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異世界吸血鬼 ~前世も吸血鬼なんだが?~  作者: としょいいん


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第25話 安心してくれ

SIDE:ディアーネ


 これは困った事になりました。


 私たちが御方様の目に触れさせないようにと、必死の思いで敵の殲滅(それも細胞一つ残さないレベルで)に力を注いでいたにも関わらず、あの女は一命をとりとめてしまったのです。


 これは痛恨のミスだと言えるでしょう。ですがまだ希望はあります。


 御方様はまだ敵の正体を存じておられませんので、このままあの女の優れたスタイルと美脚を持つと認めざるを得ない美しいボディラインを目にすれば、きっと配下の一人に加えたくなる衝動に駆られてしまうことでしょう。

 まさか私たち『吸血鬼の花嫁』候補を差し置いて第一婦人の座を射止めてしまう様な事は無いとは思いますが、この世の全ての事柄に『絶対』はありえませんから。


 これは決して大袈裟に騒ぎ立てている訳では無く、あの女の美貌とスタイルを見た私たち全員の共通認識と思って頂いてもかまいません。


 あの女が召喚魔術を使う度に身体がメタモルフォーゼを繰り返した結果、誰もがあのシルエットを見て自分に無いものをしみじみと思い知らされたのです。

 それは今この瞬間まで異世界史上最高のロケットおっ●いを持つと自負していた私のモノと比べても、何ら遜色が無いレベルの立派なブツをお持ちだったのですが問題は更に深刻で、あの女の持つ美しい……そう敵対していたはずの私たちの誰が見てもそう認めざるえを得なかったワガママ・ボディには、そこからスラリと伸びたショコラさんレベルの長くて美しい脚まで付いてるのですから、これは反則(チート)以外の何物でもありません!


 あの脚さえ無ければ我が軍の中で、いつも孤軍奮闘を強いられてる巨乳派閥筆頭の私の良き僚友と成り得たはずでした。なのに本当に惜しい方を、ここで亡き者としなければならない心の葛藤をどうお伝えすればいいのでしょうか?


 いつも何方に対してもお優しい御方様が、勝手にやって来たあの畜生女の正体すら確認せず、敵のお身体を労るようなお言葉までかけてあげたのに、あろう事か私にその高貴な頭を垂れてまで、

あのクソ女の治療を頼む姿を見て、殺意(ジェラシー)を抱いたとしても仕方が無い事ですよね?


 ですが私がここで了承しなければ、お次はあのちチッパイ神官の出番となるやも知れませんし、それどころかあの女の火傷や裂傷程度ならリンやドロシーさんでも直せると思いますから、この申し出を断っても私の株を下げるだけの結果になるのは見えていますので、ここは逆に私の忠誠心をアピール出来る格好のチャンスを得たと喜ばなければいけません。


「御方様、委細承知致しました」


 決してイヤイヤ感を感じさせる事無く行使する、私の聖属性治癒魔法が齎す回復効果によって、あのクソ女の身体がみるみる間に元の状態へと治っていきます。

 この治療系魔法というのは実はそれほど簡単に施せる技ではなく、これは初代聖女様がこことは別の世界で学んだ技術を元に、こちらの世界に存在する『マナ』を用いて身体細胞に働きかけ、生物の身体に元から備わっている治癒能力を後押しする事で効果がアップするのですが、その真髄は患部の状態を透視能力(クレアボヤンス)で診察しながら、適切な部位へ適切な回復効果を注ぎ込む事なのです。


 まだ経験の浅い治癒術師に限らず、この世界で働く多くの術者たちにこの事を教えようとしても透視能力(クレアボヤンス)の素質を有する者が非常に少なく結論から言えば、この能力を持つ者の中から次の聖女候補が選ばれるのです。


 今回の治療は主に身体の表層組織と皮膚の再生治療がほぼ全てですから、神経細胞を修復して筋肉組織の上に纏わせた皮下組織の上を更に薄い皮膚で覆ってから、細胞組織の間をギリギリ通れるくらいの細さの毛細欠陥まで修復を行う必要があるのですが、成人女性の場合ですと身体中全ての毛細欠陥を繋ぎ合わせると約九95,000キロメートルにも成ると学んでますので、それらを全て治療する為には集中力の他に相当な量の魔力を消費してしまうのです。


 治癒を専門とする魔術士の数が少ないのは、元から治療と相性の良い魔術属性を持つ者が限られる上に、自分たちの失敗がそのまま患者の死に繋がるので精神的に保たないのが理由で去って行く者も多く居ます。

