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異世界吸血鬼 ~前世も吸血鬼なんだが?~  作者: としょいいん


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第53話 デス子のヤツめ!?

「古き血の盟約において幻血を捧げし盟友たる存在の召喚を命じる! 死を与えし暗黒の大剣よ、我が呼びかけに応えここに顕現せよ!」


 オレの身体を漆黒の闇の光が覆い、いつもの様に左手の平を突き破って暗黒剣の長い柄が現れ……ない、なぜだ?!



「ちっ! こんな時に召喚失敗か?! デス子のヤツめ後で覚えてろよ!? ええい、もっかいだ! 幻血召喚、デス子早く来い! 今ならさっきの失敗を許してやっても……」


 結局のところ何度召喚を試みてもデス子はオレの呼びかけに応える事は無く、かなり多くの血と魔力を消費したにも係わらず、オレの手には何も握られていなかった。


「主殿、何故か急に妾の体調が優れぬ。ちとすまぬがここで後退させて貰う、悪く思わんでくりゃれ……」


 好きな異性とのの吸血行為だからと言って天敵とも言える大天使との戦いを前に、シンディの血を吸いすぎたか? オレとした事が何たる失態だ。


「オレの方こそ、すまない。今は村まで戻って休んでいてくれ」

 

 去って行くシンディを見送ってから、オレはリンとディアーネを探していると思われる大天使の前へと進み出る。


「そこに居るのは性犯罪者のアズラエルじゃないのか?」


 オレは元の世界で戦った記憶のある相手を前に、まるで親しかった友人にでも話しかけるような感じで嘗ての天敵に声を掛ける。それは例え数秒でも良いからヤツの注意をリンたちから引き離すべくその糸口を探していた。


「お前たち天使の言う事を聞いて最後に殺されてしまった、あの哀れな革命少女の魂は美味かったか?」


 コイツら天使(エンジェラン)どもを煽って火病らせるなんて、一人前の不死者であれば朝飯前だ。


「ホホウ、知ッテイルゾ。貴様ハ以前ニ我ラ天使ニ敗レテ犬ノ様ニ逃ゲ回ッテイタごみデアルナ。己一人ノタメニ仲魔ヲ全テ犠牲ニシタニモ係ワラズ、マタ新タナ犠牲者ヲ増ヤソウトデモ言ウノデアルカ? 先ホドノ女魔族モ、イザトナレバ、マタ我ニ差シ出シテ自分一人ダケ生キ残ロウトデモ考エテイルノデアルナ?」


 いかん、相手を怒らせて我を忘れさせるつもりだったが、このままヤツの口が動き続けると先に爆発するのはオレの方かも知れない。


 オレには以前の仲魔たちの記憶を失ってしまったが、ヤツがオレの家族同然だった者たちをディスる事は絶対に許せない。


 もしかしたらオレは自分が忘れているだけで、アイツの言う通り仲魔の生命を犠牲にして生き延びたのかも知れない。もしそれが事実なら今のオレには仲魔たちと共に暮らして行く資格など無いが、そんな事より、オレがシンディたちを差し出して命乞いをするなんてヤツが本気で考えてるとしたら、その方が遥かに腹が立つ!


「西欧最後の王朝でお前がギロチンに掛けたあの王妃は、お前との契約を最後まで信じていたが最後はどうなったんだ? まさかお前まで人間の魂は苦痛を与えてやった方が旨味が増えるなんて、本気で考えてるんじゃないだろうな?」


「相変ワラズ口ダケハ達者ナ様デアルナ。ダガソレホド必至ニ我ノ注意ヲ引キ付ケ様ト足掻クノハ、ココニ貴様ノ大切ナ仲間タチガ居ルト言ウ事デモアル。ナラバ護ッテ見セルガ良イ、誰ノ魂カラ喰ラッテヤルベキカ。先ホドノ女魔族デモ良イシ、勇者デモ、聖女デモ、りっちデモ、殭屍(きょうし)デモ、何デモ良イノデアルナ?」


 リン、ディアーネ、ドロシー、エルフたちの救出は未だか?!


