ディアナの恋3
同僚のデュークスに教えられた川沿いの店へと向かう。
すぐ分かると言われたその店は、外観は赤いレンガの壁に蔦を這わせ、川にせり出したテラス席はランプの明りが仄かに照らすといったムード満点で、月でも出ていれば告白にうってつけといった様子が見て取れて、己の目的にかなり添っていて、その店を紹介してくれたデュークスを流石だと思う。
店に入るとボーイが案内をと近づいて来るのを右手で制して、明日の夜の予約をしたいと告げる。
すると、ボーイの代わりに店の責任者らしき者がこちらへと促すのに付いて行く。
「実は、明日の夜はとっときの席で、あー川沿いの奥の席がいいと言われたんだが、大丈夫だろうか?」
「明日の夜ですと──そうですね、8時でしたらご用意出来ます。どういった用途をご希望でしょうか?」
「ぶっちゃけて言うとだな、明日来る二人をなんとかくっつけたい──といった所なんだ」
だから──と続けようとして、言葉を制される。
「かしこまりました。それでは私共にお任せ下さい」
笑みと共に伝えられて、こういった事は慣れているのだろう、己の名ではなくディアナの名で予約をし、明日の夜はくれぐれも頼むと言い置いて、己の肩の荷を降ろす。
後は──明日の昼に騎士長にディアナを意識させるよう切り出して夕食に行かせるだけだ、と思うが、雄弁ではない己の事だ、上手く伝えられるかを考える。
「ま、いざとなったら……言っちまえばいいか。
いくら堅物でも好かれてるだの恋われてるとか言えば意識もするだろうしな」
しかも、相手は騎士長の補佐、綺麗で優しくて何より騎士長の事を想っている、それで何とも思わないわけがないだろう。
「浮いた話がないが──まさか……なぁ……」
ふと、浮いた話がないのは女に興味がないからか、と思いかけて、その考えを頭を振って追いやる。
そういえば己の答えも明日までだったと思い出して、さてこっちはどうしようかと考える。
「まぁ、なるようになるか──それよりは明日の昼だな」
明日の昼、己がしくじらないようにと天に祈る。