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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第一章 ガイジの問題ある女の子たち
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第6話 俺、エイリス中尉という人物

 さて、オルティの言った西別棟までは割と距離もあることだし、少し俺の事も話してみよう。


 俺、エイリス・サフィニス・ブレウは、将来大元帥になることを夢としている、十七歳の若者だ。


 俺が将官になりたいという事すら大それた夢、という程、幹部になることは難しいのだが、それを俺は元帥の上であり、この国の実質トップである大元帥になるという事は、子爵の息子としてはあまりにも大それているのだ。

 大抵の貴族は、与えられる階級、例えば子爵であれば中佐という地位を、まあ、二つ上げて引退すれば、大したものだと言われる。

 俺の家は子爵で中佐を受け継ぐから、二階級上は大佐、准将だな。


 まあ、いくら中佐を准将まで上げたとしても、引き継いだ次の子爵はまた中佐からなのだが。

 基本、軍の昇進というのは、成績が優秀だったり手柄を立てたりすれば上がるものなのだが、組織幹部というのは数が決まっているのでそう簡単ではない。

 誰かが引退して席が空いた時、それまでの経歴や家柄から誰が昇進するかが選ばれるのだ。


 その時にもちろん、「彼は十五歳にして少尉になり、二十歳には大佐にまで昇進しており、その手柄は云々」と、若い頃からの全ての経歴が問われる。

 もちろん早い昇進が必ずしもいい経歴になるとは限らないが、遅いよりはいい。


 それは、十分に理解している。

 理解しているからこそ、俺は少年士官学校を首席で卒業してすぐに功績を上げ、二か月で少尉に昇進したのだ。

 にもかかわらず、俺は今、全力で昇進を拒んでいる。


 なぜそうなったか、それに至った経緯は極めて単純な理由だった。

 簡単に言えば、「今すぐには子爵になりたくない」ってことだ。

 俺の親父はサフィニス子爵という貴族で、長男である俺はその後を継ぐことになるだろう。


 親父の引退が数十年後、早くても十年後であれば、何の問題もない。

 俺はその責務を受け止めよう。


 さて、俺が継ぐサフィニス子爵家は代々優れた政治家を輩出してきた、政治の中枢の一族ではあった。

 だが、軍事国家になって以降、その功は軍事的な功績を上げる一族の間に埋没してしまっていた。

 つまり、子爵として任命される中佐、という地位を、これまで誰一人として大佐にした者はいなかった。


 このままでは名家サフィニス家が零落してしまう、そう考えた俺の爺さんである先代サフィニス子爵は、ニエラ侯爵に相談し、頼み込みに行く。

 ニエラ侯爵は新興貴族ではあったが、武闘派で、当主自身も当時大将の地位にいた。

 先代サフィニス子爵は、ニエラ侯爵に、娘を一人、自分の息子に嫁がせてほしいと頼み、認められた。


 この息子が当代サフィニス子爵、つまり親父であり、そして、娘が母さんだ。

 まあ、つまりニエラ侯爵は俺の爺さんでもあるんだな。


 で、だ、親同士で約束したは良かったのだが、子供同士は会ったこともない二人だったわけで。

 それ自体は貴族ではよくあることで、親の命じた相手と結婚するのが貴族としての運命であり、特にサフィニス子爵家は伝統的に家柄と血筋のみで親が選ぶ慣例になっているから仕方がない。


 当時親父は二十四歳の少尉だった。

 少年士官学校を十五歳で卒業して准尉になり、一年後に少尉になってから八年間、特に昇進することもなかった。

 それは、頭脳派であるサフィニス子爵家では珍しい事でもない。


 対する母さんは武闘派の血を強く引いており、二十二歳の少佐だった。

 貴族と結婚する娘は子供を産み、育てるために兵役を免除されるので、家を守ることを求められる。

 とは言え、少尉の夫のために少佐の妻が退役するというのはさすがに格差が大き過ぎ、問題があるのではないか、と評された。


 悩んだ爺さんは、当時まだ若くはあったのだが子爵を息子に譲り、中佐にさせることで何とか面目を保った。

 夫婦仲は意外と悪くなく、武闘派で、ある意味頭の悪い母は、賢い夫を信頼して、大抵はうまく行っている。


 ただ、譲れないものがある時にはその限りではないし、その中に息子の教育というものがあった。

 で、その息子が俺というわけだが。

 俺は母方から武闘派の血を引きつつ、父方の政治的な知性も受けついているので、子供のころから母親に俺の人生設計を何度も何度も聞かされてきて、それは俺自身の人生設計として刻まれることになった。


