ドレスの色は3
きっと俺よりはこういう事には慣れてる──と思うことにする。
モテるからとかそういうのでなく、いいとこの家柄ならエスコートやら女性を伴うパーティやらに縁があっただろう、という事だ。
「じゃあ、昼前に向かえに来てもらうようにするから、お前は待ってろ。
時間があるから着替えて剣の訓練をとかするなよ、いいなっ?」
「でも、アズール」
「なんだ?」
「せっかく綺麗なドレスだけど、ドレスに合うような靴持ってないわ」
「なんだってぇ!
靴──か、なら今から……ああ、騎士長と昼飯の時間も迫ってるし……アルディス、後は頼んだ!」
すっかり忘れていた。
ディアナが踵のある靴なんか履いたことなさそう、というのも、そろそろ時間だということも。
「ああ、分かった」
「頼んだぞっ」
ともかく、約束の時間までそう時間はない、ディアナとアルディスに手を振ると、廊下を走りだす。
「しっかし……綺麗だったよなぁ……ディアナ。
あそこまで綺麗だとは、普段意識してないだけにヤバかったな」
そう、普段は美人なのは分かってはいるが、同僚で友人の姉ということであまり意識していなかった。
アルディスを友とする前だったら──とふと思った。
いや、ディアナは誰にでも優しいから、俺が誤解したりしないようにと己を戒めていたのだろう。
優しさを愛情だと、厚意を好意だと受け止めてはいけない、と歯止めをかけていたような気がする。
「初めて会った時ってどうだったかな……」
正直あまりよく覚えていない。
他の野郎共を差し置いて、仲良く話すようになったのは何でだったっけ。
どうもこう、頭に霞がかかったようにその時の事は覚えていない。
「ま、いっか」
出会いはともかく、あの姉妹と男共の中で一番親しいのは多分己だろう。