表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

Faith物語

身内用のネタ作品です。


「全てを知って、それでもここまで来たのね。」


闇に溶けていくような長い漆黒の髪に、大山羊の様な角を持つ美しい女が言う。

女は大きなクリスタルを切り出して造り出した輝く玉座に座したまま、眼下に立つ青年を見下ろした。


「まぁ、あなたは勇者だもの、わかっていたことよね。」


女は事を憂いたような表情のまま口を開きため息を吐く。


青年はゆっくりと力強く、一歩一歩と決意と覚悟を踏みしめてこの広い玉座の間を進んできた。


光輝く白銀の鎧を身に纏い、伝説に謳われる聖剣と聖盾を手にした銀髪の青年。

《輝く竜》の勇者リン。


彼が此処まで来たと言うことは、自分の配下達は彼を止められずに散ったと言うことだ。


彼は本当の勇者としての力を手にしたのだろう。


此処へ、私を倒す為に。

《魔王》である、私を。



「そうだよ、ミリール。俺は、勇者として此処へ来た。」


青年は目の前にいる闇色の衣を纏った女を力強く見つめる。


人族の敵、魔族の首領、《魔王》ミリールを。



自分達二人しかいない魔王城玉座の間。

巨獣すら通れるほどの大きく堅牢な扉と、そこから遠く玉座の前まで続く深紅の絨毯。

金銀の細工を鏤めた白を基調とした床や壁、美しい彫刻を施した幾つもの黒い大柱。

そして夜の闇のような天井には、七色のクリスタルで出来た美しいシャンデリアが吊るされて輝いている。

かの王国の近衛騎士団の全軍すら飲み込めそうなほどに広く、そしてその畏怖を誇るかのように美しく絢爛なその空間。


恐らくここが決戦の場となるのだろう。


「勇者となる事も、君と戦う事も全て、俺が選んで此処まで来たんだ。」


魔を祓い人族を護り戦う、希望の光たる勇者。

自分は人々を救いたいと望んだ。

自分は人々を救うことを選んだ。


「そう、選んだんだよ、ミリール。」


「違うわ、リン。あなたは選ばれ、そして導かれて私の前にいるのよ。」


魔王がその権威を示す玉座から立ち上がりながら言った。


その否定の言葉に青年は心臓を掴まれるような強い力を感じたが、自分が勇者であることを思い出し、その自分の力を信じる。


「それでも、俺は選んだんだ。

抗い続ける事を。勇者で在り続ける事を。」


痛い程に真っ直ぐな瞳。

自身にも運命にも負けることを許さない、青くも力強い瞳。


「私も選んだのよ、リン。

あの絶望の淵で、

受け入れる事を、魔王で在り続ける事を。」


魔王はゆっくりと勇者の立つ広間へと足を進めた。



勇者と魔王は足を止めて正面から向き合う。


二人の間にはもう5、6歩程の距離しかない。

既に互いが互いの間合いの内側に入っている。


それでもお互いの言葉を、眼差しを、想いを、交わさなくてはいけないと二人が感じていた。


「わかっている。だから、俺は君のことも救わなきゃいけないんだ。」





数瞬か億秒か、長いような短いような、瞬くような時間だとしても、二人の内に答えは出た。


いや、すでにお互いの答えなどとうに決まっていた。

二人共そんなことは知っていた。

それを確認しただけだ。

揺らぐことのない選択。

自分達は振り返らないと決めたのだから。



ただ少し、少しだけ、期待したのかもしれない。





「そう・・・」

魔王は小さく呟く。



「では、始めましょう、輝く竜の勇者リン。」

禍々しく燃える魔剣を引き抜き構える魔王。



「あぁ、始めよう、漆黒の魔王ミリール。」

竜気を帯びた聖剣と聖盾を構える勇者。



相容れぬ光と闇の魔力が膨れ上がりぶつかり合う。



「「私たちの選んだ・・」」


「「誰も望まない、戦いを。」」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