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異世界吸血鬼 ~前世も吸血鬼なんだが?~  作者: としょいいん


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逸話#4 光の勇者リンの事情(1)

 ボクが前世の事を思い出したのは、確か五歳の春だったと思う。


 教会の孤児院では毎年この時期になると、シスターたちがみんなと一緒に誕生日を祝ってくれる。その日だけはいつもよりご馳走を食べられるから、みんなで大はしゃぎをするんだ。


 お祝いが終わって同じ班の子と一緒に部屋へ戻ってから、子供用の簡素なベッドに二人ずつ一緒に寝るんだけど今ではすっかり親友のディアーネとは、この頃からの仲良しで何をするのも、何処へ行くのも一緒だった。


 あの誕生日会の次の日ボクと同じく今年で五歳になった子供ばかりを連れたシスターが、いつもは入らせてくれない特別な部屋へ案内してくれた……と言うか強制的に連れて行かれた。


 そして、あの時からボクとディアーネの運命が決まったんだ。


 ピカピカで透き通ったヘンテコな玉に触れると急に真っ白な光が放たれて、教会の神父様が驚いて玉の表面に浮かび上がって来た文字を見て説明してくれたんだけど、ボクには光の勇者として人間の社会を護る使命があると告げられた。でも、これってボクが転生者だったから選ばれたのかな?


 勇者として神様に認められたから、今日から教会の神学校へ入るので別の場所で暮らすんだって言われた。あの頃のボクはまだ小さくて他のみんなと一緒に居たかったから「勇者になんてなりません」って言ったんだけどやっぱりダメで、それを聞いたらとても悲しくなって床に蹲り大声で泣き続けた。


 ボクが大泣きして周りのみんなを困らせていたんだけど、周りの大人たちが勇者になったボクに手を拱いている時、仲良しのディアがボクの耳元でこう囁いてくれた。


「リン、少しだけここで待ってて。私も一緒に行ってあげられると思うから」


 ディアがあのヘンテコな玉に触れるとボクと同じように真っ白な光が溢れ出し、神父とシスターたちがまた驚いていたのを覚えてる。何しろ勇者だけでも大変な騒ぎだというのに、その同じ日に聖女まで現れたんだから教会関係者の皆は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。


 これで孤児院のみんなとは離ればなれになるけど、ディアとまた一緒に暮らせると聞いた途端嬉しくなって、さっきまで大泣きして涙だらけの顔で今度は大笑いしていたから他の人には見せられない酷い笑顔になってたと思う……色々と乙女的な意味で。


 あれからディアと一緒に神学校の初等科へ入学して二人で一緒に寮で生活する事になった。本当なら初等科は六歳からなんだけど、勇者と聖女は特別だという事で今なら保護的な意味合いもあったのだと思う。


 ここでは三年ずつ初等科、中等科、高等科と過ごすんだけど、やはり勇者と聖女の称号は伊達では無かった。並み居るライバルたちを押し退けて、二人で最終学年までツートップを守り続けたんだ。もちろんディアが一番で、ボクが二番だったけどね……。


 この九年間の学生生活で判ったんだけど、ディアは何でも出来る凄い女の子なのに何故かボク以外の子たちとは仲良くならなかった。何でかなぁ? ディアの顔は可愛くてスタイルも良いし、む……胸も大っきいからズルくね? っていつも考えてた。ボクの『コレ』は標準サイズだと思うから、ディアのアレは優に『通常の三倍』くらいはあると思う。いや、絶対あるに決まってる。


 ボクもスラリとした容姿とか細くて綺麗な脚線を良く褒められるんだけど、ディアのたわわに実った二つのアレを見せられたらボク自慢の脚なんて飾りだと思った。そんなボクの脚線美をディアが褒めてくれる度に『エロい人にはそれが判らんのですよ!』なんて、地面に掘った穴に向かって大声で叫びたい気持ちになるんだ。


 はぁ〜~~何でボクは女なんかに生まれてきたんだろぅ。男だったらディアと比べられなかったのにね……。神学校へ入学してから、十年の月日が過ぎるのなんて本当にアっという間で、ボクとディアは十五歳になっていた。


 こっちの世界で十五歳というのは立派な成人として見られるから、ボクたち二人も仕事に就かなきゃいけないんだけど、ここでもディアはボクと一緒に働くと言って教会に働きかけてくれて、その結果勇者パーティが結成された。


 これからは育てて貰った恩を返すため、結成した勇者パーティの力で人間社会の安寧を守るため、世界中に蔓延る異教徒どもを一人残らず駆逐する事が生きる目標となる。


 それからこの話はトントン拍子で進んみ、ボクとディアを護る為に聖堂騎士団長さんが団長職を辞任して勇者パーティに加わってくれて、更には人間社会で知らない人は居ないと言われるほどの人類最強の剣聖様まで同行してくれる事になった。。


 ちなみにボクの剣の師匠は聖堂騎士団のアビゲイル団長で、その騎士団長のお師匠様が剣聖ロウザ師という事なんだ。だからロウザ師はボクの事を孫のように可愛いがってくれるんだけど、アビゲイル団長は特訓と名のつくものが大好物で、ちょっとアタマがおかしいレベルのヒト。


 でもロウザ師はそんな事は全然無くって、いつも優しく剣術を教えてくれるからボクも本当のおじいちゃんみたいに慕ってる。でもロウザ師は今年六十歳になったばかりだから『おじいちゃん』なんてお呼びするのは、まだ少し早い気がする。


