表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界吸血鬼 ~前世も吸血鬼なんだが?~  作者: としょいいん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/93

第1話 ちょっと長めのプロローグ

挿絵(By みてみん)

表紙と最初の挿絵はmyria様の作品です。

 深い後悔の念や恨みを持ったまま死ぬと、この世への未練によって死にきれず別の存在として生まれ変わる事がある。


 肉体が滅びて霊魂と精神が消え去ろうとする時、稀に周囲の自然エネルギーを巻き込み、それが魔力の塊となって原初の生命が生じる。

 原初の生命には終わりが無く無限の生を持つとされているが、この世の神による祝福を持たぬそれらは不死者(イモータル)と呼ばれ忌み嫌われた存在となった。


挿絵(By みてみん)


 オレが覚えているのは約2000年前の朧げな記憶の一部。


 もう思い出せないほど古い記憶の中、約束の地から逃れ出てたオレたち一族は只ひたすらに東を目指して旅を続けて来た。


 最初はオレたち一族以外にも、いくつかの氏族が共に進んで来たのだが、西から追って来る敵に滅ぼされたり、旅に疲れて途中で留まったりして、『日出る国(ひいずるくに)』と呼ばれる極東の島国まで辿り着いた時、オレたち一族以外の者はもう誰も残ってはいなかった。


 オレに親は居ない。


 旅の途中で失ったのでは無く最初から存在しなかったのだが、その理由は今も解らない。何しろオレが意識を持ち始めた最初の頃から既に両方とも居なかったからだ。


 この地から先は大海原が広がっているだけで、もうこれより東へ進む事が出来なくなったオレたちは、この国を終生の住処と決めた。


 この国へ来た頃は他国から渡って来た余所者であるオレたちに対し、この国に古くから土着する者たちが何度も戦いを挑んで来たが、ただの人間や田舎妖怪などオレたち不死者(イモータル)の敵では無かった。

 そしてこの新しい土地での生活も落ち着いて、今度こそ安息のある日々を皆で過ごそうとしていたのだが、遥か西の地からずっとオレたち一族を追いかけて来た神の使徒どもが現れ、再びあの辛く苦しい戦いの日々へと続く未来が待っていた。


 この地へ辿り着いてから実に1000年以上もの時を掛けて、この国に蔓延る仇敵どもを一掃し、そこから約500年ほど静寂の時を得たがそれは長くは続かず、その後オレたち追い詰めたのは、遥か西方にある国から来た『神の尖兵(ディバインワンズ)』どもだった。


 配下や眷属たちに自らを『天主』と呼ばせて自身は安全な天界から一切降りて来ず、己が使徒を差し向けて来るヤツがこの世の神を名乗り信徒たちの魂を供物に捧げる事によって『神の尖兵(ディバインワンズ)』をこの世に送り込み、自らが定めた教義に反する者たちを次々と滅ぼしていた。


 元よりこの国には八百万(やおよろず)の神々が居ると考えられており、万物全てに神が宿るという考え方は『天主』が定めた教義とは決して相容れるものでは無く、虎視眈々と侵攻の機会を伺っていたヤツらは、一方的な理由で戦争を仕掛けて『この国』そのものを破壊してしまおうと考えた。


 これまでその機会をずっと狙い続けていたのだろう。


 近年になり大国との戦争を回避出来ないと悟ったこの国の指導者たちは、圧倒的な国力の差がある事を承知の上で一年以内に戦果を挙げて停戦条約を結ぶ事を目標として開戦の道を選んだ。

 だが結果として敵国の方が一枚上手であったのか、無駄に広がり続けた戦線を支えるため国力は消耗し、最後には護国の為の主力艦隊までを失う事態となってしまった。


 その頃のオレたちも国内に侵入してきた敵兵どもから常に生命を狙われており、『神』の名の元に異次元から次々と送り込まれて来る【ハンター】どもによって、古くから共に過ごしてきた仲魔たちが一人また一人と滅ぼされてゆく。


 そして終いには住んで居た館まで焼かれてしまい、海に面した街道を太陽から逃れるように西へ向かって逃げ続けなければならないくらい追い詰められていた。


 途中で内海に面した港街で敵の待ち伏せに遭ったオレたちは、そのから逃げ場を失い敵の包囲網に捕まってしまう。

 だが、まだこの段階ではそれほどの危機とは考えておらず、時間さえあればいつでも抜け出せると安易に考えていたオレが致命的な間違いに気づいたのは、天から神の『アレ』が舞い降りて来た時だった。




