第12話 集まってくる隊員たち
「感謝はいらないよ。だって俺は──」
「至急と言うので、取るものも取り敢えず来た。何用か?」
「うわぁぁっ! ……え? うわぁぁぁっ!?」
いきなり話しかけられて驚き、その恰好を見て再び驚いた。
そこにいたのは、軍曹だった。
伍長が呼んできて、今到着したのだろう。
おそらく伍長はわけが分かっていなかったのだろうが、急がせたことだけは分かる。
眠っていたであろう軍曹は、寝着のままで来た。
いや、それはいいのだが……いや、着替えくらいして欲しかったけど、まあ、いいんだけど……。
この軍曹、見た目小さくて、子供みたいなんだが、寝着が透っけ透けのネグリジェだったりするんだよ。
なんていうか、丸見えなんだよ、小さなパンツ以外が!
分かるかな!?
普段会ってる自分の部下の女の子がさ!
全裸に近い姿でそこに立ってるんだ!
「取るものを取ってからもう一度来てくれ!」
叫びながら目を逸らす。
「至急だから来たのにか?」
「至急だから来たのにだ! って言うか、その恰好でよく止められなかったな?」
この辺りは夜も内軍が警備をしている。
こんな格好で歩いていたら呼び止められるだろう。
「所属と階級を伝え、軍事任務中だと言ったら引きさがった」
「その内軍の所属と階級こそ教えて欲しいわ! 何の任務だと思ったんだよ!?」
絶対おかしいだろ!
「先輩、見ちゃ駄目ですよ!」
「いや、ちょっと! 見てないですよ?」
とっくに目をそらしていた俺の長身に、後ろから抱き着いて目を遮ってくるトゥーリィ。
俺とトゥーリィの身長差は頭一つあるので、ぶら下がっているんだけど、トゥーリィの身体の全てが俺に密着してて、こんな小さな子でもちゃんと胸はあるし、身体全体柔らかいし……!
と思ったら、降りた。
……あれ? どうして?
「ま、こんなものですかね。私の魅力に先輩が気付いて、ちょっと物足りない時間としては」
くそっ! その通りだよ畜生!
……その通りなんだよ!
「さて、じゃあ、アルメラスは私が連れて行って着替えさせてきます。それが終わったら、行きましょうか。それでいいんですよね?」
「ああ、頼んだ。こっちは作戦を考えておく」
トゥーリィは軍曹を連れて、飛んで行ったっぽい、見てないけど。
「えっと……これから何があるのですか?」
残されたのは、俺と、曹長と、まだ全貌を知らない伍長。
「これから、シーラ王国に行って、お父……シスリス少佐を救出するのです」
「え? ええっ!? 聞いてないですよ?」
「軍人の任務は常に突然です。このような任務は常にあると思いなさい」
驚き怯える伍長。
そして、自分を取り戻した曹長。
「で、でも、王国に行くって、死ぬ可能性があるんですよね?」
「職業兵は死ぬ。いつか死ぬために生きている。以上です」
「そんなぁ……」
泣きそうな表情の伍長。
「大丈夫だ、伍長。俺は誰も殺さない」
これは、俺のワガママだ。
俺が俺のためにやることだ。
だから、絶対に誰も殺さない。
「でも、俺の作戦には伍長が必要なんだ、だから頼む、ついて来てくれないか?」
「あ、あの深夜手当とか、出ますか……?」
「出ないけど……俺が個人的に出す!」
逆に手当さえ出せば命かけてくれるのか、伍長は。
ちょっと危なっかしいな、変な男にひっかからないように注意しないとな。
俺とか。
「よし、じゃ曹長、俺の考えた作戦を煮詰めたい。と言っても、演習も出来ないし、全ての可能性を埋められないから、かなり臨機応変になるけど」
「了解しました」
俺と曹長は、トゥーリィと軍曹が返ってくるまで、作戦を話し合った。