第35話 地下迷宮補完計画始動!
ユナとメイの二人と一緒にソドモラの街から城まで戻り、オレはショコラと二人でこれからの計画について話し合う事にした。
まず最初にオレたちが住むシルヴァニア城の防衛戦力だが、ダンジョンコアであるショコラを守る事が絶対条件に変わりはないが、回復役である闇神官プリンと地獄賢者のドロシーを城の中核として、大盾を軽々と扱える獅子獣人のレオンとデス・アーマーのアイゼンには後衛魔術士たちの守りを任せたい。
それに加えて弓兵のクロウリーが遊撃となって相手の側面を付け狙いながら牽制してくれれば、敵に戦いのペースを握られるなんて事もほぼ無くなり、ずっとオレたちのターンみたいな感じで戦況を有利に押し進める事ができるだろう。
そして、この城から出撃して敵の本拠地を叩く攻撃戦力としては、光闇の勇者リンと同じく光闇聖女ディアーネの二人に加えて、このオレも参加する予定ではあるが現状では十分な頭数を揃えたとは言い難い状況だ。
アルフィリオたちデッドエルフの3体については、風の勇者フーカが居るエルフの隠れ村を何があっても守り通すように命じてあるから、例えシルヴァニア城が落城しようと交代勤務以外でここに戻って来る事は無い。
エルフの隠れ村には勿論だがエルフたち守備隊も存在しており、彼らとコミュニケーションが可能なレベルの死鬼を10体ほどデッドエルフの部下として配属してるあるし、アルフィリオたちにはエルフの隠れ村周辺に潜むアンデッド軍団の統括と、有事の際には司令塔としての権限まで与えてある。
それに村の周囲にはダンジョンポイントで召喚した数十体のスケルトンソルジャー(エルフが怖がるのでボーン・ゴーレムと呼ばせている)と、有事の際にのみ出撃する約1000体もの屍鬼が村の郊外にある冷たい地面の下で、その時を夢見ながら今も眠りについている。
それ以外にエルド王国のソドモラの街で、ドッペルゲンガーとなったユナと生エルフのメイも仲魔に加わってくれてたので、この城に彼女たちの自室は用意してあるのだが、アルニード教国からの脅威に対抗すべく現地で情報収集と工作活動を進めて貰っている。
またつい先日の事になるが、サッキュバスの地下都市から夢魔シンディが来てくれたので、これからは攻撃部隊の魔法戦力として期待しているが、彼女は将来『吸血鬼の花嫁』としてオレの伴侶になってくれるかも知れない女性なので、余り厳しい戦場には連れて行きたくないと考えている。
オレがショコラに喚ばれて異世界へ転移した当初と比べれば、随分と大所帯になったものだと感慨にふけっていたが、そう言えばシンディより先に配下に加わったダンジョンがあった事を思い出す。
そう言えばデスロードのアイツは何と言う名前だっけな……ほら、いつも美人の彼女とイチャコラして18禁の爛れた毎日を送ってるアイツだよ。
そう、クロノだ。今思い出した。
アイツらが住んでるミントのダンジョンには悪魔族のデモーニッシュが総勢で300体くらい暮らしていて、そのまた配下として悪鬼族であるオーガとオークなんかが大勢居たっけな。
あそこのダンジョンは戦闘区域が50階層と、その下に居住区として10階層の合計60階層となっており、オレたちが住むシルヴァニア城の地下ダンジョンより開発が進んでいた。
それに50階層のフロアには落盤事故を故意に起こして、やって来た敵さんたち一網打尽にして生き埋めにする大掛かりな仕掛けがあるから、並大抵の勇者パーティなら大丈夫な備えになってると思う。
そもそもクロノはオレと同じ異世界転生者だし、オレの血で蘇った事でデモンロードからデスロードへとクラスアップして最強クラスのユニットに仕上がってるから、運悪く恋人のエリーゼでも人質に取られなければ、そう簡単に殺られたりはしないと思う。
それに今は配下のデモーニッシュたちも全員不死者となっており、何度殺しても立ち向かって来るから高位の神官でも連れて来なければ、そうそう敗れる事は無いと断言出来る。
だが、これだけ強力な我が軍団にも、致命的な弱点が存在する。
うちのダンジョンはオレの高尚な趣味によって地下から地上へと形状変更した城型ダンジョンという扱いになっているが、地上にある居住区の改修と地下にある温泉施設などの生活施設の増築を優先した為に、本来あるべき地下迷宮がまだデフォルトの一階層分しか存在しない。
(ずっと空き家になってるから、倉庫として使ってるのは何か違う気がするな……)