 父方が優れた政治力を持ちながら、優れた参謀になりえないのは、現実の戦場を知らないからだ。

 知識だけで作戦を立てるため、ただの理想の芸術品のような作戦を立ててしまっている。


 お前はまず、若い頃は戦場で名を上げなさい。

 そして、その武功を持って昇進し参謀になりなさい。

 まずは自らの作戦を自らで実行して成功させ、更に昇進していくのです。


 あなたは私の父上のように大元帥になるのです。

 そう、教えられた。


 そう、ニエラ侯爵はその後、大元帥にまでのし上がっていたのだ。

 だから、俺も爺さんに続いて大元帥になろう、そう思い始めた。

 そして、少年士官学校卒業後に前線を志願して、すぐに功績を上げた。


 卒業二か月で少尉になった俺はいい気になって母さんに言ってしまったのだ。

 「俺は、二十歳までに大佐になって親父を抜くから」ってな。

 まあ、ガキの言う事で当時は佐官以上の昇進の難しさなんて知らなかったから言えた事であり、現実的に無理なのだが、母さんは本気にしてしまった。


 これが全ての始まりだ。

 それを聞いた母さんがどうしたか、と言えば、まあ、うだつの上がらない夫より子供を選んだ。

 ある日、俺は親父に話がある、と部屋に呼ばれた。


 そしてこう告げられたのだ、「お前が少佐に昇進したら、その時には子爵をお前に譲ろう」と。

 子爵となれば中佐になり、俺は少佐になった直後に中佐にまで昇格する。

 俺の計画上は、少佐には十七歳でなる予定だったから、そこで中佐になれば、後三年かけて大佐になるよう頑張ればいい。


 俺の夢を応援してくれる両親にはまあ、感謝してもいい。

 まあ、俺の夢はそもそも彼らの、特に母さんの夢でもあるんだが。


 が、子爵を継ぐということは様々な責務を押し付けられるということになる。

 これは古来からの貴族としての責務なのだが、子爵にはすべき事がいくつかある。

 例えば式典への参加だったり、関係ある記念日にパーティーを開いたり、まあ、面倒が多いのは仕方がない。


 それだけなら受け入れていい。

 が、問題が一つある。


 子爵である者は、婚姻済みであること。

 いや、分かるよ、高貴な人間は子孫を残す必要はあるよな?

 けどさ、この歳で結婚とか、まだ早いって!


 いや、好きな子と結婚出来るならいいけどさ、俺、貴族だからそうじゃないじゃん。

 親父だって子供が武闘派の血を引くためだけに母さんと結婚させられたし、母さんもそうだ。

 俺だって、子孫のためや、他の貴族との親交のために結婚することになる。


 それは仕方がないとは思ってる。

 相手がどんな面の女だろうが、どんな我が儘娘だろうが、結婚してやるさ。

 覚悟は出来てる。


 だけど、それは今じゃない。

 俺は、出来る限り少佐にならないよう、昇進しないようにしている。

 もちろん、軍というのは命令違反を許さないし、失敗を繰り返す者は将来的にも汚点になりうる。


 だから、仕事はきちんとこなす。

 一番必死にやっていることは、部下への手柄の押し付けだ。

 俺がやったことも全て部下のやったことにして、指令は成功させるが、功労者を他人に押しつけることで何とか乗り切っている。


 ま、俺のプランとしては、二十歳くらいで大尉になって、二十五くらいで少佐になって結婚、かな。

 それなら別に遅いわけでもない。

 二十五で中佐なら、かなり早い方だ。


 それが俺の修正人生プラン。

 そのために、外事警察隊は、成功しないように継続してもらいたい。


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