逸話#1 見習い神官プリンの事情
今、ピンチが黒い服を着てプリの目の前に立ってるの。
プリは五歳の春頃から王都にある大きな教会で暮らしてるの。
実家は没落した古い貴族だったけど、ある日夢枕に女神様が現れて人間の世界を守れなんて言われたけど最初は断った。
なのに一方的に聖なる力とやらを押し付けられた。マヂめんどい。
それでこの間、誕生日が来て十五歳になったプリは、教会の偉いオジンに呼び出され、とある使命を受けた。
それは先日行われた女神様のご神託によって、世界中に現れた次の魔王候補を何とかしろって事で、そいつらがきっと近いうちに人間社会へ危害を及ぼすから、早く行って『ポァ』して来いと言われたの。マヂめんどい。
あ、『ポァ』っていうのは教会内部だけで使われている専門用語の一つで、簡単に言えば『殺せ』とか『滅ぼせ』って言う意味なの。
でも教義的には、そう言ったリアルで生々しい表現は一般受けが良くないという意見が多くあって、何となく皆がそう言うようになったらしいの。マヂでバカなの?
本当なら実家の貴族家でヌクヌクと育てられ、今頃はどこかの小貴族の子息と婚約でもして、まったりと余生を過ごしていたはずだったのに、あのバカ女神のせいで物心もつかない幼女のプリを家から追い出して、教会なんかでビンボー生活を送る羽目になったのは予定外なの。
お貴族様の貴い血が流れてるはずのプリに対して、お日様がコンニチハする前の薄暗い時間から叩き起こされて、水くみに掃除それに洗濯とか炊事とかミサの準備なんて正直やってらんないの。
でもプリは貴族令嬢なので外面だけは大事にしないとなので、適当に手を抜いてそれらしく見えるようにガンバっていたんだけど、周りの人たちが無能すぎてプリが褒められる事が多かったの。
そんな事もあって、プリの事を知らない人たちからは『お貴族様の娘さんなのに何の不満も漏らさず、それどころか何事も率先して行動する真面目な聖女候補』として思われてるんだけど、まともにお相手するのもマヂでめんどいから誰とも喋ってないの。
だから心の内から沸々と沸き上がってくる様々な思いとか感情とか、ともすれば溢れてしまいそうになる悪意の込もった汚い言葉を飲み込んで、誰にも知られないように、また悟られないに注意しながら生きてきたの。
なのに何でこんな事になるの?
もともと無口だったプリは長く過ごしてきた教会でも親しい友人は出来なかったから、この旅へ出かける時も実家の貴族家に仕えていたと言うオジンの聖騎士以外誰もついて来てくれなかったの。来なかったやつらマヂで覚えてろなの。
そもそも聖堂騎士団は他の任務も多くて全く人手が足りてないから、予算の面から考えても王都の冒険者ギルドでB級冒険者を雇うのがせいぜいだったの。
本部のやつらってホントにマドでドケチ。プリの護衛にはA級……いいえ、S級くらいじゃないと相応しくないと思うの。
それでも数々の実績があって実力的にも近い将来にはA級昇格間違いなしと、ギルドの偉い人が太鼓判を押してくれたあの三人が、それこそ『あっ!』と言う間にみんなやらて、今プリの目の前には最後に残った胡散臭い魔術士の女(名前は覚えてないの)が首根っこを掴まれてブラブラされてるの。マジでヤバイ。
だいたいこんな場所にダンジョンがあるなんて聞いてなかったの。
あのまま素直に城塞都市サントールから魔の森を目指してもちっとも楽しくなかったから、少し遠回りしてでも何か面白い事を探そうと言い出しただけのプリは何も悪くないはず。
そして、たまたま見つけたダンジョンだったけど、まだ誰も入った形跡が無いと弓士のク……なんとかが言って、リーダーで大盾持ちの獣人が中に入ると言い出したから悪いのは全部コイツらの責任なの。
ダンジョンに足を踏み入れた最初のうちは、スケルトンとかゾンビとか、プリの聖属性魔法で一掃出来るザコばっかだったから慢心していたの。敵の動きは全然連携が取れていないし数もそれなりだったから、一気に再奥にある部屋を目指して無双しながら進んだから時間もそんなに掛からなかったの。
でも、こんな産まれたばっかの低レベルダンジョンの1層目にコアのある部屋があって、最初は「ラッキー!」だと思ってた、それなにあんなに強いラスボスが居るなんて聞いたことないの。
いくらB級とはいっても、こっちにはベテランの前衛三人に弓士と魔術士、それに神官のプリも居るから、これだけバランスが取れたパーティなら例え格上の敵が相手だったとしても逃げるくらいは出来るはずだったの。
それなのに、何をされたかも判らないうちにみんなやられてしまい気がつくとプリ以外には胡散臭い魔女しか残ってなかったの。
まだズキズキと痛むお腹をさすりながら他の四人の姿を目で探したけど何処にも居ないかったから、もうとっくにみんな『ポァ』されて、最後に残っていたのはプリたちだけなんだと覚悟したの。
プリは咄嗟に死にかけてた胡散臭い魔女を背中に庇ったけど、それは何か打開策があった訳じゃないの。
「神託は本当だったの。魔王候補はここに実在した。いや、もう既に魔王クラスの力と残虐さを持っているかも知れないの……」
