第51話 契約の代償
SIDE:聖堂騎士団長イプシロン
俺様は死んだのか?
俺様は確か自分の天幕へと戻って来てから聖女のヤツに腕を掴まれて……それからどうなったんだ?
最後に覚えているのは聖女の血の色の様な瞳に魅せられて、それから何も覚えていないと言う事だけだった。
俺様は今頃聖女の身体を思い通りにしているはずじゃなかったのか? 何で全く覚えていないんだ。
今頃はあのたわわに実った二つのアレをこの手で力いっぱい揉みしだいて、あの女が普段は決して口にしないような艶声を叫ばせていたはずなんだ。
《オ前ハモウ死ンダノダ、ダガ強イ執着心ニヨッテ魂ガコノ世ニ捕ワレテイル》
誰だ、そんな根も葉も無い事を言うヤツは、この俺様が死んだだと? どこにその証拠がある?!
《オ前ヲ殺シタヤツラヲ私ハ知ッテイル。ソシテ、オ前ヲソノ様ナ目ニ遭ワセタヤツニ仕返シヲスル力ハ欲シクナイカ?》
そ、そんな甘言に俺様は騙されないぞ?
《何故、オ前ヲ騙スト言ウノダ? 我ニハソウスベキ理由ガ無イ。ダガ、自分ノ身ニ何ガ起キタノカスラ判ラヌママト言ウノモ少シ哀レナ気ガスル故、オ前ガ死ヌ瞬間マデノ記憶ヲ思イ出サセテヤロウ》
それは俺様が見た覚えの無い映像が急に脳の中へと直接注ぎ込まれ、まだ目を開けていない状態だと言うのに強制的に再生されて瞬きすら出来ない状況の中でそれを見た。
そうか、俺様は聖女の万力みたいな腕に捕まれてあの真っ赤で血の色みたいな瞳を見てから、身体が急に動かなくなって……そして、勇者の野郎に首を斬られたんだな、思い出したぞクソッタレどもめ!
《オ前ノ存在ガ余リニモ高貴デアッタタメ我ガ緊急措置トシテソノ魂ガ霧散シナイヨウ、一時的ニコノ世ニ留メテイルニ過ギヌ。オ前ノ魂ハコノママ霧散シ失ッテシマウニハ惜シイト我ガ神ガ申サレテオルノダ》
この俺様には神がついていたという事か?
やはり俺様は選ばれた人間だったのだ。そんな俺様の人生を唐突に終わらせてくれた、あのメスブタどもにはキッチリとその償いをさせてやらなければ俺様の気が済まない。
あの聖女については俺様の肉奴隷として死ぬまで嬲り尽くしてやるのは決定事項として、あのチッパイ勇者をどんな目に遭わせてやればこの俺様の気分が晴れるだろうか?
そう言えば勇者のチッパイはともかくとして、あの小さなケツとイヤラシイ脚は悪くないモノを持っていたから聖女とはまた違う楽しみ方があるだろう。
「俺様の恨みを晴らせるなら、何だって捧げてやる。さぁ言え、この俺様はどうすれば良いのだ?」
《流石ハ聖堂騎士団長デアル。先代ト同ジク高位天使デアルコノ我トノ契約ヲ望ムナラバ、ソノ身ニ神ノ尖兵トシテ相応シイ力ヲ授ケテヤロウゾ》
先代とはアビゲイルの野郎の事か? やはりアイツは俺様たちに内緒で天使と契約するなんてズルをしてやがったんだな。
それなら俺様がヤツより強いと言うこの大天使と契約しても誰も文句は言えないだろう。最も、もしそんなヤツが居たとしても次の日まで生きていられるとは限らないけどな。
「いいだろう、このまま素直に死ぬくらいならお前と契約した方が良いのはアホでも判るからな。もしこの俺様にあのオッサン以上の力をくれると言うのなら何を代償に捧げても依存は無い。さぁ言え、大天使様は何が欲しいんだ?」
大天使が俺様との契約の代償に必要だと言ったのは、あの憎き勇者と聖女の魂。
