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異世界吸血鬼 ~前世も吸血鬼なんだが?~  作者: としょいいん


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第50話 下卑たる欲望の果て

SIDE:闇の聖女ディアーネ


 天幕で眠ったまま放置されて、最初は私が聖女なのでVIP扱いでもされて兵士たちを遠ざけているのかと思っていましたが、それにしては軍では貴重な石鹸を使用して全身を清められてから香水まで塗られた事で、この後で私の身に何が起こるのかなんて容易に想像する事が出来ます。


挿絵(By みてみん)


 もし以前のように、この身が生身の聖女のままであったなら筋力で勝る騎士に逆らう術など無く、このまま蹂躙の憂き目に遭っていたのでしょうね。


 ですが今の私には自身の身を護るだけでは有り余るほどの力を、御方様から与えられていますから何も不安はありません。


 すぐ近くに居ないリンの事が少しだけ気がかりではありますが、戦場でこの様なプライベートスペースを確保出来て、そのうえ部下に命じて内緒で聖女をそこへ運ばせる事が可能な地位を持つ者がワザワザ向こうからやって来てくれるのですから、このチャンスは生かすべきでしょう。


 私はこのまま目を閉じて眠っているフリを続けるのですが、不死者には本来必要の無いはずの呼吸を行う事も忘れてはいけません。


 そうしていると、ここへ運ばれてから一時間ほど経ってようやくこの天幕の主がやって来た事を彼の急いで足を運ぶ靴音と、それより早い心拍を打つ心臓の鼓動によって察知しました。


 天幕の中まで入って来た相手は現在の聖堂騎士団長と思しき人物で、彼は確か前任のアビゲイル団長とロウザ師によって鍛えられていた精鋭のお一人だったと記憶しています。


 私が名前も覚えていないこの人物の事を覚えているのは、彼が私の胸を見るイヤラシイ視線を度々感じていたからで、あのねっとりとしてまるで蛇が絡みつく様な視線は女子なら誰もが生理的に受け付けない類のものでしたから、以前の私はこの人物の目に自身の姿が映らないように立ち位置にも気を使っていた事を思い出します。


 薄い毛布一枚にしか護られていない私の身体を、まるでその下に隠された素肌まで見通せるのではないかと思えるほど凝視されているのを感じます。


 今の私が相手では、この男の一方的な暴力によって私の尊厳を奪う事は出来ないでしょうが、この身体は全て御方様お一人に捧げると決めていますので、例え一瞬でもこの下卑た男の前に晒す訳にはいきません。


 相手の全身から滲み出る痺れるような歓喜の思いが私の精神に触れると、本当に吐き気がして気分が悪くなりそうです。

 あのイヤラシイ目が私の身体を上から下までゆっくりと舐め回すように視姦した後、再び乳房の所で止まりそこを凝視されてるのを感じます。


 私はすぐにでもベッドから飛び起きて、この最低クズ男の目を抉り出してやりたい衝動に駆られますが、相手は曲りなりにも聖堂騎士の一人です。


 そんな短気を起こしたとしても確かにこの男は殺せるでしょうが、それでは動体視力に優れた騎士の目が私の生まれたままの姿を脳に焼き付けてしまいます。


 このクズ男が見るこの世最後の映像が私の裸身であったなど、絶対にあってはならない事です。


 そして男がとうとう我慢が出来なくなり私の身体に掛けられている毛布の端を掴みに来たのですが、私はそれを阻止して相手の右手を私の左手首の力だけで抑え込む事に成功します。


 私に手首を掴まれた男が「ハッ!」と驚き、私と顔を合わせてしまいますが、それは吸血鬼を相手にした場合には悪手とされる行動です。


《そこで止まりなさい!》


 吸血鬼が持つ魔眼の力は異性には特に良く効くとショコラ様から聞いていたので、気になってその理由を尋ねた事があるのですが「相手がこちらに対して性的な欲望を感じてる時ほどプラス補正が掛かるのです」と説明されたのを覚えています。


 もしそうなら、私の身体を見て性的興奮が頂点まで高まっているこの男が、私の瞳の魔力から逃れる事など出来ないのは当然の結果です。


挿絵(By みてみん)


