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異世界吸血鬼 ~前世も吸血鬼なんだが?~  作者: としょいいん


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第48話 聖堂騎士団長イプシロン

SIDE:聖堂騎士団長イプシロン


 やっと、やっとオレの時代が巡って来やがったw


 あの小五月蝿いローザのジジイと、部下に厳しいアビゲイルのオッサンが亡くなったと聞いて、最初に沸き起こって来た感情がそれだった。

 いくら俺様が剣術を極めて戦闘技術を磨いても、いつも遥かその先にあの二人の背中があって、それは豆粒よりも小さく見えるくらい遠かった。


 俺たち聖堂騎士は子供の頃に身体能力を認められた者が集められて、その中から勝ち残り方式で生き抜いて来た者だけが教会所属の兵士となり、そこから更に実績を残した者だけが聖堂騎士を名乗る事を許される。


 それなのに、同世代の騎士どもなんて歯牙にも掛けないほど抜きん出た実力を持つと俺様が、これまでずっと万年副団長の座に甘んじてきたのは、あの二人の老害が次世代を担う俺様にいつまでも席を譲らず目の上のタンコブとしてのさばって居たからだった。

 

 だが今はそんな老いぼれ二人がMIA認定されて、事実上の戦死扱いときたもんだ。


 あの化け物みたいに強かった二人を葬るなど、神か悪魔でも無い限り無理だと思っていたが、これであいつらも殺せる人間だったという事が証明されたな。

 後はこの俺様がいかに長く団長として居座り続け、積年の苦労が報われる人生を謳歌する為に邪魔な奴らを一掃しておいたから、もう団内で俺様に意見出来る輩はいねぇ。

 

 老いぼれ二人の他に勇者と聖女様まで行方不明だと聞いたが、軍を率いる貴族でもない二人の事なんか今はどうでも……まてよ、聖女様って確か……あの巨乳美女の事か?


 ちっぱい勇者の事なんか今はどうでも良いが、あの大聖堂の釣り鐘みたいなおっぱいが失われたとなると人類最大の損失じゃねぇのか?


 そして元団長たちが失敗してくれたおかげで、枢機卿から直々に次の奴隷捕縛作戦をこの俺様が任される事になり、次の剣忠軍(他国からは十字軍と呼ばれている)司令官に任命されたからには、俺たち人間様を見下して良い気になってるいるエルフどもを、今度こそ奴隷に落として相応の報いを受けさせてやるからな。

 

 ただし出撃して直ぐは、近くにある自国の街とか村でバカな兵士どもがオイタをしない様に目を光らせておく必要がある。

 この軍の憲兵には聖堂騎士団の中でも特に腕の立つ者たちを憲兵として任命しておいたから、余り心配はしていないが多少のガス抜きは黙認しろとも言ってある。

 もし戦場へ着くまでに、兵士どもの不満が爆発してしまったら作戦に支障が出るから、兵たちには俺様が先代団長とは違って、いかに物分りが良い上司だというところも見せておかないとな。


 俺の直属部隊としては聖堂騎士とその従者を合わせて約七千名の戦力があり、その他にも教国の貴族どもから三千人の兵士たちを引っ張って来たし、あと傭兵ギルドからも千から二千人程度の戦士たちが集まったと聞いている。


 最後に輜重隊だが、それは今の副団長に丸投げしておいたから後は彼が上手くやるだろうが、もし上手く出来なかったらお前の首が胴体と泣き別れになると脅しておいたから、今頃は死ぬ気になって準備を進めてくれているはずだ。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 


 エルフどもの村まであともう少しの距離まで進んで来た時に偵察隊からの報告で、エルフどもが早々に村を棄てて逃げ出した事を知った。


「奴隷種族のクセに主である人間様を前にして逃げ出すとは、これはもっとキツイ躾が必要だな」


 偵察隊とは言っても貴族軍のボンクラ兵士では無く、その正体は教国暗部に所属する敵国の要人暗殺を専門に行う者たちだ。


「絶対に奴隷どもを逃がすな! 俺たち本隊が到着するまで足止めをしておけ! これは命令だ! お前らの生命を掛けてやるんだ!」


 先ずは先に村を棄てて出て行った奴隷どもだが、森の中で抵抗されると捕獲に時間が掛かると一部の者たちを逃してしまう公算が大きい。


「抵抗するオスは全て殺しても構わん! だがメスは必ず生かして捕らえろ! 多少の傷なら治癒術士が後で治すから気にしなくて良いと全軍に通達しろ! ここでの休息を最後として、これよりエルフどもの村まで突貫する。それと貴族軍の中から精強な者を千人ほど見繕って先に出撃させておけ、俺たち本隊が着くまでエルフを村の中に押し込めておくんだ、いいか? 判ったら早く行け!」