それと今この軍に居る教会のシスターたちの魂も寄越せと抜かしやがった。
全てのシスターと言っても神の花嫁候補として必要な条件は、まだ汚れを知らぬうら若き身体を持つ乙女限定だそうだ。
またシスターの中から、あの聖女ほどでは無くても良いからバストの大きさと美しさに重点を置いて生贄を選別するように追加注文があったが、それって大天使の個人的趣向では無いのかと聞いてみた。
《聖堂騎士トモアロウ者ガ何ヲ言ウノカ? 女性ノバストトハ本来、人間ガ進化シテ行ク過程ニオイテ種族保存ノ為ニDNA自ラガ必要ダト望ミ、ソレヲ天界ノ神々ガ認メタト言ウ経緯カラ、ソノ大キサト美シサトハ”無償ノ愛”、即チ”女神ノ母性”ヲソノ身ニ宿ス者ト言ウ事デモアル》
なんだか良く判らんが、とにかく女のアレが大好きだと言う事だけは判った。何しろ女のアレは俺様も大好物だからな。
だが勇者はともかくとして聖女の魂を捧げるとなると、俺様の楽しみが減ってしまうと危惧していると、大天使が言うには俺様が飽きるまで可愛がってやって聖女の精神がポキリと折れてしまっていた方が神を裏切った罰として都合が良いらしい。
今、あの聖女には好きな男が居るらしいから、それを力ずくで押さえつけて無理やり俺様のものを突っ込んで腹いっぱい注ぎ込んでやる時の無き叫ぶ顔を見るのが今から楽しみだ。
「もう判ったから、早くその契約とやらをやってくれ」
《汝ノ全テヲ我アズラエルヘ捧ゲヨ。我ハ汝ガ希望スル天ノ力ヲ授ケ汝ガ望ム未来ヲ与エ、コレヲ終生ノ契約ト成ス。コレヨリ汝ハ聖人トナリ、神ノ尖兵トシテソノ役割ヲ果タスノダ》
すると俺様の身体の中から止めどなく湧き上がって来る新たな力によって、魔力酔いに似た症状と頭の芯から来る激痛が本能的な危険を知らせる。
(酷でぇ頭痛がするがこんだけヤバイ力なら、あの勇者と聖女など赤子の手を捻るように屈服させてやれそうだが……それよりも、今は眠い……)
明らかに人智を超えた力の影響によって俺様の身体は眠りを求めており、それはもう抗えない程の眠気が俺様の意識を刈り取ろうとしている。
そして次に訪れる永遠とも思えるほどの長い眠りが俺様の魂を優しく包み込み、もう意識と呼べるほどの自我は薄れてしまい何処にも残ってはいない。
俺様は大海に落とされた血の一滴のようなもので、この世界を支配する途轍もなく巨大な意識体の一部として取り込まれてしまう。
《汝ハ我、我ハ汝。歓喜セヨ、汝ノ魂ハ今ヤ完全ニ我ト共ニアル》
そんな状態に成り果ててもまだ俺様の意識だけは聖女の肉体に強い執着心を残しており、今ではその思いだけが俺様の生きていた証だとも言えるが、こうして己の精神を大天使に明け渡した後では残りカスとでも呼んだ方が良いかも知れない。
《契約完了。肉体ノ生命維持ニ力ノリソースヲ最大時ノ約十パーセント消費ヲ確認シタノデアル。ソノ状態デモコノ世界ノ者タチヲ相手ニスル程度ナラ、例エ勇者ト聖女ヲ処分スルトシテモ全力時ノ半分モ有レバ事足リルデアルナ》
聖堂騎士団長の身体を眩い光が覆い包み、天幕の内側から引き裂いて神々しいまでの聖なる光が魔の森一帯を明るく照らす。
『我ノ名ハアズラエル、女神アルミダ様ノ使徒デアル。我ラ天界ニ仇ナス者ドモヨ、コレヨリオ前タチニハ地獄ノ未来ガ待ツノデアル!』