 夏の潮風漂う海に面した、美しい街並みの中で夜通し戦い続けたオレたちは既に何人もの仲魔を失っており、まだ弱い朝の日差しがコートから露出した手の甲を炙るのを感じて、もう残された時間は少ないと感じた。

 だが誰一人として仲魔を見捨てて自分だけ逃げ出すような輩は居らず、オレたちは朝日に身体を焼き焦がされながら尚も戦いを続ける。


 やがて辺りに居たはずの仲魔たちは太陽の光と敵兵どもの手によって一人ずつ姿を消しており、最後まで残っていたのはオレ一人だけになっていた。

 だが、それでも諦める事なく反抗を続けるオレに嫌気が刺した使徒どもの一人が、自分の生命と魂を神に捧げて『神の尖兵(ディバインワンズ)』を呼んだ。


 祈りを捧げていたのは背の低いチビで、そいつの頭上遥か天空の先より聖なる光が降臨し術者の身体を数多の鎖が彼の身体をグルグル巻にして空中へと召し上げ光の珠となり、その中からそいつはやって来た。

 青白い聖なる輝きの中から現れたのは全身を金ピカの鎧で纏った天使の翼を持つ一柱の『神の尖兵(ディバインワンズ)』。 それはオレたち不死者(イモータル)を『神敵』と呼んで憚らない神の殺戮者だ。


 だが今回オレの前に現れた天使だが、何故かこれまで戦ってきた奴らと比べて体格が明らかに小さいのは、もしかすると先ほど祈りを捧げて神の供物と成り果てたのが背の低い少年だったのが理由だろうか?


(このクズ天使め! 人間の子供は大事に育てて成人してから収穫するのが常識だろうが!)


 ヤツが地上まで降りて来て街中で戦えばより多くの被害が出る。オレたちから見て家畜でしかない人間どもの生き死になど特に気にはしないが、食料源として自由に放牧させてる家畜の数を勝手に減らされるのは面白くない。


 オレは太陽の日差しに焼かれるのを承知で背中から黒くて大きな翼を広げ、地上から約500メートルの上空で待ち受ける『神の尖兵(ディバインワンズ)』に向かうが、オレが到着する前に天使(エンジェラン)のアストラルボディが突然砕け散り、そこから強烈な聖なる光が地上へと降り注いだ。


 オレには天使(エンジェラン)どもを滅ぼす魔剣によって、これまで散々討ち倒してやったのだが、それが(あだ)となり対策を研究された結果、空中で接敵する瞬間を狙われて自爆による自己犠牲の破壊魔法を発動されてしまった。


 太陽の日差しから身を守っていた遮光素材の黒いコートを一瞬で焼き尽くされ、核の炎に包まれながら咄嗟のテレポートによって地中まで逃れる事に成功したが既に遅く、身体にある多くの細胞を破壊されてしまいオレが再び目を覚ましたのは翌日の夜だった。


 黄泉路から戻って直ぐの状態では流石に著しい能力減退は免れず、全身の不死細胞はまだ十善の力を取り戻してはいなかったが街の惨状を目の当たりにしたオレは、これ以上この街へ留まって再び天使(エンジェラン)どもの自爆攻撃を受けるのは不味いと考え、最後の力を振り絞ってこの街を後にした。


 そして辿り着いたのは西の端にある外海に面した入江のある港町で、街はずれにあったボロ屋の中に身を潜めて、そこで体力の回復を待つ事にした。だが太陽が中天へと差し掛かる少し前に再び天空から核の炎を受ける事になった。


 まさかオレの居所が判らなかった『神の尖兵(ディバインワンズ)』が、短気を起こして街ごと聖なる炎で焼き尽くすなんて考えもしなかったオレの負けだ。

 発生した熱風と衝撃波によって周囲にある建物が尽く破壊され吹き飛ばされて行く中、オレは逆光に目を焼かれながらも敵の姿を探すが、そこには天使の白翼を大きく広げて空中に留まる一匹のブタみたいな輪郭しか確認する事はできなかった。