そのままだと冒険者たちを地下迷宮へおびき寄せ、その内部でポコっと倒してポイントに換金するといった、ダンジョン・マスターとして真っ当に稼ぐ事が出来ていない為、常にダンジョンポイントがギリギリの極貧生活を余儀なくされている。
今はまだクロノたちのダンジョンコアであるミントから、彼女がしっかり貯め込んでいたダンジョン・ポイントを半分くらいもぎ取ってくれたからどうにかやって行けてはいるが、収入ゼロが続くうちのダンジョンでは近い将来に必ずやってくるであろう財政デフォルトに備えておかなければならない。
前述した通り、うちの城にはこの付近の国軍を相手に戦ったとしても、そう簡単に落とされるようなヤワなメンバーなどただの一人も居ないと思うのだが、逆に他で比類を見ないほどの実力者ばかりと言うのも実は地下迷宮を運営してゆく上では大きな問題となる。
それは攻略難易度が高すぎて冒険者ギルドからうちの地下迷宮を秘匿されたり、ランク制限を設定されてSランク冒険者以外がやって来れなくなると来訪者数の激減どころか、永遠にゼロとなる未来が垣間見える。
うちの地下迷宮なら、ここでおっ死んだ冒険者の身体と魂を一片残らずリサイクルが可能なエコ・ダンジョンとしてアピールすべき所なのだが、この異世界で数えるほどしか居ないSランク冒険者なんぞを相手に商売なんかしていても先細りの未来しかない。
あと、オレの配下たちは不死者になってまだ日が浅いアンデッド初心者なので怖さが足りない。
うちで一番ガタイが良くて怖がられそうなリオンでさえ、アメコミヒーローにでも成れそうな風貌をしておりとても人類の敵には見えないし、下手をするとやって来た冒険者たちの方がガラが悪く破落戸に見えてしまう可能性が高い。
それにアルフィリオたちデッドエルフの3体なんて、地下迷宮どころか何処かの歌劇団に所属してると言われても信じてしまえるくらいのイケメンさん揃いだから……こいつらも不適格だな。
プリンはそもそも身体が小さくて子供みたいだし、ドロシーは不健康そうで心配だし、リンとディアーネの二人はどちらかと言うと正義の味方にしか見えないし、ユナとメイのエルフの双子も美人すぎてホラー的な何かが欠けてる気がするし、ましてやシンディなんてサッキュバスだと言われても戦うのを躊躇うくらいの美女さんだし……。
高貴なオレの地下迷宮では、ただ単に戦いに勝利するだけではなく、如何に優雅で気品溢れる殺害方法なのか等の『芸術点』についても心に留めておいて貰いたい。
そんな感じでフロアボスの候補まで考えながら皆の配置を考えているが、今回は新たに30階層までダンジョンを拡張する予定なので節目となる10階層と20階層のフロアボス、いわゆる中ボスを誰にするかが問題だった。
「はいはいはい! ウチや、ウチに任せとき! 最初のフロアでキッチリ全滅させたるさかいな!」
あのねドロシーさん、もし君が最初の10階層でフロアボスとして登場して冒険者どもが来る度にメテオの雨を降らせていたら、難易度が高過ぎて誰も来なくなってしまうだろ?
それにキミの魔法は破壊力が半端無いから、破壊不能オブジェクトであるはずの地下迷宮にも多大なる損害が出てしまう。なので却下だ、却下!
こと魔法に関しては天才的な頭脳と閃きを持ってるドロシーなのに、なんでそんなにポンコツな物の考え方しか出来ないのだろう。
でもドロシーにボロっちいローブを着せて空中に浮かべておいて、フロア上にデスアーマーのアイゼンが率いるスケルトンソルジャー部隊をズラリと並べておけば、それなりの雰囲気を持つ感じにはなるかも知れない。
それでもドロシーには戦略級の魔法をブッパしないように口酸っぱく言っておかないと、冒険者を倒して稼いだダンジョンポイントより多額のフロア修理費が掛かってしまうから心配で仕方がない。
なので最初の10階層フロアボスは手堅くアイゼンに任せて様子を見る事にした。
そうなると次に問題となるのは、20階層のフロアボスを誰に任せるかだが、ここで全滅させてしまっても良い様な気はするが、出来ればここで殺された仲間の敵討ちの為に更に多くの人間どもを引き連れて戻って来て貰うには、それなりの演出と言うか……相手がリベンジに燃えるような決意を抱かせる、そんな気の利いたがシチュエーションを演出できる者に任せたいと思う。
そしてダンジョンポイントをより多く稼ぐ為には、侵入して来た冒険者どもを直ぐには全滅させず上手に手加減というか自分たちが努力してやっと乗り越えたかのような達成感を与えつつも、決してこちらとの実力差を悟らせる事無く、あと少し頑張ればこの地下迷宮を攻略できそうだと希望を見せ続けてやらなければ、昨今のゆとり冒険者どもはすぐに諦めて他のイージーなクエストへ流れて行ってしまう傾向があるとショコラが嘆いていた。
