいで御方様が居た元の世界と比較すると人体の解明等は非常に遅れていると言えます。


 神職者が扱うそれも私の様な最上位の聖女が使用する完全治癒魔法パーフェクト・ヒールでも今のシンディーナさんを助けるには力不足を否めませんが、それでも彼女が苦痛によって失う体力と水分を補給させると言う事であれば、本来ならエルフより長寿な種族であるはずの彼女から死を遠ざけ続ける事は可能なはずです。


 その後も看病を続けた事でシンディーナさんの身体は疫病の類いでは無く、それが呪いの類いによるモノだと判る様になりましたが、その呪いの発動条件が不明のままでは手の施しようが無く、今も彼女の生命を維持する以外の方法が思い浮かびません。


 御方様に彼女の事を任された私の背中に嫌な汗が流れ始めます。


 エルフの村人たちを全て転送し終わればドロシーさんに来て貰って、地獄の賢者と言われる彼女の知恵も借りたい所ですが、それがまだまだ掛かりそうだと聞いて心の中に密かな不安が広がります。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


SIDE:ショコラ(闇の女神モード)


 とうとうこの時がやって来てしまいました。


 シンディーナ様の急な体調不良は病気ではありません。


 もうディアーネ様は薄々気づいておられるみたいですが、彼女の体調が悪化したのはマスターが行った『幻血召喚』が原因です。

 

 こんな持って回した言い方は良くありませんね?


 シンディーナ様の正体、それはマスターが前世で使用されていた武器がその前身なのです。


 今はマスターの記憶のうち、過去のお仲魔に関する部分が大きく欠如してしまってるので覚えておられないだけなのです。


 今からもう二千年くらい前の事なのですが、この世界にはインテリジェンス・ウェポンと呼ばれる無機生命体が存在し、今もその一部のモノたちが何処かでひっそりと存在しています。


 彼らは本来性別を持たずに産まれて来るのですが、自身が認めた所有者と対となる性別へ成長するのが一般的だと古の記録には記述があります。

 

 後に魔王大戦と呼ばれる事になったあの大きな戦いの最後、当時のマスターは人間たちによって倒されてしまいます。

 ですがその後に異世界へと転生して、向こうの世界でも戦いの日々を送られる事になるのですが、今はここまでにしておきます。

 

 さて、自身が認めた所有者であるはずのマスターを失ってしまった剣ですが、大戦末期にその刃が折れて砕け散ってしまいその後は失われてしまいます。


 こちらの世界に残されたのは剣の残骸だったのですが、マスターが向こうの世界の魔法技術によって自身の眷属を呼び寄せる能力を得た時、それまでこちらの世界にあったはずの剣の残骸が消えて無くなってしまいますが誰も気づきませんでした。

 

 何故その剣が向こうの世界で刃を再生しマスターの持つ新しい剣となったのか、こちらから時々しか向こうの世界を垣間見る事が出来なかった私にはそれを知る術はありませんでした。

 ですが、あの剣がこちらの世界でマスターと共にあった頃は『聖剣インビジブル』と呼ばれていたと記憶しています。


 それが何故『デス・ブリンガー』へと進化に至ったのかについては詳しくは判りませんが、最初のうちは新たに加えた金属部分が剣と馴染まず困っておられたみたいで、その後にマスターご自身の血を分け与えた事が切っ掛けで暗黒属性を持つ死の魔剣として生まれ変わったのではないかと考えています。


 最初のマスターが生命を失って倒れた時、砕けた剣の刃がこちらの世界へ残っていたのですが、その魔力の強さ故に強い魔族を引き寄せてしまいその相手に取り込まれてしまいます。


 その魔族と言うのが当時のサッキュバスの女王であったのは只の偶然でしたが、彼女の体内に取り込まれた剣の欠片は彼女の体内から新たな生命となって産み落とされます……が、ここでは割愛させて頂きましょう。


 これまでは、こちらの世界に残された剣の魂を宿すシンディーナ様がマスターの近く居なかったおかげで干渉する事無く普通に暗黒剣を召喚出来ていたのですが、最近になってシンディーナ様とマスターが出逢ってしまい、また血の儀式を経て将来を誓い合う親密な関係になられました。


 シンディーナ様の中にある魂と暗黒剣が別々の座標に存在していれば、この世界を構築するシステムの判別を回避して具現化する事が出来ていましたが、それが同じ座標で存在するとなれば少し困った事になるのです。


 シンディーナ様は間違いなくこちらの世界に残された剣の魂を内包しており、彼女の有する魔力が桁外れな事実がそれを証明しています。


 そして私の前任管理者が世界システムのエラー対策の一つとして、彼女の魂に呪いを掛けていた事があるのですが、その呪いがマスターとの血の交りによって解呪されてしまっているのです。


 ではここで問題です。


 元は同じ魂から成る二つの存在があったとします。


 システムはその二つを同じモノと認識して世界の運行、いわゆる演算処理を進めて行くのですが、同じ時間、同じ場所、同じモノが別々の行動を行った時、世界システムの中ではどの様な処理が行われるのでしょうか?


 一つの存在とは、過去、現在、未来において、同じ記憶領域を占有し、同じスタックを共有していなければいけません。

 それは身体と魂、それにアストラル体と呼ばれる三位一体の存在に知恵と知識、この場合は自我とか記憶と読み替えてしまっても良いかも知れませんが、同じ存在と認識されるモノが同時に複数存在する事は、例え私たち神の領域に在る者でさえ許されてはいないのです。


 ですから今シンディーナ様の身に起こっている痛みは、彼女の存在そのものを世界が認めずその半身を消し去ろうとしている現象が原因だと思われます。


 ですがこのままシンディーナ様を失ってしまえば、死ねない身体を持つマスターが無気力状態となってしまい、三度目の復活までこの先何十年……いや何百年もの月日を待たなければならない未来が私たちを待っていますが、そんな未来を座して待つ事など到底受け入れられません。


 私がこれから提案する内容は、絶対にマスターからご許可を頂けないアイデアです。


 もしこれがバレてマスターの信用を永遠に失うとしても、何もせずにシンディーナ様とマスターを永遠に失うよりは良いと判断して行動を開始します。


 先ずはマスター以外に通信用ピアスを配布した皆様に緊急通信回路を開きます。


《皆様聞こえていますでしょうか? 現在の事態においてマスターの生存率がゼロとなっています。これからお話する内容は決してマスターの了解は得られない内容ですので、もしマスターの意向に沿わなければダメだと申される方はそちらから通信を切って下さい。但し、シンディーナ様、ドロシー様だけは絶対に切らないで下さい。これはマスターの生命に関わる案件なのです!》


 今あの場所で戦ってる皆様と城で待機している者たち全員が、誰一人として欠ける事無く私の声に心を傾けているのが判ります。


 そして、私は皆様にこれから起こる事の説明と、皆様の役割をお教えしました。


《説明資料の超圧縮アーカイブを最大理論値にて各自の脳へダイレクト転送を開始します。転送終了後に自動展開されますので、各自それぞれの行動を速やかに開始して下さい!》

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