挿絵(By みてみん)


 もう完全に手遅れだとは思ったが、それでも咄嗟に地中へとテレポを行い其処で二度と目覚める事の無い深淵の眠りに落ちていったはずだった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 あれから半世紀以上の時が流れてオレは目を覚ます。


 あれほど激しい敵国からの攻撃によって荒れ果てていた国土は、何故か目覚ましいほどの復興を遂げており、空から眺めた夜の街は人々が営む生活の明かりで光輝いていた。


 目覚めてからずっと体調が思わしくないのは、身体能力などが軒並み弱体化していたからで、もう以前のような筋肉ムキムキのマッチョな身体は失ってしまい、痩せこけた身体でヨロヨロと満月の空を彷徨う。


(もう以前の身体には戻れそうにないな……)


 これは後で知ったのだが今は細マッチョの時代らしく、今のやせ細った姿であればハンターや『神の尖兵(ディバインワンズ)』どもの追跡を掻い潜れそうなので、人間どもの街に隠れ住むには丁度良いと思った。


 それでも月日の流れと共に何度も月の光を浴びているうちに徐々に能力は回復したが筋肉は戻らなかったが、今では2回の核の炎によって全身を焼かれる前より強靭な身体になった気がしていた。

 見た目の変化と言えば元々黒かった髪の色が銀髪に変わり果てていたが、ハゲていないので問題無し。何故ならそんな事よりもっと重要な変化が身体に起こっていたからだ。


 最初の核攻撃を受けたのは、あのチビの少年天使による自爆攻撃だったが、あの聖なる光の正体は遠く海を渡った敵国で開発された新型爆弾でその触媒にはウランを使用していた事を戦後の調査で知った。

 また最初の攻撃で滅びなかったオレに対して、次にやってきた太っちょ天使が使ったのは、より強力な術式によって威力を発展させた新しい方式で、触媒にはプルトニウムが使用されていたみたいだな。


 ちなみに、これら『神の尖兵(ディバインワンズ)』どもによる攻撃は、敵国の爆撃機によって運ばれた核兵器によるものだと発表されており、愚かなる人間どもはその嘘の情報を信じ切っていた。


 一発目の攻撃で弱っていたオレの身体が二発目の攻撃に耐える事が出来ず、あの時点で完全に滅ぼされたと考えていたのだが、この二度に渡る核熱反応の地獄を生き延びたオレの身体は何故か太陽の光をモノともしない身体となっていたのだ。


 しかし歴代吸血鬼(ヴァンパイア)たちの誰もが欲したこの能力だが、それを手に入れた代償はオレの記憶だった。


 オレには二度の核攻撃によって滅ぼされたあの日より前の記憶が大きく欠落しており、オレには遠い約束の地から共に逃れてきた多くの仲魔や配下たちが居たはずなのだが、何故か誰一人として思い出す事が出来なかった。


 あの頃住んで居た屋敷も敵の手によって焼かれた事までは覚えているが、今となってはそれが何処だったのかすら思い出せない状況だ。

 たった一人でこの世に残され寂しくて悲しいのだが、親しかった者たちの顔すら覚えておらず涙を流す事すら出来無かった。


 これまでのオレは自分の事をただの不死者(イモータル)だと思っていたが今なら判る。オレは本当の意味で生まれ変わったのだろう神敵と呼ばれる存在に……。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 あれから目立ち過ぎる銀髪を元通りの黒髪に染めて、この国の古い都へと移り住む事にした。


 この街なら人間たちの重要な文化財も多く、オレ一人を滅ぼす為に核兵器を使用される可能性がほぼ無いと考えたからで、街の中心地部から北側に位置する小高い山の近くに古い高層マンションを持つ老夫妻の孫として人間社会へ潜り込んでいた。


 吸血鬼には【魔眼】というとても便利な能力があって、相手の瞳の奥を覗き込み脳へ直接情報を書き込む事によってオレへの印象を操作したり記憶を改竄したりする事が出来る。


 この老夫妻に目を付けたのは元医師で裕福な暮らしをしていた事の他に、大人になった子供たちが他府県に出て行ってしまい二人きりで質素に暮らしていたのが理由だった。

 ご近所の皆様には都会の学校でイジメにあって精神に傷を負った可愛そうな孫が、裕福な祖父母の元に引き取られて療養してるという設定を考えておいた。


(それならオレがマンションの高層階に引き込もって居ても誰も怪しまないからな)