 でもそれが専門外の術者が治療をして更に失敗が増える結果へと繋がって行くのですが、一見すると派手で強力な攻撃魔術の方が若い魔術士たちのウケが良いという事もあって、ある程度まで年齢を重ねた術者が治癒の重要性に気づき途中から学び始めたとしても、普通の人族の短い寿命では中級まで覚えるのがやっとと言うのが実情なのです。


 ほんの少し前まで消し炭とケロイドだらけで、髪も顔も真っ黒に煤けていたあのクソ女の全身が、徐々にではありますが生命が持つ本来の肌の色を取り戻して行きます。そしてチリチリと煙が立ち昇っていたアフロヘアーがストレートに戻りキューティクルが再生されてキラキラと宝石の如き輝きを放ち始めます。


 悔しい事ですが、あのクソ女の顔と全身は神の祝福を受けていると言われても、それを素直に信じてしまうくらいの正に『美貌』と呼ぶに相応しいプレッシャーを放ち始めます。

 これほどの逸材ならば御方様の目に止まったとしても仕方の無い事と諦めもつくのでしょうが、私の中の女の部分がどうしてもそれを善しとはしません。


 それでも私は愛しい御方様の為と心の中で何度も呪文のように唱え続けながら、あのクソ女の治癒を終わらせたのです。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


SIDE:オレ


 目の前に居た哀れな消し炭が、徐々にだが人の形を取り戻してゆく。


 最初は特に興味も無く、ただ謎生物保護の観点からコイツの生命を救ってやろうと思っただけなのだが、髪が、顔が、肌が、胸が、お腹が、腰がそして美脚が火傷とケガから回復して来ると最後には絶世の美女が爆誕した。


 彼女の髪の色は明るい紫がキラキラと輝くロングのストレートで、前髪やサイドはまるで何処かのお姫様みたいなカットが成されており、その側頭部から生える大きく捻じれ曲がった角は魔族の証。

 整った眉と長い睫毛、それに目を合わせたら吸い込まれそうな金色の瞳は見る者の心を一瞬で捕らえてしまうだろう。また、赤みのある小さな唇は少し厚目で健康的なツヤが艶かしく映る。


 彼女の素肌は白く、ほんのりと薄い桜色を帯びた肌色で健康的な色気を放っており、彼女の細い首筋と綺麗な鎖骨の下には、それこそビッグなメロンと表現されても違和感の無い、とても立派な二つの丘頂が深い渓谷を形作っているから、男がこれを一度でも見たらそこから目が離せなくなるほどの吸淫力を秘めている。


 だが彼女の素晴らしさを表現するなら、別の場所を評価するべきだろう。


 確かに、燃えカスのようなボロボロのスーツを纏っていても隠せないほどのスタイルの良さだが、そのボロ布の下から生えて地べたで折り曲げられてる二本のアレは、正に究極と呼ぶべき造形美を誇っていた。


 だが、ここで問題が一つ。


 それは我が軍の女性たちの誰と比べても遜色無いほどの御美脚(おみあし)が、黒ずんでボロボロに焼け落ちそうなボロ布を纏っており、それが彼女の誉れ高いイメージと粗ぐわずこれが頂けない。

 例えるなら国宝級の至高の芸術品を、その辺にあった古新聞紙で適当に包んでいるようにしか見えないからだ。


 燃やされる前の状態だったとしても、彼女の美しい素肌を覆い隠すには面積が少な過ぎるとしか思えないくらい布地が少ない服だと判るのに、今の擦り切れてボロボロに焼け落ちそうな状態では彼女の際立って発育の良い二つのたわわなアレを全く隠せていないどころか、女性として一番大切なデリケートゾーンなど絶対に見えてはいけない辺りまで隠し切れない状態だ。

 また彼女の背中にある蝙蝠を思わせる黒っぽい翼膜は焼け落ちて骨格くらいしか残っておらず、黒焦げになった御尻からは途中で斬り飛ばされ先っぽが失われた尻尾が力なく地面に垂れている。

 そして一番重要な美しい二本の御神体には、黒いコゲみたいな燃えカスが纏わり付いており、こちらも彼女の上半身と同様にボロボロで、今の状態では高貴さより哀れみしか感じられない状態となっている。


(でも見ようによっては何故かとてもエロチックな感じがしてコレはコレでアリかな? なんて思えてしまうからオレも本当にどうかしている……)