 今ここでコイツと本気で殺り合えば、その余波で間違いなく誰か弱い者が死ぬ。せめてオレの手に暗黒剣の一本でもあればアイツの攻撃を弾くくらいは出来るはずなんだが、無手のオレでは出来る事が限られてしまう。


(本当にデス子のヤツ、一体どうしたと言うんだ? これまで、こんな事は一度も無かったはずだ)


「モウ十分ニ待ッテヤッタデアルナ。聖女ノ魂ハ最後ト決メテイルカラ、最初ハ先ホドノ女魔族ガ良イデアルナ。アノ肉体ナラ胸モ脚モ我ヘノ贄トシテ申シ分ナイノデアル。貴様ガソコデ何モセズ見テイルダケナラ、生カシテオイテモ良イデアルナ」


「どうもこうもあるか! 何故オレがお前なんかにシンディを差し出さなきゃならないんだよ。彼女はオレの大切な花嫁候補なんだぞ? どんな手を使ってもお前なんかに指一本触れさせる訳無いだろっ!!」


 こうなったらもうヤルしか無い、例えこの身が滅びても必ずヤツだけは必ず倒す。


 それに、あんな風に胸も脚も一緒くたに考えてるアホ天使なんぞに、シンディの美脚は勿体なさ過ぎる! 確かに女性の胸は大切な器官の一つだが、女性のみが持つ特有の能力として繁殖を行う為の下半身が本来であれば血の穢れを纏う不浄の扱いを受けていないのは、偏に子供を授かる為の女性らしい曲線美が神々でさえ美しいと認めざるを得ない芸術性があるからだとオレは常々考えている。


「我ガ上司うりえるモ、時々ソノ様ナ病気ヲ患ッテイタガあれハだめナ奴デアルナ。」


 ちょっと待て。今ウリエルとか言ったな? そいつはオレたちとは違う派閥で、美脚より美乳、いや巨乳こそ至高! なんて言ってるド変態野郎の事じゃ無いだろうな? 本当に天使のヤツらと来たら自分たちが仕えるクソったれ女神がボインだからと言って、その価値観を他人にまで押し付けて来るなど神が許してもこのオレが許さん!


 だが許さんとは言ったモノの今のところヤツの暴挙を止める手立てが無いのは事実なので、こうしてバカ話をしている最中でもオレの頭脳はヤツへの対抗手段を探し続けていた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


SIDE:サッキュバスのシンディーナ


 妾の身体がおかしくなってしまったのは、今正に主殿が仇敵である大天使を前に己が持つ最大戦力である暗黒剣を呼び出そうとした時であった。


 サッキュバスの国まで態々やって来てくれて母の形見であったボディスーツを直してくれたばかりか、妾より美しくまた女王に相応しいと言われていた従姉妹のドリーを差し置いて、主殿は妾の手を引いてあの国から連れ出してくれたのじゃった。


 だから今こそ主殿の横に立ち主殿と共に敵に立ち向かうか、それとも主殿を護ってこの生命を使い果たすまでお側を離れるつもりは無かったのじゃが、急な体調不良に襲われたままでは逆に主殿の足を引っ張るどころか、妾のせいで大切な主殿の身が危うい。


 何故じゃ? 何故このタイミングで妾の身体はおかしくなってしまったのじゃろう?

