第14話 救出!
『よし、伍長は再度衛兵確認、准尉は伍長に指示出してくれ』
ここは、何だ?
目の前にあるのは鉄の扉。
中は見ることは出来ない。
特に防音されているようには見えないが、大声を出さないと中と会話出来そうにない。
前の時は鉄格子だったから、やっぱり扱いが違うか。
となると、これでどうかな?
【私はオルジス帝国の者ですが、あなたはシスリス少佐殿ですか?】
帝国軍人なら誰でも……あ、伍長以外なら誰でも知っているノックを使った信号をドアの内部に送ってみた。
【私は少佐のシスリスだ。あなたは何の用でここに来た?】
【少佐殿を救出するためです】
だが、扉をどう開ければいい?
『曹長、衛兵の鍵確認』
『済みです。持っていませんでした』
持っていない?
だとすると、中で苦しんでいようが、報告しに行って別の者が鍵を持っているってことか?
捕虜としての待遇は国によって千差万別だ、まあ仕方がない。
『軍曹、バトルハンマーで破壊できるか?』
「ハンマーは置いてきた。トゥーリィおじょうさまがそれは邪魔になるだけと言ったのだ」
「…………!」
それは、確かに正しい判断だ。
隠密行動であんな大きな音の出るハンマーは通常必要ない。
『地上、入り口の兵がいないことに気づかれたようです。ですが、誰も入り込んで来る気配はないそうです』
ヤバいな、いよいよ時間がない。
扉は軍曹のバトルアックスで壊すのは難しいかも知れない。
試してもいいのだが、下手に折り曲がったら、そう簡単にドアが外れなくなりそうだ。
『准尉、魔法で融かせないか?』
『少佐が死んでしまう程の高熱になってしまいます』
くそっ、こうなると、後は、何をすれば──。
『扉の開錠完了。開けます』
…………え?
曹長のハンドサインに見間違えかと思ったが、ドアを引いている彼女に、見間違いではないことを知る。
確かに彼女は潜入工作の経験があると知ってたけど、開錠まで出来たのか。
『手伝おう!』
俺は曹長の反対側から扉を引く。
『私も』
そう言った非力なトゥーリィは俺に抱き着いただけだった。
トゥーリィは軽いが、扉は重かった。
が、一度動けば、後はするすると動き出し、薄暗い内部が開く。
「お迎えに上がりました、少佐殿」
シスリス少佐は、四十を半ばまで過ぎて精悍な表情を、一秒ほど光の眩しさに閉じたあと、俺を見た。
「すまない……お前は、エメタール?」
少佐は曹長を、自分の娘を見つけて、少し驚く。
「パパ!」
声を出す許可を出していないのに、曹長は少佐に抱き着きながら叫ぶように言った。
「パパ……パパァ……」
泣きながら抱擁している親子。
長身で、上にも下にも気を配り、頼りになる曹長。
だが、今はただ、十八歳の少女でしかなかった。
トゥーリィの表情が、後でからかう気満々なのは、まあ、見逃すとして。
俺たちはこのままこの美しい光景を眺めている場合でもない。
「エメタール、今は作戦が優先だ、違うか?」
少佐のその言葉に、曹長は瞬時に表情を引き締める。
『中尉、次の指示を』
一瞬で軍人の顔に戻った曹長。
『今後、少佐をマルマルと呼称。准尉、上の状況を伍長に確認』
『階上廊下に人なし、ただし、周囲の塀に弓をつがえる音あり』
……そういう作戦に出たか。
つまり敵は、これだけ周りを塀で囲み、巡回兵を配置したのに侵入した俺たちを、実力不明の強敵と見なし、室内への進入探索をせず、確実に一つしかない出口で待ち受ける手段か。
階段を上ると、俺ですら殺気を感じる。
入り口を出た瞬間に方々から矢が飛んでくるのだろう。
貴族の別邸を模したこの建物は、外から見た時には窓はあったが、内部から見るとそんなものはない。
『少佐、怪我や体調は?』
『怪我は腫れがある程度で問題ない。体調は栄養が足りず、足下がおぼつかない。走ることは可能だが、長持ちせずと推定』
俺の問いに少佐が的確に答えてくれた。
走るのは無理、ならば。
『准尉、全員を矢から保護しながら飛べるか?』
『困難と判断。確実ではありません』
飛ぶとなると、防御は球型が求められる。
これだけの人数を浮かせて飛ぶだけでもかなりの事なのに、更に完璧なガードとなると荷が重いと言うことか。
俺や、多分曹長も、矢から身を守ることは出来るけど、空中では不可能だ。
考えろ、何か手があるはずだ……。