「その下卑た目を一生閉じていなさい」


 これでもう聖女のフリなどする必要が無くなった私は、御方様から賜った闇の聖女のドレスをポーチから取り出して素早く身に纏い黒染めの革で編まれたサンダルを履いてから、リンがここへ到着するのを待ちます。


「上手くいったみたいだね?」


 リンも男が天幕の中へ入ったのを見届けてから既に近くで身を隠していたらしく、ほとんど待たされる事も無くすぐに合流する事が出来たのでホッとした気分になります。


「リンも早く着替えて」


「あ、うん、そう言えば、コロっと忘れてたよ」


 いくら認識阻害の魔法を掛けているとは言っても、リンが今着てる服ではココとかアソコとか色々と見えてしまっています。彼女の身体も私と同じく御方様だけのモノですから、それが他人の目に触れる前に着替えが済んで私の心配が一つ無くなったと言えます。


「リン、この部隊に運ばれた屍鬼(ゾンビ)兵たちの準備はもう済んだの? なら、次のステップに進んで、この軍の上層部を吸血して私達の支配下に置くか、暗殺して軍の命令系統を麻痺させれば良かったのよね?」


「それなんだけど、ロードくん以外の男性を吸血するのはやっぱイヤかな?」


 やはりリンも私と同じ考えだったようで、その言葉を聞いて今後の方針が一つに絞られました。

 私も元は教国出身ですからこの軍の人間たちに対して恨みなどはありませんが、私が愛する御方様に敵対している以上私もどちらに与するかを選ばねばなりません。


 そして今は不死者となり御方様の配下の一人でもありますから、いつかあの方の隣に立つ為なら私の心は既に決まっています。

 

「この男がこの軍の司令官のようです。以前はアビゲイル団長の副官でしたが、彼が亡くなってからこの男が後を継いだのですね」


「あ、こいつ知ってる。いつもディアのオッパイを覗いてたヤツだ!」


 こんなクズでも今は軍の司令官ですから吸血して従僕にしてしまえば色々と使い途はあるのですが、今はどうしてもその行為をしたくありません。


「じゃ、コイツはボクが殺るから、ディアは向こうで待ってて」


 こうして元副団長だった男の処分をリン一人に任せて天幕を出ると、辺りは夜の闇に覆われていて一定の間隔で設置された松明がゆらゆらと揺らめき、森の中で野営する人間たちの様子を照らしていました。


「古き盟約と御方様の血の契約に縛られしこの地に棲まう者どもに告げます。ただ今を持って安らかな眠りは終わり、これより先はお前たちの魂が擦り切れて無くなるまで我が主の従僕としてその全てを捧げるのです」


 この敵軍野営地のどこかには今日の戦いで戦死した敵兵が屍鬼(ゾンビ)となり眠っているはずですから、今からその者たちを目覚めさせて行動を開始させるべく、その言葉を紡ぎます。


 もう先ほどまでにリンの手によって御方様の血を使用した儀式の前準備が終わっていると聞いてますので、今の私の紡ぐ最後の言葉によって完全な隷属者となる儀式が終了します。


 ここで御方様の尊い血を使用するのは、敵軍一万二千に対して味方の屍鬼(ゾンビ)兵となる者が九百名ほどしかおらず、その場では撹乱に成功したとしても直ぐに倒されてしまうといった懸念からでした。


 リンがここへ来る前に御方様の血を空中に霧散させて屍鬼(ゾンビ)兵たちの身体へ吸着させる事で、そのほとんどの全ての者がただのゾンビでは無く死鬼(グール)へと至れる事でしょう。


 死鬼(グール)となればもう普通の武器で倒される事はほぼありませんし、屍鬼(ゾンビ)兵の様なノロノロした動きでもありませんから、その強さは比較になりません。


 それと生前の自我と記憶を不完全とは言え持っている事で、自分の頭で考えて行動する事が出来る様になりますから、この時に御方様に対する従僕契約を彼らの魂に刻んでおかなければ後の憂いを残してしまいますし、それ以外に不死者へと成れない者たちもここには存在します。


