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異世界吸血鬼 ~前世も吸血鬼なんだが?~  作者: としょいいん


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第39話 ボクたちの罪の重さ

 部屋の端には元冒険者の格好をしたゾンビが五体居たが、オレが創り出すアンデッドたちとは纏っている雰囲気が全然違う。

 それに玉座で座ってる鎧と同じく身体の輪郭が淡く青白い燐光に覆われているから、あの姿を生ある者が見れば恐怖で震えて動けなくなってしまうだろう。


「ロードくん、ここはボクたちにやらせてよ」

「御方様、私とリンに任せて頂けませんでしょうか?」


「これは相手を滅ぼすのでは無くこちらの力を認めさせる為の戦いだ、お前たちに出来るか?」


「勿論だよ、任せて。ボクとディアの二人ならうってつけの相手だから、そこで見ててくれればいいよ」


 玉座の鎧を守る為かどうかはしらないが、オレたちの方へ歩いて来たゾンビどもの正面にリンが一人で立ち塞がり敵の行く手を阻む。


 相手のゾンビそもは古びた元冒険者の装備を纏っていて、その姿から戦士系が三体に魔法系が二体のパーティ構成だ。

 体格はともかくとして、その圧倒的スピードを誇るリンが絶えず押し気味で接近戦をコントロールしながら、後ろに居るディアーネがシールド魔法を張って相手の攻撃魔法から味方全体を守ってくれている。


 相手のゾンビたちの動き見る限り、生前はそれなりに腕の立つ者たちだった事が伺えるが、このダンジョンで生命を落としてから、かなりの時間が経っているせいか、身体の各部を動かす度に固く変質した筋肉組織が引き攣るような動きは酷くぎこちない。


 それはあの死体どもが、ただのゾンビやグールでは無くワイトのような悪霊系アンデッドであり、死体に取り憑いく事でそれを意のままに動かしている事が原因だと考えられる。

 なので身体にいくらダメージを与えても、相手はそれを気にせず攻撃を続けて来るから少し厄介な敵だと言える。


 普通のゾンビであれば、手足などの部位を欠損させてやれば動きに影響が出て弱体化するが、ワイトに操られた死体は切断されたはずの足で駆け寄り、潰されたはずの腕で攻撃を続けて来るので、奴らの本体である霊体をどうにかしなければ倒すのは難しい。


 これが生身の身体を持つ生者からは、かなり嫌な部類の敵だと言われる所以だとされる。


 だがそれを言うなら、うちのリンとディアーネの二人もただの不死者(イモータル)とは呼べない程のポテンシャルを秘めている。

 その潜在能力は元の人間だった頃から比類なき実力を有しており、光と聖属性に分類される力を扱えば並ぶ者が居なかった程の二人が、今では死と闇の力を手に入れ更なる強者へと進化を果たしている。


「聖なる光纏いし闇の精霊剣よ、今こそ邪なる闇に捕らえられし魂に更なる深淵の楔を穿て!」


「闇に捕らえられし邪なる魂に聖なる牢獄の檻をここに顕現します!」


 光と闇が渦巻く剣を持つリンが、闇より更に暗い暗黒属性の杭を打ち出しワイトの影を地面に縫い止める。それと同時にディアーネが敵を逃さない為に眠りの牢獄へと閉じ込めてしまう。


 相反する聖闇二つの属性を同時に展開させて聖なる光から打ち出す影の杭や、聖なる光の影で作られた闇の牢獄とか、オレにも意味が良く判らないスキルと魔法がリアルな事象として目の前に出現する。


 もしかすると光がある事で影がより暗くなる性質を利用したみたいに、相互の強化作用によってより強力な効果を発揮させているのだろう。

 まぁ言ってみれば不死者になる前の人材レベルの段階で実力差があるみたいだから、これは当然の結果だと言える。


「オ前タチハ何者ダ? タダノ冒険者風情デハ無イト言ウ事カ?!」


「ボクも君と同じ元勇者だよ、一度死んで黄泉路から帰って来たのも同じかな。ただしそこから後が全然違ってるけどね。キミはここで恨みが消えて無くなるのを待ってるようだけど無駄だと思うよ。せっかく手に入った第二の人生(?)なのに、なんでもっと皆が幸せになれるように行動しないのかな?」


「リンの言う通りですわ。最初の人生でどのような不幸があったのかは当事者で無い私たちには判りかねますが、まるでご自身たちだけにこの世の不幸が訪れたと考えるのは少し浅はかでは無いでしょうか?」


「オ前タチに一体何ガ判ルト言ウノダ」


「キミたちの身に何があったかなんてボクたちには何も判らないよ。それとも何かい? キミにはボクたちがこれまで犯してきた罪の重さが判るとでも言うのかな?」


「私たちは以前に勇者とか聖女とも呼ばれてはいましたが、今から思えばただの咎人だったのです。私たちが必死で守っていたモノは、眺める方向が違えば滅ぼすべきモノだったと言う事です。なら貴方の正義とやらは如何なものだったのでしょうか? その価値は今も不変なのでしょうか? 貴方が守りたかったのは愛? それとも愛と錯覚した自己満足ではないと今も断言できますか?」