例えB級とは言えA級昇格を確実視されるほどの実力を持つ冒険者たち三人と、聖堂騎士団の聖騎士の他に女神様から聖なる力を押し付けられたプリを含めた五人が、こんな簡単に全滅するなんてあり得ないの。
「もし私が戻らなかったら、ここに強力な魔族が居た証拠となって教国から軍隊が派兵される覚悟する事べきなの……」
それでも最後まで怯えて殺されるなんてまっぴらなの。それは貴族の子女は最後の時まで誇りを忘れず立ち振る舞えと教えられたから。でもそんな屁のつっぱりなんて、この魔族が相手だと全然意味が無かったの。
「これでもくらうの、ターンアンデッドなの!!」
それは聖職者のみが使える究極の対アンデッドの魔法で、術者が己の術者が己の信ずる神に祈る事でアンデッドを塵に返す呪文なの……それなのに、いつまで経っても天界から降り注ぐはずの夥しい光の洪水は起こらずプリの声だけが虚しく響く。
「ど、どうしてなの!!」
「聖属性魔法とは、清らかなる精神と穢れ無き身体を持つ者のみが、神の力を借りて発現させる事の出来る聖なる魔法で合ってるか?」
何故それを知ってるの?
この魔法は教会の聖職者のみが使用する最後の秘術だったはず。それにプリの魔法が発動しないという事は、魔法の発動条件のうちどれかが欠けているという事の証明、もしかして・・・。
「プ、プリの中に魔族の汚れた血が!? なの……?」
まだ清い身体だと思ってたのに、もうお嫁に行けない身体になってたなんて本当にショックなの。
聖なる力を失った下級貴族の三女なんて、もう子供を産むくらいしか価値がないの。
将来は聖女か貴族家の妃となって左団扇の生活を夢見ていたのにどうしてくれるの?
呆然自失で突っ立ったままのプリを押さえつけた魔族が、プリの首にキスを迫ってきたけど凄い力でちっとも抵抗できやしない。
きっと美少女のプリを『ポァ』する前に、あんな事とかこんな事とか色々するヘンタイに違いないの!
相手の唇がプリの皮膚に優しく触れた時、何故かドキがムネムネしたの。
それは魔族の男がとても端正な顔立ちで、まるでどこかの貴公子に見えたからじゃないと信じたいの。
まだ経験した事の無い、優しい感触が首筋に伝わる……やっぱりプリの首にキスしてるの。
最初にチクっと感じたのは少し歯が当たったの? そんなに強く吸ったら子供が出来てしまうって教会のシスターたちが言ってたの。
でも強くキスされたせいで、そこが跡になるのを想像したら、教会のエロシスターたちを思い出すからそんなのイヤ……けど気持ちいいから、やっぱり止めないで欲しいの。
血を吸われてると気がついたのは、身体の中から温かい何かが失なわれて行く感覚同時に身体の中に寒々とする別の何かが入ってきたと感じたからなの。
まだ大人じゃないプリの身体なのに、その冷たさで火照ってしまってどうしようもなく敏感になっていくの。
この身体の中に、いいえお腹の奥の方と言った方が近いの。まだ異性との経験なんてあるわけ無いのに、女の子だけが持つ臓器の奥底から湧き起こる麻薬にも似た感覚を知ってしまったから、もうお嫁にはいけないの。
全身が痙攣してビクビクと小刻みに震えて、それがさざ波のように押したり引いたりする感覚は、とても耐えられない心地良さで身体中の筋肉がぎゅっと縮こまって、これ以上は力が入らなくなるまでガンバらないと意識をどこかへ持って行かれてしまう気がしたの。
プリの身体の中を何かが侵食して、まるで内側から汚されていくような気がするんだけど何故かちっともイヤな感じがしないし、それが不潔だと思えなかったのは何故なの?
最後に意識を失う寸前に頭の中で何かが壊れるような気がしたけど、それすらも快感として感じてしまう身体になってしまったの。
最後に大きな優しい波が来て、もう力尽きてしまったプリは、そのまま意識を手放したの。
もう、ずっとこの冷たくて優しい腕に抱かれたまま、何処にも行きたくない……心からそう思ったの。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
赤い布地にキラキラした色とりどりの天幕に覆われた、見るからに高級そうでフカフカなベッドの上でプリは目を覚ましたの。
周りを見ても誰も居ないし、顔を擦って気づいたんだけど多分とても酷い顔で、涙の跡くらいだったらまだ我慢が出来たんだけど、鼻水が乾いてバリバリになっていたし、口の端からも涎とか泡を吹いた跡まであったから、これはマヂでヤバイと思ったの。
何がヤバイって、プリのこの醜い状態を、あの魔ぞku……なんて呼び方は不敬なの。
不敬なんて、ついぞ教会の偉い人たちにも感じた事は無かったけど、初めてその意味を知った気がするの。
でもあの御方の事を、公衆の面前で『公子様』なんてお呼びする訳にもいかないし、そもそも公子かどうかも知らないの。
《マスターの配下の方たちはみな『マイロード様』と呼んでおられますよ》
「だ、誰なの?!」
不意に掛けられた声の方を見れば、その姿に驚くというより、あの御方の近くにこんな美しい女性が居た事への警戒心がアラームを鳴らす。
《私はマスターにお仕えしている『ショコラ』と申します》
目の前には八等身で、スタイルバッチリのセクシーダイナマイツが服着て歩いてるとしか表現出来ないエロエロ美人が居たの。
(顔ちっさすぎなの!!)