他にも冒険者どもが恐怖した体験がポイント査定に影響があったりだとか、彼らが身につけていた装備品なんかも結構な金額になったりするみたいだけど、それらについては本業の稼ぎが増えていけば自然とそれらの雑所得も増えていくと思う。
だが、いくら強くてもアメコミヒーローとかアイドル顔負けのビジュアルを持つ者が多いせいか、初見の相手にナメられやすい傾向があり、どうしても恐怖体験ポイント(芸術点)を稼ぎにくいのが悩みのタネだと言える。
うちの配下たちのうち誰が出てきても冒険者パーティの全滅と言うか……大惨事は免れないのだが、それは実際に戦った後でなければ判らない事だからな。
でもさすがに20階層のフロアボスくらいで勇者や聖女クラスのボスが出てきたら、普通の冒険者パーティだと一方的な虐殺劇が起こってしまうし、何より勇者と聖女なら寧ろダンジョンを攻略する方じゃね? なんて相手に要らぬ心配を与えてしまう。
オレの苦悩は続く……。
そんな時ショコラから魔族領の奥まで行けば色々な魔物や魔獣が生息しており、そいつらをチャチャっと捕まえて冒険者どもを釣るエサにされては如何でしょうか? とナイスな提案されたので、気分転換を兼ねてちょっと出かけて来る事にした。
今回オレが城を離れる際に「お空を飛んで行くつもりだから飛行が苦手な者は連れて行けない」と言うと、ほとんどの者がそれはそれは上手に飛んで見せたので、その理由を尋ねるとシンディが召喚したグレーターデーモンと遊んで(戦って)いるうちに上達したらしい。さすがシンディ、早速うちの配下たちの強化に貢献してくれたんだな。
だから出発前のメンバー選考ではまた少し揉めたが、城の防衛任務を任せてる者たちとエルフの隠れ村の防衛要員は居残り組決定として、今またソドモラの街へ出張任務中のユナとメイもメンバーに加える事は無く、プリンには万一の場合に備えて城に回復役として残って貰う事にした。
あとドロシーには10階層のフロアボスは諦めて、ここは大人しくアイゼンをサポートして準備を進めるように命じておいたから、最後まで残ってるのはリンとディアーネとシンディで合ってるよな?
このメンバーで戦闘になった場合には、オレとリンが前衛として後衛のディアーネを守りつつシンディが遊撃となるが、彼女の場合は召喚魔法で悪魔系魔族の召喚が可能でワンマンアーミーとしての作戦展開が可能となる。
例えばオレとリンが後衛三人の守備に専念すれば、シンディが呼び出す100体ものグレーターデーモン軍団が一斉攻撃を始めれば、大抵の相手ならコレだけでカタがついてしまうだろう。
今回のように飛行能力の有無によってパーティー組み合わせの選択肢が狭まってしまうのは、飛べないメンバーからのクレームが予想されるので、何か別の対応策を考えておかないといけない。
最も相手が女性の場合ならオレが血を吸って吸血鬼になれば、飛行能力以外にもオレの能力を与えてやれるので、もし本人がそう望むのならオレが血の儀式を行うのが手っ取り早いのだが悩ましいところだな。
先に不死者となったユナはともかくとして、まだ生エルフのままのメイとは、一度ちゃん話し合っておこうと思う。
そう言えばシンディも以前に一度だけ軽く吸血した事があったが、まだ厳密にはオレと同じ不死者には成っていない。
しかしサッキュバスたちは元から不老で殺されない限り寿命も無かったみたいで、オレの吸血によって不死者となるメリットが思い浮かばないんだよな。
それでも自分の国を捨ててオレの元まで来てくれた相手だから中途半端な態度では無く『花嫁』になって貰うつもりで居るのだが、何と言うかそのタイミングが難しい。
今となっては城にあるオレの居室の周りを彼女たちの部屋がグルリと囲んでいるのだが、誰かが部屋にやって来ると何故か他の女性たちも一緒に入って来るから、なかなか誰かと二人きりになれるチャンスが巡って来ない。
以前にも話したとは思うが、オレたち吸血鬼が行う『血の契約』という行為には、食欲と性欲が一緒に合わさった様なとても強い欲求ではあるのだが、いざそれをしようと思っても当事者以外の第三者の目があると、どうしても気持ちが萎えてしまい行為には至らないのだった。
(それにオレの部屋には何故か入口が12もあって、何処からでも入って来られるのが問題だ)
オレは男だ。
しかし男とはとてもデリケートな生き物で、それは種族を問わず永遠のテーマだと言えよう。




