俺は一体何枚の顛末書を書けばいいですか?〜突如として現れた男どもは史上最強の生物でした!?壊されていく街を見てどうすればいいのか教えてください〜
我々が今住んでいる、現代。
その中には人類に仇なす敵の存在がいた。その名は『トライポット』。
トライポットは遠い昔に地球外より飛来した生命体である。いや、生命体と言っていいのか分からない存在だ。分かっていることは、我々人類に害をもたらすものだということだけ。
トライポットはさまざまな形をしており、一番多いのが飛行型と呼ばれる存在だ。そのほかにも陸戦型や海の上に巨大なタコみたいな形をして現れたこともある。
トライポットは時を止めることが出来る。その止まった時を利用して街や物を破壊していくのだ。
奴らの栄養源は人間の血肉。恐らく捕食をしに地球へ降り立ったのだろうと考えられていた。勿論、意思疎通は不可能だ。
しかし、奴らは地球という物を侮っていたのかもしれない。
まさか、年端も行かない少女が止まった時の中を動くなど考えたことも無いだろう。
初めは止まった時の映像がネットに公開されたのが発端だった。
止まった時は普通の人間では、認識できず、その間の意識もないという。
しかし、映されていた映像の中には6人の中学生くらいの女の子達がが巨大なトライポットを相手に互角以上の戦いを繰り広げていた。
街に被害が出ないよう、銃を撃ったり。あるものは飛翔し蹴りを入れてたりしていた。
ネットに公開された後、政府から正式な発表があり、この6人以外の人も止まった時の中で動ける少女がいると発表され、人類はその少女たちに希望を託すこととなった。
「なので……この止まった時を動けるのが……っておい! 聞いているのか村上大輝!」
「ああ! 聞いているさ! つまりハーレムが作れるということだろ?」
「何も聞いていないな、お前は!」
俺は目の前にいる少年に今の話を聞かせていた。
彼の名は村上大輝。数少ない止まった時の中で動ける『男性』だ。
基本、今までは止まった時の中で動け、トライポットを倒せるのは『女性』しか居なかった。
しかし、ここ最近、新たに止まった時の中で動ける男がいると判明した。
村上大輝は“部隊【オメガ】”がトライポットと戦闘中、突如として現れた。
空からトライポットに対して踵落としを決め、半壊させ、その後手から火を放ち、トライポットを消滅させた。
それは助かったのだが、その後の行動が問題で……。
『やあ、大丈夫かい。可愛い人』
など。
『ふっ、俺は勇者だからな。このくらい容易いものさ』
など。
少女を口説きまくっていた。
当の少女たちは『キモい』の一言で済ませたらしいが、それでも村上大輝は笑っていた。
村上大輝は自身の事を『転生者』と呼んでおり、前世でトラックに跳ねられ、死んだと思ったら、神から贈り物を頂き、俺はこの世界にやってきた。などと意味のわからない事を言っていた。
正直言ってやべー奴だ。
しかし、力は本物だからなぁ……なんとも言えん。
「ふふ、チーレム……いい響きだ!」
顔を高揚させ、幾度となくハーレムを作るのが夢だと言っている。
年齢は16歳。あまり部隊の少女たちと年齢は変わらないらしい。
など、考えていると、もう一人部屋に入ってくる。
「おい、遅刻だぞ。今、何時だと思っている! 東堂総司!」
「すまん、朝からコミック百合○を読んでいて、気がついたら、17時だった」
「意味がわからん!」
もう一人の名は東堂総司。
この男は、とんでもない百合愛好家だ。
トライポットと戦っているのが少女しかいないという事を聞きつけ、どこからともなく現れた。
その戦闘能力たるや、ドラゴン○ールの悟○に匹敵すると言えばいいのだろうか……。その戦闘能力はもはやフィクションの物としか思えない強さを誇っている。
瞬間移動をしたり、空を飛んだり、なんか手から光線出したと思えば、一人でトライポットの群れを壊滅させるわ。
というか手からなんか出過ぎだろ。
この強さをどこで手に入れたと聞いたらとんでもない答えが帰ってきた。
『そんなもの、一人で修行したに決まっているだろう、百合のためならなんだってやる』
などと意味のわからない事を言っていた。
「東堂、また百合なんてもの読んでるのか? そんなの邪道だ。間の男を入れてハーレムにしたらいい」
「目を合わすなり飛んだご挨拶だな、クソ野郎」
「何を言うか、お前だって性欲ぐらいはあるだろう? 女の子にご奉仕してもらう。それがどんなに至上な事か……」
「部長、コイツを黙らせてくれ、不愉快だ」
など、出会うたびに口論をし始める仲の悪い二人。
俺はそんな奴らの『部長』をしている。
どんなに強くても、コイツらはまだ学生であるし、学校に通わせなきゃならない。
しかし、こんな強大な力を持つ二人を野放しには出来はしない。
なので、同じ止まった時を動ける、数少ない男。俺、こと『二階堂咲耶』が選ばれた。
元々、時の中で動けるので、戦闘員として部隊『オメガ』に所属していた時にコイツらと出会い、成り行きで『超常能力研究部』という奴らを監視するための部活を作り、これまた、成り行きで部長になってしまった。
とまあ、こんな具合でいろんな事をコイツらに教えているわけなのだが。
素行不良で遅刻はするわ、女は口説くわで、俺は日夜後始末に追われているのだ。
「はあ……村上! お前は、少し喋るのを控えろ! 東堂、今度から時間をちゃんと確認して、学校へ登校しろ! 今日は以上! 解散!」
と言った直後だった。
体が一瞬硬直したかのような感覚に襲われる。
これは時間停止の際に来る感覚だ。
つまり、トライポットがやってきたという事だった。
窓の外を見る。巨大な七つ足の生命体がそこにいた。その足で支えているのは真ん中が窪んだ円盤だ。その真正面に真っ赤な光が見える。あれは目だ、あれで人間を見つけ、そして動くものがいればあそこから光線を出して攻撃してくる。
「くっ! 今ここには部隊は俺たちしかいない! やるぞ! …………ってあれ? アイツらは?」
振り向くとそこにアイツらの姿はなく、代わりに後ろの方で爆発音が聞こえた。
煙を上げ、火が立ち上がる。……トライポットは跡形もなく消滅して、街への被害は少なかったようだ……しかし……それはあくまでトライポットによる被害であって……!
「ああああああ!!! 街が燃えてるううううううう!!!」
アイツらによる被害は甚大だった。
「どうだ、見たか! 東堂! 俺の『ファイヤーボール』のお陰だな!」
「ふん、貴様の火球はトライポットの足を消滅させたにすぎない。最後のトドメは俺の拳だ。それによりトライポットは完全消滅した」
「ああ? やるか?」
「やめておけ、貴様を殺すタイミングは見計らっているが、今はそうじゃない。救助が先だ」
「え? おっと……! 俺のせいか……? これ!? ……えーっと……また、なんかやっちゃいました?」
……母さん、父さん。二階堂咲耶は少し、質問いいですか?
俺は一体、何枚の顛末書を書かなきゃいけないんでしょうか?