「オ前タチハ毒ダ。我ガ千年以上モ掛ケテ、ヨウヤク忘レル事ガ出来ルト思ッテイタト言ウノニ、マタアノ心ニ宿ル炎デコノ身ヲ焦ガセト言ウノカ、何ト罪深キ者タチヨ」


「キミのその後ろにある棺の中で眠ってるのは彼女の遺体(ミイラ)だよね? それがここに残ってるから、あの女の人の幽霊(ゴースト)は今もこの塔の中を彷徨ってるんじゃないかな?」


「貴方様はその方を守れなかった事を悔いて死にきれず、今もこうしてご自身をこの地に縛っておられるのではないですか? そうしないと復讐の炎が貴方だけではなく、あの愛しい方の魂をも焦がしてしまうからでは?」


「モウ過ギタル事ダ、貴殿タチニハ関係無イ」


「やっぱりキミは救われなくちゃいけない、あの女の人や騎士の人たちもだ。キミは今それを望まないだろうけど、きっと後で判ってくれると思うから!」


「どうせ消えるなら貴方様の心残りを消して差し上げましょう。御方様、もう準備が整っておりますので後はお願いしても宜しいでしょうか?」


 玉座の鎧の周囲に結界が展開されて相手の動きを封じる。


 だがこの結界は相手が持つ闇属性より更に上位の暗黒属性によって構成されており、聖属性のように闇に属する者にダメージを与えない優しい魔力で包まれている。


 それは、あの鎧が本当にオレたちがこれから行うお節介を拒絶するなら簡単に解けてしまう程度の弱々しい縛りでしかないが、今はそれで十分だ。


 オレは動かない鎧の前を通り過ぎて棺の蓋に手を掛けて横に滑らせると、やはりその中には女性の遺体が横たわっていたが、彼女の首には鋭利な刃物によって押し切られたような無惨過ぎる切断跡が、そのまま残されていた。


「ディアーネ、先ずはこいつの首を直してくれるか」


「御方様、お任せ下さい」


 普通のヒーリング系魔法では、生きてる細胞を活性化させて治癒効果を引き出すので、死体の損壊を直す事は出来ないとされているが、ディアーネの闇系治癒魔法なら死んでしまった細胞の遺伝子情報を元に、破壊されたタンパク質やカルシウムを合成して補完するので死体でも治療が可能なスキルとなっている。


(聖属性を極める為には闇属性への深い理解が必要だなんて、オレが過去に読んだネット小説には書いてなかったノウハウだな?)


 砕けた頚椎の欠損細胞を合成して溶着させてから、乾いたタンパク質に水分と闇の魔力を与えて柔らかくする。

 これは干からびてかたまってしまった筋肉組織と脂肪細胞、そして神経系統や皮下組織の修復を容易にする為の準備だと聞いた。

 こうして見るみるうちに首の傷跡が修復されて、今度は頭の先から発した光の帯が、まるで彼女の身体をスキャンするかのように足の指先まで走査してから消える。


「御方様、女性の治癒が終わりました」


 ディアーネが施すスキャニングの光が、石棺に横たわった遺体の頭部から脚の爪先まで移動した時、そのグリーンの光が身体の各部を通過する時に、身体がの所々で赤く光る部位があったのが、それによって生前の彼女が女性の尊厳を踏みにじられていた事実を表していた。


 また、その時にかなり抵抗をしたせいで多くの傷を負った身体治癒を示す光は、顔を始め全身の至る所で強い光を放っていた。


「先ずはここへ戻って来い、話はそれからだ」


 オレは右手の爪先を鋭く伸ばして左手の平を少し深めに切ってから強く握りしめる。

 すると、じわりと滲んできたオレの血を彼女の唇へ滴らしてやれば、まるで生にてる頃の瑞々しい唇が動いて貪欲にオレの血を貪り飲み込んでゆく。

 彼女の口や喉の粘膜細胞を侵食しながらオレの不死因子が体内に取り込まれると、いよいよ復活の第一歩が始まる。

 その変化は小さく外から見てもほとんど判らない状態だが、今彼女の身体の中では母親の胎内で赤子の胚細胞が起こす以上の変貌が行われている。


 生者から死者へ、そして死者から不死者(イモータル)へ。


 脳を含む身体の治療をディアーネが完璧に済ましていたおかげで、後は脳内に残っていたシナプス細胞の痕跡を一つひとつ元の状態に近づけて行くため根気を要する作業が続く。

 その作業の完遂までには、ざっと140億以上もある脳細胞の中に存在していた電気信号の痕跡を頼りに、限りなく元の状態まで戻す必要があるのだが、それでも復元の出来なかった失われた記憶を補う為には彼女本人の魂が必要だった。


 今回のケースでは、死体の状態で長く放置されていたせいで脳内におけるそれらの微弱情報がほとんど残されておらず、彼女の魂に残された記憶情報こそが不死者の生命復活に大きな役割を持っていた。


 重ね合わせた魂と脳の情報のうち、大きく乖離した部分を精査しておき、後で意識が戻ってから人格や記憶に障害とならないように致命的なエラーを予めバグ化させておいて、覚醒してから違和感を覚える程度に記憶を改竄しておけば、後から行動した記憶が上書きされてバグが消えて行くような処置を施しておく。


 彼女の脳内にある情報復元を行っている間に、身体の方ではオレの不死因子を取り込んだ細胞に水分と不死の生命が宿り、それらが筋肉繊維や血液を限りなく生前の状態へ近づけてゆく。

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