 それは以前の私がそうだった様に、この世の神を称する輩に『聖なる祝福』と呼ばれる疵痕を魂の奥に刻まれている者たちが多く存在するからです。


 そんな聖堂騎士や神官たちに限って言えば、今の私では彼らの魂を神の軛から解き放ってあげる事が出来ないのです。


 それでも今の私が吸血を行えば、相手の身体が自壊するまでの少しの間だけ支配下に置く事が出来るかも知れませんが、今のところそこまでする必要性は感じませんね。


 そう考えれば、最初に攻めて来たのが神職とは縁の無い貴族らの私兵たちだったのは、こちらにとっては幸運でした。


「ディア、この先にある天幕は全てボクに任せて。大丈夫だよ、上手くヤルから心配しないで。だから死鬼(グール)たちの指揮はそっちに任せるから宜しくね?」


 そう言ってリンは自分の身体を夜の闇と同化させて、この場から音もなく去って行きます。

 

「闇ノ聖女サマ。我々ハコレヨリろーど様の配下トシテ貴殿ノ指揮下ニ入リマス。ドウカゴ命令ヲ」


 リンが姿を消してから、この地において新たに不死者の門を潜った者たちが私の前へと集まって来ます。


「全員が死鬼(グール)まで至れた者ばかりでは無いようですがそれでも構いません。昼間は敵同士でしたが今はこうして同じ御方様の配下と成り、これからはこの世界に死の安寧を齎す為、皆様には存分に働いて頂きます!」


 こうして私の元へ集まって来た死鬼(グール)たちに、最初の命令として元同僚であった教国の兵士たちを襲うよう命じます。


 一万人以上も居る敵兵に対してこちらは未だたったの九百体ほどしか居ませんが、この者たちに襲われた被害者が新しい屍鬼(ゾンビ)兵となって敵軍を飲み込んで行けば、その数は鼠算的に増えて行きますから敵の被害は甚大なものとなるでしょう。


 それでも誤算が生じるとすれば、この軍には私たち不死者の天敵とされる聖職者が多く在籍してますから、屍鬼ゾンビ兵となった者は元より今回から新たに配下となった新米死鬼(グール)たちに対して特別効果が高い神聖魔術については心配が拭えません。


 配下の死鬼(グール)たちが敵の歩哨を装って二人一組で場内を巡回しながら、一人で休んでいる者を探して襲撃を開始します。

 森の木々に遮られてはいますが月明かりの輝く夜に一人、また一人と声を上げる事も出来ないまま強制的に屍鬼(ゾンビ)兵となる者たちを増やして行きますが、この様な人外魔境までノコノコとやって来たのは彼らの方です。


 中には立場上仕方なくだったり、家族を養うお金が必要だったりと情状酌量の余地がある者も若干は居るかも知れませんが、その他多くの者たちは己の欲望を満たす為だけにこの場所を訪れた者たちだったはずです。


 これは私も以前に御方様から言われたセリフなのですが、力による一方的な搾取とはこの世界での常識でありまた本質でもありますから、もし私が弱者のままだとしたら今頃は貴方たちの慰み者にされた後で自らこの胸にナイフを突きたて、ここで果てていたかも知れません。


 ですが貴方たちより強者が現れて、貴方たちの生命について生殺与奪の権限を持たれてしまったとしたら、今度は貴方たちが自分の力の無さを嘆き死を受け入れる番がやって来たと言う事を理解しなければなりません。


 リンの手によって軍の上官が次々と暗殺される中、死鬼(グール)たちによる貴族軍の者たちをゾンビ兵へと生まれ変わらせる計画も静かに進んで行きます。今この段階へと至っても、まだ何処からも戦いの喧騒音が聞こえて来ないのは私たちの作戦が上手く運んでる証ですね。


 貴族の私兵たちより手強く厄介だと考えていたギルドの冒険者や傭兵たちについても、今頃はシンディーさんが見せる夢の中で、自分たちの意思では決して目覚めたくないと願うほどの人生に魅せられているでしょう。


 私は神に祈るように両手を合わせながら片膝を地面について、エルフ村に居る御方様へと祈りを捧げます。

いつも読んで頂きありがとうございます。

今回のお話でやっと本編が50話まで辿り着きました。

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