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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第五章 俺だけの作戦失敗
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第3話 俺とお前の運命

「トゥーリィ、あのさ」


 俺は思い立って口を開いた。


「トゥーリィはスティー伯爵家を恋愛体質って言うんだけどさ」

「はい、もちろんです。これは代々言ってるみたいですね」

「でもさ、俺からすれば、お前んちは恋愛体質でも何でもないんだよ」


「何ですか! 先輩でもさすがに私の家の悪口は許しませんよ!」


 頬を膨らませて抗議する。

 あざといのは分かっているんだが、それでも可愛いんだよな、この子。


「そのつもりはないけどさ、俺からすればスティー家はうっかり思い込みの強い家系なんだよ」


 俺が言うと、トゥーリィは頬を膨らませて、ぼん、と体当たりしてきた。

 そのまま俺にもたれかかって来る感じも、あざといのは分かっているんだ。

 けど、その全ては容認できる、可愛いから。


「あのな、お前の先祖の魔法使いはな、確かに勇者に惚れていた、これは事実だ。かなり勇者にもアピールしてたのも事実だ」

「はい、そうです……って、なんでそんなこと知ってるんですか?」


 おそらく、スティー家の中での言い伝えなのだろう、それを知っているので驚いている。


「だがな、勇者の方も魔法使いを憎からず思っていて、姫の求愛や王の結婚許可を丁重に断ったんだよ。魔法使いと一緒になるためにな」

「え……?」


 この人は何を言っているんだ、なんでそんなことを知っているんだ、という表情のトゥーリィ。


「それで、勇者の方は万全の態勢で、魔法使いの求愛を受けようとしていた。そうしたら、魔法使いはもう別の男とくっついてたんだよ。それでその男とその子孫たちがお前たち、スティー家なんだよ」


 おそらく知らなかったのだろう、呆然と俺を見ているトゥーリィ。


「え? じゃあ、勇者はどうなったんですか?」

「勇者はニエラ侯爵の名前を貰って、代々受け継いでるんだよ」

「ニエラ侯爵って言うと……今の大元帥でしたっけ?」


 トゥーリィは思い出すように言う。


「そうだな」


 だから、俺は答えだけを告げる。

 これ以上は、言う必要はないだろう。


「あれ? ちょっと待ってください? ニエラ侯爵って、先輩の母方の──」

「エイリスには、甘いおやつくれる義務がある」

「うわっ!? 何だよ軍そ……アルメラス軍曹! 部屋に入る時は挨拶くらいしろよ」


 何の音もなく入って来たアルメラス軍曹に、俺とトゥーリィはびくん、と驚いた。

 ちなみにシスリス准尉の方からは見えていたのだろう、驚かなかった。


「挨拶より優先すべきものがある場合は、挨拶は後回しにすべきだ」

「いや、何だよその挨拶より優先すべきものって?」

「エイリスは私のアックスを壊したから、甘いおやつで詫びるべきだ」


 この子は真顔で何言ってんだ。


「いや、悪かったけどさ。あれは支給品だし、新しい支給申請していいのが支給されただろ?」

「そういう問題ではない。武器には魂が宿るのだ」


 真顔のままそう言われると、なんか、悪いことした気になるけどさ。


「いやさ、魂が宿るとして、じゃあアルメラス軍曹は、魂を壊されて甘いおやつで許すのか?」

「…………」


 黙っちゃったよこの子。

 頭の回転遅い子だから、問い詰められると頭がついて来れないのかな。


「あー……でも、軍曹は寛大だからそれで許してくれるんだな?」

「それだ、それが言いたかったのだ」


 俺が答えに誘導してやったら、それに乗りかかった。

 まあ、いいや。


「じゃ、しょうがないから甘いおやつに連れて行ってくるよ」

「あ、私も行きます!」

「隊長、仕事中ですが!」


 シスリス准尉が苦言を呈す。


「そういう仕事なのよ。あなたもたまにはどう? 社会に触れるのもいい勉強になるわよ?」

「…………そうですね、今日は行ってみましょうか。皆さんの話も聞きたいですし」


 シスリスが、ため息交じりにそう言ったので、外事警察隊は、全員揃って警邏という名のサボりをすることになった。

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