 最後の休息を終えて、先行している部隊の後を追う様に全軍へ通達を出す。


 消耗の激しい先発隊には貴族どもの兵士を選んでおいたから、もし敵前から逃亡をする素振りを少しでも見せたら後ろから即座に斬り捨てろと言い含めてある。

 あと冒険者ギルドの犬どもには森の中を索敵をさせて、森に棲まうモンスターどもの数を減らして本隊への被害を出さないようにと命じておく。


 偵察隊からの報告ではエルフどもの戦士は二百を少し超える程度だと聞いている。


 そんな寡兵に対して、こちらは一万を優に超える軍が押し寄せるのだから、戦いの結末など既に判ったようなものだ。

 それより今は捕らえたエルフ奴隷どもを一人残さず確実に首都まで運搬する作業の方が、俺の頭を悩ませる事だろう。

 それに捕らえたエルフどもを隠して素直に渡さないヤツも居るだろうし、首都への運搬途中でも色々とやらかすバカが居るからだが、それはまた後々考える事にしようか。


「先ずは目の前の勝利だ! 教皇様はこの戦いで完全なる勝利を望んでおられるぞ! 皆の者、気を引き締めてかかれ! 全軍出撃だ!」


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 


「クソ!一体どうなってやがるんだ!」


 俺は聖堂騎士団の隊長どもを前に怒りをぶちまけた。


 まさか負けはしまいと考えて先発させていた貴族の兵士たちが、這々の体で本隊まで帰隊するのが見えて来たが出ていった奴らがほとんど戻って来ていない。

 それでも帰隊した負傷兵を呼びつけて事情聴取をしてみると、いきなり地面の下からゾンビが出たとか喚いて口から泡を吹きやがるが村にそんな魔物は一匹も見当たらない。


 村の前ではたった一匹のエルフ奴隷を捕らえる事も出来ず、無様に屍を晒した先発隊の殉教者が山のように倒れているが、こちらも教会に所属する者として味方の亡骸をあのままにはしておけない。


「どの部隊でも良いから、あの死体の山を早く片付けさせろ!」


 もうエルフどもの村は目の前だと言うのに向こうから矢の一本も飛んで来ないのは、ヤツラが既に村を空っぽにして森の中へ逃げてしまった後では無いのか? 俺は逸る心を理性で押さえつけて冷静に騎士団と神官たちを進軍させるべく各部隊へ命令を下して行く。


「伝令! 貴族共の兵を先に村の中まで進ませろ。それと聖堂騎士の第ニ団三百は騎乗したまま村を北に迂回して逃亡中の奴隷どもの先頭集団を押さえろと命じてこい。第三団の三百は南から迂回して逃亡中のエルフどもを残らず捕えて来い。あとギルドのバカどもには森の中の探索が終われば直ぐに戻って来いと伝えろ。ヤツラは村の裏手に回らせて敵の背後を突かせるんだ、いいな。暗部の者たちは今何をしている? 戻って来ているのなら休憩させて再出撃に備えさせておけ!」


 俺が居る第一騎士団をここから無闇に動かせば他の隊から来る報告に時間が掛かってしまうからで、俺は残り約五千四百の本隊をゆっくりと前進させながら各部隊から齎されるはずの吉報を待つ事にした。


「このままエルフ村からの反抗が無いのは怪しい。直ぐに一小隊二十名を組織して内部の捜索へ向かわせろ!」


 まだ二千人以上は残っている貴族の兵士どもにはエルフ村の正面から突撃を繰り返させている。もし村の中に立て籠もり反撃の機会を伺っていたとしても敵の数は多くて二百程度しか居ないのはもう判っている。


 たった二百のエルフどもがいくら得意な矢を放とうが、それで被害を齎されるのが貴族の兵どもなら俺たち聖堂騎士団は少しも痛くはない。

 ヤツラがその身を犠牲にして敵の矢を少しでも減らしてくれれば、貴重な聖堂騎士の生命が一人でも多く助かるからな。

 エルフどもの十倍は居る計算の貴族兵たちが、俺たち聖堂騎士に背中から刺される恐怖に追い立てられて一斉に突撃して来るのを目にすれば、相手にかなりの恐怖を与える事だろう。


 戦闘開始からそれなりの時間が経ち、貴族の兵士どもが疲れてきた頃を見計らって教会騎士らと交代させ、敵を休ませないよう攻め続ければ後は時間が解決してくれるだろう。


 だが抵抗を続けてる敵戦士の中には商品価値の高いメスのエルフも多く混じっているから、前線に立つ者どもにはこれらのメスを一匹でも多く殺さず捕獲するように命令しておく。もしここで貴重なメスを殺した者が居ると判れば、死ぬほどの罰を与えて見せしめにしてやるからな。


「第ニ団より報告! エルフ難民の逃亡路を特定し現在その先頭集団を追跡中との事です!」

「第三団より報告! 現在エルフ奴隷の捕縛中に敵戦士と交戦開始! これより殲滅します! との事です」

「ウェルダン伯爵軍より連絡! エルフ村の防御が固くまだ抜けないとの事で応援要請が来てますが如何なさいますか?」

「傭兵ギルド部隊からの定時連絡です。現在森の中に不審な者は見当たらないとの事でこれよりエルフ村を背後へ回るべく移動を開始する、との事です」


 次々と各部隊からの連絡や報告が入って来る。


 ほとんどの報告は聞き流すだけで良いが中には判断や決断を迫られる事柄も多く、優勢とは言えここで気を抜いてエルフ奴隷どもに逃げられてしまえば目も当てられない。


「たった二百人ほどしか居ないエルフを相手に甘えた事を言うなと貴族部隊に伝えろ! グズグズしていたらお前たちの部隊もエルフの村ごと滅ぼしてやるとな!」


 全く貴族の率いる軍など物の役に立ちはしない。


 日頃からロクな訓練もせずにブクブクと肥え太っているから、肝心な時に役に立たない見本の様なヤツラだ。

 

