ドレスの色は2
まさか、と口に出そうになって慌てて口を噤む。
ディアナもアルディスも料理が出来るとは一度も聞いたことがない、そのアルディスが弁当なり昼を作るなんて、それは己の思い過ごしだろう。
きっと奢ってくれるのだろう、しかし、飯を一緒に取るなんて今までだってしていた、それが照れてるのは──いや、考えるまい。
「さて、ディアナにこいつを見せに行こう。
どのくらい似合うか、俺らにも見せてもらおうじゃないか、なぁ?」
気をとり直すように明るく言いながら、アルディスに笑いかける。
気分的には背を叩きたかったが、己の両手にはドレスと小物の箱が乗っている。
「ああ、それは俺もぜひ見たいな、行こう」
宿舎に近い橋で、ディアナの姿を見つけて、アルディスが呼び止める。
己は手を振る代わりに持っていた箱を上下させて、ディアナに笑いかける。
「よぉ、今ヒマか、ヒマだよな。
こいつが今夜の衣装だ、ちょっと着て俺らに見せてくれよ。
どれほどお前に似合いか、騎士長を射止められるか確かめたいんだ」
茶化すように言いながら、箱でディアナの背を押す。
宿舎のディアナの部屋の前で待つことにすると、アルディスも己の隣に立った。
「なぁ、アルディス……まさかとは思うんだが。
……あのドレス一式はディアナ一人でも着れるのか?」
「多分……大丈夫だと思う。
着慣れてない人だと言ったら店員が後でファスナーを止めるだけだと言ってたから……」
「ああ……それなら大丈夫か」
小物はストールだけなら羽織るだけだしな、と考えていると、ドアがゆっくり開いた。
「……お待たせ、どうかしら、おかしくない?」
真珠のような光沢のある赤いドレスに、赤に銀糸の入ったストール、派手な色だが、それを纏ったディアナは思わず目を奪われるほど綺麗だった。
「予想……以上だな……これなら騎士長も一発でコロリと……」
はた、と気付く。
髪はどうするんだ、髪は。
ドレスっつったら髪は結い上げるって……いや、あまりいつもと違いすぎるのも戸惑うばかりだろうし、これでもいいか。
「あとは紅を差せば……紅くらいあるよな?」
珍しそうにくるりと身体を回してドレスのドレープが広がって翻るのを見ていたディアナに声をかける。
「え、と……紅ならいくつかもらったのが」
誰に?
俺はやったことねぇぞ、とアルディスの顔を見ると、アルディスが頭を振って知らないと応えた。