 彼女はオレの配下ではないし、それこそ不死者(イモータル)の仲魔ですら無い。


 いくらオレ好みでドストライクの美脚を持つ女性だからと言っても、既に戦意を失った相手を一方的に吸血するなんてあってはならない事だし、何より相手が同意しないそれはオレの美学に反する。

 オレは自制の利く吸血鬼だから、ここは本当に惜しいと思うが、この美しい脚を持つ女性がこの世から完全に失われてしまう前に無事保護できた事を素直に喜ぶべきだろう。


(本当に……本当に……本当に……本当に……本当に……本当に……惜しい気はするが、ちゃんとリリースしてあげれば、またここに帰って来てくれるかもだしな)


 そして今のオレには目の前の御神体も大切だが、新しく完成した施設を皆に早く見て貰いたいと自分に言い聞かせてるうちに城へ帰りたいんだけど……。


「敵に情けを掛けられて、このままオメオメと逃げ帰る訳には行かないのじゃ……」


 オレは早く城へ帰りたい心を抑えて、彼女の言葉に耳を傾けた。


 彼女は、今は亡き先代サッキュバス女王の後継者として幼少の頃から王城で育てられたらしいが、実力主義で知られる魔族だからとか、後継者だからと言っても必ずしも女王に成れるという訳では無いらしい。

 それでも世が世なら女王の城で臣下に敬われながらの生活を送っていたはずだったのに、後ろ盾である女王が亡くなってからは、女王の妹である伯母君と従姉妹たちに城から追い出されてしまい、それからは魔族領へと侵入して来る他種族どもを血祭りに上げるのが彼女の仕事となっていた。


 そして魔族領への入口となる魔の森へ向かっている人族の軍隊が居る事を知って、それを殲滅する為にここまで来てしまったという訳だった。


 でもその人族の軍隊とやらは本来であれば勇者リンと聖女ディアーネを始めプリンやレオンたちの皆で一緒にエルフの隠れ村を攻撃していたはずだから、もしオレがこの異世界に現れていなければエルフ村の人たちを滅ぼした後に、人族の軍隊と目の前に居る魔族が戦っていた未来もあったのだろう。


 だが、どれだけ探しても人間の軍隊なんて見つからず……だってオレが先に壊滅させてたからな。

 そして何処まで行っても見つかるはずの無い人族の軍隊を探し続けて南下を続け、この場所で今まで見た事が無い城郭が聳え建っていたのを発見してしまったと言うのが事の顛末だったようだ。


 オレが不死者(イモータル)にする前の勇者と聖女、それに少女神官やB級冒険者たちを加えたモブ兵士らが相手であれば、100体以上ものグレーターデーモンを召喚出来るサッキュバスの彼女なら圧倒する事が出来たかも知れないが、今の勇者を始めとした皆は全員が不死者(イモータル)となってるから、もう人間だった頃と比べると十数倍ではきかないくらい強くなってるから本当に武運が無かったな。


(それにしても良く生き残っていたな、こいつ。普通なら今頃は地面のシミになっていてもおかしく無いくらいの攻撃だったはずなのに……)


 あわよくばオレの目が届かない所で、このサッキュバスに止めを刺そうと機会を狙ってる女性陣の皆を、何とか宥めすかして城まで戻るように命じてから「このままでは帰れない」事情を少しだけ聞いてやる事にしたのは……べ、別に彼女の美脚に絆された訳じゃないぞ? あくまで人命保護の観点に立っての話しだから、そこだけは間違えないでくれ。本当だぞ?


 聞けば彼女の名前はシンディーナ=クルェル=マジェスティアだと聞いたが、オレは命の恩人だから『シンディ』と愛称で呼んでも良いらしい。

 あと彼女が着ていた服がボロボロだったのでショコラに頼んで似たようなデザインの服を出して着替えて貰うが、勿論その間は彼女の着替え姿が見えないようにショコラがミラージュ結界を展開してくれたのは言うまでもない。

 そしてショコラからシンディが着替え終わったと聞き再び元の場所までテレポで戻ると、オレの瞬間転移を見た彼女にいたく感心されて、ちょっとだけ気分が良くなってきた。


 あと彼女が着ていた服はショコラが復元可能だと言うので「どうする?」と尋ねると、涙を流して喜ぶのでその理由を聞けば、この服は今は亡き女王様から贈られた一品だと言う事らしく、後日無事に復元が終わればオレの方から届けてやると約束した。