「火矢でも火炎魔法でも何でも良い、とにかく敵の十倍、いや数十倍の攻撃を撃ち込んでやれ! エルフどもの矢と魔法が一瞬でも途切れたら通用門の破壊作業を再開させろ、中に入ってしまえば数の暴力で押し切れる!」


「第ニ団より報告! エルフ難民の追跡を継続中ですがまだ奴隷どもの姿は確認出来ていません。追跡を継続します! との事です」

「第三団より報告! 現在二十名のエルフ奴隷を捕縛したと報告があったのですが、帰隊する途中で勇者と聖女が森で倒れているのを発見したそうです。如何なされますか?」

「医療班より報告! 貴族軍の遺体を収容し終わりました。戦闘が長引けば邪魔になる可能性もありますので、本隊の後方にて安置します。との事です」

「冒険者からの定時報告は……まだ来てません。もう索敵を終えて敵の村への襲撃に加わった頃だとは思いますが、戦闘中につき連絡が遅れているか、伝令が途中で倒された可能性も否めません」


 第ニ団はエルフ難民どもの頭を押さえる為そのまま進軍させておくのが正解か? たったの三百騎しか派遣していないが全員聖堂騎士なら滅多な事は無いだろう。


 第三団が勇者と聖女を救出しただと? ホントかよ! もしそれが本当なら、勇者はともかくとして聖女は必ず俺の所まで連れて来るんだ、いいな! これは命令だぞ!!


 医療班による貴族の兵士たちの遺体回収はとりあえずそのままで良いが、死体の中には下級貴族の小倅どもが居やがったな。

 実家へ送るまでに腐敗すると後で苦情が来るから、貴重な魔術士に命じて氷づけにでもしておかないと後が厄介だ。


 ギルドのヤクザ者からの報告など今はどうでも良いがヤツラの事だ、きっと今頃はベッピンなエルフでも捕まえてイタしてる最中かも知れないから放っておけばいい。

 それも戦闘中のアクシデントと言う事にしておいてやるから、事が終わったら殺さずに捕縛して必ず連れ帰るよう念を押しておけ、いいな!


 俺様はこれから捕獲されて送られて来るエルフ奴隷たちを、なるべく少人数に別けて捕らえておく場所の確保を命じながら、もうすぐここへ保護されて来る聖女のあの大きな胸の谷間を想像してしまい他の事が全く手に付かなくなる。


 それでも努めて平静を保つ事には一定の成功を収めてはいるが、以前に見た母性の象徴たるアレの映像が今でも網膜の奥に焼き付いていたかの様に脳内で連続再生される。


 いくら勇者だ聖女だと民衆から讃えられてはいても、今この場においては傷ついた非力な女の一人でしか無い。


 あぁ、どうして部下どもは聖女を早く俺の所へ連れて来ないんだ? 本当にイライラする。


 そう言えば、今日の昼頃に最後の休息をしてあれから何も口にしていなかったな。人間腹が減るとイライラしてしまうものだから、そろそろ輜重隊に天幕を準備させて班毎に交代で休憩を入れるとするか。


 なーに、こっちは敵の十倍もの兵力が居るんだ、ここで俺が交代で休んだって前線に影響なんて出ないだろう。


「伝令! 最前線以外の待機組を先に休憩させろ。そして休憩が終わった者から村への攻撃に順次参加させて、今戦ってる貴族の兵どもを休ませてやれ」


 俺は総司令官だから専用の天幕を持っていて聖女が戻れば俺の天幕まで運んでおけと命じてある。何しろ聖女と言えば教会でもVIPだから、下々の者たちの目が届かない安全な場所で休んで貰うだけだと言っておけば怪しむ者など居やしない。


 もし今直ぐにでもエルフどもとの戦いが決着してしまえば奴隷どもの処遇や戦後処理をして次の街へ向かう準備をしなくてはならないが、もうとっくに太陽が西の山々に陰り出した事だし、ここで無理を押して戦闘を継続させても味方の被害が大きくなるだけだ。

 それに今この戦闘が決着しても、終了確認をしてから雑務まで終える頃には真夜中になってしまう。


 第ニ団がエルフどもの進路を阻めばヤツラはもう何処にも逃げられないし、第三団もいずれは奴隷どもを連れて戻って来るだろう。

 そしてその頃には貴族どもの兵も、冒険者ギルドのヤクザ者どもも何処かで宜しくやってる事だろう。


 これだけ優勢な戦い……と言うより一方的な殲滅戦だから、もうこれ以上伝令を出さなくても戦闘は終わるが、俺が戦闘終了の検分を行うのは朝日が登ってからにしよう。


 俺にはその前にヤル事が出来たからな。

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