 この四人でというより、この四人の中に入って来られる実力というか、二人の実力者が漂わせる空気を気にしない人が居なかったというか……本当はあと一人か二人くらい居た方が良かったんだけど、師匠たち二人の個性が強すぎたのと、他社の事をムシケラくらいにしか思ってないディアの眼差しに耐えられる人が居なかったので、結局はこのだけ四人で世界を旅する事になった。


 ボクが所属するこの国はアルニード教国と言って、女神アルミダ様を奉るようにと大天使ウリエル様がご光臨された場所だと神学校の最初の歴史授業で教わった。


 歴史の最初に出てくる古代の人間は、エルフ族やドワーフ族などの亜人種たちと一まとめに『人族』と呼ばれていて、まだその当時は覇権国だった魔族から常に迫害を受けていた。


 そこで、この三種族の他にも少数部族などを加えた『人族連合』を組織して、この当時世界最強を誇った魔族の国と戦争をしていたんだけど、敵の軍隊が本当に強くてもうダメかもってくらい国を攻められるんだ。


 この時の戦争では本当に多くの人族の方々が亡くなっていて、その数も二十万人とか三十万人とも言われるけど正確な数は判っていない。何しろ各国にある主要な街とかお城なんかも燃やされて、当時の記録が消失したり、それらを管理していた役人たちも軒並み殺されちゃったみたいだから、今は正確な資料がほとんど残されていないんだって。

 そんな時、人族の各国に一人ずつ。勇者と呼ばれる人々が異世界からやって来てみんなを救ってくれたんだけど、何故か人間の国には勇者と聖女の二人が居て、他の種族よりたくさんの貢献をしたと伝わっている。


 これまでのディアを見てきたボクなら判る。ディアは聖女と呼ばれているけど、本当にガチで戦っら勇者であるボクの方が負ける。聖女より高い身体能力を持ち、人類最高レベルの攻撃力と防御力を誇る勇者を長年やってるけど、これまで一度も彼女に勝った事はない。誰も信じてくれないけど本当に全敗なんだ。今でもディアと喧嘩したら、精神的にも肉体的にもボロボロにされる未来しか見えないのは何でだろ?


 そして、あれから更に三年が経ちボクとディアは十八歳なった。いや育ったと言うべきか? ディアのアレは最早、通常サイズ(と自分では思ってる)のボクのブツとは比べるのも烏滸がましいレベルに育って、今や多くの男たちの精神を一撃で折ってしまう決戦兵器とでも呼ぶべき存在となり、見る者全てを魅了する。

 その効果はまるで本当に魅了スキルが発動したと勘違いするほどで、最近はディアの胸を見て動きが固まった敵さんを、ボクと師匠たちが聖剣で斬るだけのカンタンなお仕事になるのはいいんだけど、それはそれで女として負けた気がする。


 もしかして、この世に蔓延るおっぱい星人の撲滅こそが、勇者として生を受けたボクの使命なんじゃないかって最近考えるようになってきた。


 こんな風に常勝無敗のボクたち勇者パーティだったんだけど、聖騎士の人数が足らず冒険者を護衛に雇った少女神官が新たな魔王候補の討伐へ送り出されたと聞き、ちょうどそのタイミングで人間に仇名す悪逆エルフの部隊と戦っていた王国軍と偶々合流したんだけど、まさかそれがボクたちの運の尽きだなんてその時は想いもしなかった。


 ボクたち勇者パーティとしては少しでも早く例の少女神官と合流したかったんだけど、悪逆エルフ側にも風の精霊魔術が得意な奴が居て、ボクらが応戦しないと王国軍の兵士たちに多くの犠牲者が出てしまうくらい強かったんだ。

 そしてそのままなし崩し的な流れで掃討戦まで面倒を見る事になり、敵の首謀者を討ち取るまであと一歩の所まで追い詰めてけっこういい感じだったんだけど、斬首部隊として先行させていた騎馬隊が一騎も戻って来なかった。


 この時点で嫌な気がしていたんだけど、先行させた騎兵たちが悪逆エルフどもに待ち伏せされて戻って来られないのだとしたら、ここに居る2000の兵たちだけでは危ない気がした。


 そんなボクたちの心配も知らず、軍を率いる貴族たちは悪逆エルフどもの隠れ村を攻撃するのだと息巻いてる。ボク個人としてはエルフに対して敵意や差別的な考えは持ってないけど、昔と違ってエルフを含む亜人種たちによって人間の国々が攻撃されるようになり、一度でも人間に牙を向けた亜人の群れには『悪逆』等の罪状を示す通り名が付くようになって久しい。


 今ではエルフや亜人どもに家族や恋人を殺された人も珍しくないし、魔法もろくに扱えない獣人どもと同じように奴隷として使役する事で彼らの罪を償わせていると言うのが、人間の総意だと言うのも判るつもり。

 だから人間の勇者であるボクや聖女のディアが街中で、差別や迫害を受けている亜人奴隷を見つけても決して助けてはいけないと教えられていたし、別に助けたいとは思わなかった。


 もし考え無しで下手な慈悲でも見せれば、街の人たちが持つ亜人たちへの恨みや憎しみが殺意となってボクらに向けられたら正直ゾッとしてしまうよね。


 少し話が逸れてしまったので、元に戻すね。


 200名の騎兵をどうにか出来る敵部隊がこの先に居ると知ったボクたち勇者パーティは、このまま黙って2000名もの兵士に生命を見過ごす事は出来ないと考え、このまま同行すると皆に確認した。このまま知らん顔で放置して後で甚大な被害を受けるかも知れないと判った以上、最後まで同行して見届けようと思った。


 そしてアイツと出会ってしまった。

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