 オレが目覚めたこの国にはインターネットという元を辿れば敵国が発明した情報システムが普及しており、これは敵国に敗北して属国にされたのかと勘違いしていたが今は自治権を回復してるとネットの情報で知り安心した。

 でもこれでオレが自室に籠りっぱなしでも世の中の情報が手に取るように判かったし、生活に必要なモノはほぼ全て取り寄せる事が出来たので何も不自由はしなかった。


 ただ時々だが非常に喉が乾く時があって、それはネットで取り寄せたどんな飲料でも潤す事が出来なかったが、今の世の中には『人工血液』なるモノが存在している事を知り、老夫婦が通っていた公立病院に夜な夜な忍び込んで輸血用パックをチューチューすれば、人間を襲わずに生きて行けるのだから戦前と比べて明らかに生きやすい世の中になったものだ。


 それに鏡やカメラに姿が写らない吸血鬼の身体は、現代の警備システムを掻い潜るのにとても都合良く出来ていて、理由は良く解らないが物体感知系のセンサーにも捕捉される事は無かった。

 こうしてオレは人間たち、取り分け生前に敵対していた天使(エンジェラン)どもやハンターらの目に触れる事無く、穏やかに暮らせる生活基盤を手に入れたのだった。


 老夫婦たち以外にもオレと接点を持つ人間は【魔眼】を使って記憶操作のみを施すだけで配下を増やそうとはしなかったのは、決してオレが人道的な考えに目覚めた訳では無く、戦う必要が無くなった世の中で下手に下位アンデッドなんかを生み出せば、それが新たな火種を抱え込むデメリットになると考えた結果だった。


 もうリアルで血を流して戦う時代は終わったのだ。世界はあのクズみたいな神のモノとなり数百年もの時が過ぎてしまっており、今からそれを覆すのは難しい。なので、戦いなんてネットの中だけで十分。そう、オレはネトゲの世界にドハマリしていたのだった。


挿絵(By みてみん)


 しかし、ネットによるVR系のMMORPGも、極めてしまえば飽きが来るのは仕方が無い。最近ではクエストを受注するよりもネトフレとのチャットが主な時間潰しとなっていた。


「ねぇ、このゲームに隠しイベントがあるって知ってる?」


 ネット内にある掲示板で囁かれ始めたフレーズが広がり、今では誰もが会う度に話するようになっていた。


 当初より実装され追加され続けて来たシナリオも、近頃は一通りクリアしてしまった者たちが出始める頃になると、流石にローンチされた当初にあった熱気は徐々に冷めてきたと言える。


 そんな時、誰も知らない隠しイベントが密かに発生しており、それに関わったプレイヤーたちの一部が行方不明となり、それ以降パッタリとログインして来なくなるという話が広まるようになった。

 噂では異世界へ旅立ったとか、リアルで事故に巻き込まれたとか、突拍子もない内容だけが一人歩きを始めネット界隈では既に都市伝説となっていた。


「そういえば、このクランでも先週からエルフの女の子が一人行方不明になってるよね?」


 エルフやドワーフ、それに獣人族や魔族なんかが同じ街で暮らして争いになってないのは、ここが電脳空間内に創られたネトゲの世界だから。


 オレは自分が高貴な吸血鬼(ヴァンパイア)だという事にプライドを持っているので、例えゲームの中で不利なハンデキャップが課されていようと、種族だけは必ず吸血鬼(ヴァンパイア)を選んでプレイしている。


 クランハウスの一階にあるロビーでは、これまで挨拶程度の付き合いしか無いメンバーたちが、チャットでワイワイ話してる内容に興味が無くなったオレは、ひっそりと自分のマイルームまで戻って来た。


《システムメールが届いています。開封しますか? Yes or No》


 そのメールには見覚えの無い添付アイテムがあったが、また運営が何かやらかしてお詫びに石でも配ってるのかと安易に考え、とりあえず『Yes』を選んだ。


 すると画面いっぱいに広がった魔方陣の向こう側から声が聞こえて来る。


《助けて下さい!》


 その瞬間マイルームの中が真っ白な閃光に包まれて、目の前がホワイトアウトした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