 

 村へと戻りながら何度も後ろを振り返るが、主殿は今も敵である大天使の前に立ちはだかって妾の背中を護ってくれている。


 いつもなら身体に溢れんばかりの魔力が湧いて来て、例え天使が相手だとしても一対一なら決して勝てない相手など居ないと思っておったのに……。


 先ほど主殿が行った幻血召喚の儀が原因なのは判っておるのじゃが、それの何が要因なのかは未ださっぱりと判らぬ。


 もしかしたら同じ暗黒属性を持つ妾が近くに居た事で魔力の波長が干渉したとでも言うのかえ? 今もこの身体が何処か別の次元へと引っ張られたまま裂けてしまいそうなほどの傷みが全身を駆け巡る。

 じゃが、この身体の痛みよりも、いざという時に主殿の隣で戦えない心の傷みの方がどうしようも無いくらい妾の心を蝕んで行く。


 もう先ほどまで主殿と一緒に居た所からずいぶんと離れてしもうたが、敵の大天使(アーカンシェル)であれば、どれだけ離れても一飛びで追いつかれてしまうじゃろうな。


 全身の痛みはどんどんキツくなり、もう今では立っている事すら出来ん状態じゃ。それでも薄目をこじ開けて愛しい主殿の戦う姿を妾の目蓋が閉じてしまうまで瞳に焼き付けておかねば、もしこれが今生の別れとなった時に後悔という文字では表せない程の何かで魂がいっぱいになると思ったからじゃった。


 それなのに、いつしか妾は己が意識を手放してしまい昏冥の闇の中を彷徨い続ける事になるのじゃが、ここで思わぬ相手から救いの糸が伸ばされて来たのじゃ。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


SIDE:オレ


 シンディを殺してその魂を喰らうと宣言したアズラエルを最高強度の血爪で斬りつけ、またヤツが放つ聖魔の打撃をインパクトの瞬間に合わせて小刻みにテレポを繰り返しながら回避をし続ける。


 オレの血爪ではヤツが纏う光の鎧を斬り裂く事はおろか小キズすら付いていない現実を見て、精神が必要以上に疲れて行くのを感じる。まだヤツは自身が持つもう半分の力である闇属性の魔力を全く使っていない。


 遥か以前にコイツと戦った時は、暗黒物質から成る小ブラックホールによって身体の一部を消し去られた痛みを何故か今でも覚えているが、あの攻撃は防御をする事が理論上不可能で発生したブラックホールに触れたり重なったりした部分が、その中へ吸い込まれるのでは無く次元を反転させた外宇宙のどこかに強制送還されるのだ。


 それも無くなった腕や足などの断面をキレイに残したままで。


 無くなった身体の部位から血や内蔵、時には脳症や眼底をその場にぶち撒けられて不幸な犠牲者は生命活動を続けられなくなるのだ。もしあの攻撃がオレたち不死者以外に向けられたとしたら、それが何者であったとしても対抗するなど無益な話でしか無い。


 例えオレたち不死者であっても失った部分が脳や心臓等の重要器官であったなら、身体機能の復旧や修繕には一定の時間を要してしまい戦闘能力が低下してしまう。


 あの大天使(アーカンシェル)がそんな時間を見す見す逃してくれると思うか? 何しろヤツはこの能力によって『死を告げる天使』なんて呼ばれていい気になってる下衆だからな。 


 しかし、このまま戦いを続けても、肉体疲労と言った概念の無い大天使(アーカンシェル)不死者(イモータル)のオレではムダに時間を費やしてしまうだけだが、そのムダな時間があればあるほどエルフたちの救出が捗るとなれば、そのムダこそが今のオレたちには何より必要な要素だった。


 肉体どころかその精神すら不死身の大天使(アーカンシェル)様とは違い、オレの心は生者のそれに近いから同じ様な作業ゲーを延々と繰り返していれば時々だが面倒になってミスを犯し、そこをヤツに突かれてしまいそうになる。


 オレが元居た世界ではこんな繰り返しの作業なんかは『bot』と言って、単純作業を勝手に繰り返してくれる専用のアプリにやらせていたのだが何か良いアイデアは無いか?


 こうしてオレと大天使(アーカンシェル)がサシで戦っている間に、仲魔たちが捕まったエルフを連れて村まで戻ってくれれば事態が好転すると安易に考えていたのがマズかったようだ。

 オレがそれに気づいたのは、大天使(アーカンシェル)と戦っている最中にオレの左腕が音もなく消え去ってしまったからだった。

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