あの御方の城に居るという事は『そう言う関係』なのかな……なんて考えると、とても悲しくなってきたの。
なんでプリはこんなに背が低くて、ちっパイで、短足で、顔が大きいんだろう……なんか死にたくなってきたの。
(みんな死ねばいいの……)
と・に・か・く、今はプリの顔の惨状をどうにかしないといけないの。こんな顔のままではあの御方に会わせる顔が無いし、会う勇気んて出るわけないの。
プリはこの城(?)の中にあるはずの女性用化粧室を探すべくダッシュしたの。
(何か身体がメチャメチャ軽くなってるの?)
元々は神官だったのでプリもそれなりに身体は鍛えていたけど、今のこの軽さはそんなレベルじゃないの。もしかしたらそこらへんに居る剣士なんて、目じゃないくらい速く動けるのは何故なの?
でも勝手の判らないお城の中はと~ても広くて、今何処に居るのか判らなくなってきたの。このまま顔を洗う前に、あの御方に出会ってしまったらとても困るの。
プリはこれでもさっきのセクシー美女に出会うまでは、蝶よ花よと言われて育てられてきた美少女の端くれだったの、それなのに……。
だから、あの御方と再開した時の印象をマックスにする為なら手段なんて選んでいられないの。それにプリに残された時間は余り多くは無いと本能が知らせてる。乙女の時間は短いの。
さっきからもう随分と長い時間を走り回ってるんだけど、トイレどころか、それっぽい部屋なんてちっとも見つからないの。 それにこれだけ城の中を走り回っているのに、ちっともあの御方と出会っていない事に気づいたの。
(プリもしかして、ここに棄てられたの?)
もしかして、最初に出会った時の印象がサイアクで棄てられてしまった可能性が大きい。
それにプリってあの御方から見たら敵となる女神の僕だったから、これって出会った時から失恋してたパターンだったりするの? もし過去に戻れる魔法があったら、あの時の女神をフルスイングで殴ってやりたいの。
こうして悲嘆に暮れていると、まだ顔すら洗えていないのに、とても会いたかったあの御方と再会したの。
プリは嬉しいのと恥ずかしいのが究極レベルでケミストリった顔をしていて、自分でも何をじゃべったのか覚えていないの。
「で、一体何が不満なんだ? このオレに何か要求でもあるのか? このダンジョンに態々やって来てコアを破壊しようとしていたのはお前たちだろう。お互いに生命を掛けて闘いその結果として負けたのだから謝罪と賠償を要求するというのは……え、違うのか?」
ぜんぜんちがうの。
確かに、お互いの存在を賭けたかどうかまでは置いといて、プリとマイロードしゃまは敵同士で戦っていたの。
でもそれは、もう過去の話で、正確には二時間五十二分四十秒くらい遥か昔の事なの。だから、今はもう何とも思ってないの……というか、今は別の想いでいっぱいと言うか何というか、か弱いプリに説明なんて、させないで欲しいの。
でもプリの想いを口にするのは今じゃない。
きっと、このマイロードしゃまの周りには、あんなセクシーダイナマイツ級の美女たちがいっぱい居ると思うから、今のプリだと勝負にならないの。
でも見てるといいの。
素質的には決して負けてないと思うから、今のプリに足りないのは、この身体が大人の女になるまで成長して成熟するための時間だけだと思うの。
でもそれは美しく成長したナイスバディのプリが、いつかマイロードしゃまのお側に侍るようになれば、あの御方に言い寄ってくるブスどもと、これから寄ってくる新参の虫ケラどもの心と身体を纏めてポキって折ればいいだけの話なの。
それにプリが美しく成長した暁には、今居るセクシーダイナマイツたちはとっくにオバサンになってるはずだから、今はロードしゃまにプリの将来性を売り込んで出来る限りお側に置いて頂けるようお願いするだけなの。
時間を味方につけたプリの未来は輝いてるはず……なの。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「プリンさん、これで貴女も私たちと同じ不老不死の身体を持つ特別な存在になりました。これからは共にマスターをお助けすべく仲良く頑張りましょう!」
「え、なに、今なんて言ったの、フロウフシって……何? それって、もしかしてプリのチッパイが永遠に大きくなれないって事じゃ?!」
To Be Continue...…。