 これは別に彼女の美脚に絆されての事では無く、これを理由にサッキュバスたちの国をこの目で見ておこうと考えたからだ。


 あと彼女が今着ている服はショコラが普段から身に着けているバニースーツの予備だったが、シンディが元から着ていた露出の多いハイレグスーツの印象が事の他強かったので特に違和感無く着て貰えた。

 このバニースーツもシンディのボディスーツに負けず劣らずかなりのハイレグ仕様となっているが、それはオレの趣味嗜好を忖度したショコラが勝手にデザインしたのが原因だと思う。

 でもショコラがいつも履いている網タイツが無くて、シンディの美しい生脚を惜しげもなく『これでもか』と露にした彼女の膝下は、細い革紐で作られたハイヒールの編み上げサンダルに優しく包み込まれるように履かれており、普段より少し高めのヒールが最初は歩きにくそうな感じもしたが、普段から浮遊したまま滅多に地面に足を着けない生活がデフォのサッキュバスなら特に問題に無らなかった。


《私のバニースーツですから性能は勿論、物理と魔法の防御力にも期待して下さって結構です!》


 だが付け耳の無いバニースーツ姿のままだと、ちょっと露出が多すぎるレオタードにしか見えないな。


 今回も素肌部分が見え過ぎると感じたオレは自分が着てるデザインと同じ黒のオーバーコートをポイント購入してシンディの肩に掛けてやったが、背中から生えてる翼が邪魔して着られなかったのを見たショコラが、翼を通す為のスリットを秒速で仕上げてくれたから問題にはならなかった。


 それから元々この辺りは魔族領でも最南端で余り魔族の者が立ち寄る事はないが、昔から人族の部隊がチョロチョロしていたのでサッキュバスたちが護って来た場所だったのに、その場所へ知らないうちに城が建っていたのを見て、また新たな不心得者が現れたと勘違いして臣下の礼を取るように言って来たのが事の始まりだったようだな。


 最後にシンディから聞いた話だと、最初に言っていた『臣下の礼』とやらも現在は魔王軍を統べる者が誰も存在しない空席状態なので、仮に『臣下の礼』が実際に必要だと判断されても外交的な手続きが進まないと聞いた。

 また、この辺り場所は彼女の生みの親であり恩人でもある女王陛下に『拾われた場所』だと言う事もあって、寂しくなった時は一人で訪れる思い出の場所でもあったらしい。


(生みの親から拾われたって、一体どんな状況なんだよ……)


 子供の頃からお世話になったサッキュバスの国ではあったが、後ろ盾を失ってしまった彼女には住みにくい場所となっていて、いつかこの国から出たいと考えるようになったそうだ。


 こんな感じでいきなりやって来たシンディではあるのだが、もしここでオレたちが短気を起こし彼女を殺害してしまったら、それこそサッキュバスの国から見れば十分な開戦理由と成りうるるだろう。


 別にサッキュバスの国と戦争になったとしても敗けないだけの戦力と自信はあるが、今はエルフの村に攻めてきた人族たちと揉めてる最中だし、リンたちが魔族領で見つけた悪魔族のダンジョンも手を打っておかなければならない状況なので人手と時間が足りておらず、態々こちらから新たな戦いを吹っ掛ける理由が見当たらない。

 それにシンディの姿を見て思ったが、サッキュバスといえば皆が彼女のようなスタイルと美脚を持ってるらしいので、こちらから積極的に美脚(それ)を滅ぼすなんて事は絶対にありえないからな。


 もしシンディがまたこの城を訪ねて来た時に、また女性陣の誰かと再びトラブルになるのを防ぐのと、ショコラが張った城の結界に触れても敵として弾かれないようID認識出来るようオレの血を固めて造った宝玉の指輪を渡しておいた。

 この指輪には後日こちらからシンディを訪ねる時に彼女の居る方角と距離が判る仕掛けとか、その他にも色々と便利な機能が組み込まれているからきっと後で役に立ってくれるはずだ。


 そうそう、もちろん指輪は左手の薬指ではなく右手の中指に嵌めておいたから、これでヘンな誤解やトラブルが起こるなんてフラグは発生しないから安心してくれ。何たってオレはそこら辺にいる様な鈍感系トラブル主人公体質の吸血鬼ではないからな。


 何度も何度もこちらを振り返りながら飛び去ってゆくシンディの姿(特に美しい後ろ脚)を眺め終わってから皆が待つ城へと戻る。


 その地下では、新たに竣工した美容と健康に良いとされる温泉施設の中で、それらを見て喜ぶ女性たちの姿があった。

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