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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第四章 不穏からの確信
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第11話 救出しよう

「今から、越境してシスリス少佐を助ける。留置されてる場所はおそらくクシャラ城。シーラ王国に予算はないから他にないはずだ」


 場合によっては昇進延期どころか、昇進街道から外れてしまう可能性もある。

 いや、それどころか処刑対象になってもおかしくはない。


「ええっ? シスリスのために、隊全体に国境を越える危険な目に遭わせるんですか」


 わざとらしく驚いたように言うトゥーリィ。


「お前が言わせたんだろうが! まあ、その前から考えていたことだけどな」

「そう思ってましたよ。先輩は誰にでも優しい人ですからね。先輩のそう言うところも好きですよ?」


 本当、好きを隠さない子だな。

 まあ、こいつのこういうところは俺も──いや、それはいいか。


「あの……」


 今まで黙っていた曹長が口を開く。


「本当に行く気なのですか?」


 しかも、それは不安げ、ではない。

 どちらかというと、申し訳なげ、なのだ。


「何を他人事みたいに言ってるのよ。あなたも行くのよ?」

「はい、それは、分かっておりますけど……これは小官と、小官の家族の事です。越境は死の覚悟が必要です。このような個人的な事に、隊を巻き込むわけには……」


「あのな、曹長──」

「ああ、もううっとおしい! あんたはいい子過ぎるのよ!」


 俺の説得は、トゥーリィの怒鳴りにも似た声に遮られた。


「みんなが自分のために動いてくれるんだから、やるのは拒否じゃないでしょ?」

「いえ、ですけど、命がけになることですし……それに、私は大罪を犯して、それを許されただけでも……」


「そんな大罪を犯しても、やりたい事だったんでしょうが」


 ふん、と腕を組んだトゥーリィ。


「あのね、私は先輩が捕虜になったら、何の迷いもなく、国を裏切るわよ?」

「いや、ちょっとくらい迷えよ」

「迷いません。先輩が死んだら私も死にますし」


 この子は本気で堂々とこんな事が言えるから、ある意味尊敬できるんだよな。


「あ、嘘。やっぱり死なない!」

「嘘かよ!」

「重い女って嫌われますからね。私は先輩の負担にならないように心がけてますし」


 悪戯っぽく笑うトゥーリィ。

 それは可愛いし、お前は結構負担になってるけどな、まあ、許せるけど。


「まあ、それよりも、あなたは自分の心に正しいことをした! 見つかって処刑される覚悟もあったんでしょ? だったらもっと堂々としていなさい!」

「……はい」


 再び項垂れる曹長。

 なんか、説得した感じになってるけど、元々言ってた疑問がうやむやになってるからな?


「あー曹長」

「はっ」

「俺はこの隊の隊長だから、隊全体の事を考えているんだ」


 こういうことを言うのは、恥ずかしいからトゥーリィが代わりに言ってくれるならと任せたんだけどな。


「曹長はうちの隊の強い支柱なんだ。俺だってかなり頼りにしてるし、隊員も曹長がいなければ成り立たない。トゥーリィ……パラエル准尉も、表面上では嫌ってるみたいだけど──」

「だから、私はこの子が先輩を取らないなら、別に嫌いじゃないですよ」


 取るも取られるも、俺はお前のものでもないからな?


「つまりさ、外事警察隊にとって、曹長……エメタール・シスリス副官は必要な存在なんだ」

「!」

「だから、その曹長の家族なら、全力で助ける。命がけでもな。これは俺の、俺たちのためなんだ」


 本心はそんなものではないと思う。

 俺は、とにかくこの仲間を悲しみから救いたいんだ。


 それは、隊のためとか、彼女のためとか、そういう話じゃない。

 俺のためだ。

 俺は俺のために隊を動かして、部下全員を命の危機に晒し、それで怒られないように理由をつけているだけの、小賢しい奴だ。


 だから、これから起こることの全責任は俺が取る。


「隊長殿……」


 潤んだ瞳の曹長。


「こういう時はどうするの? 軍人は、じゃなく、あんた個人としては」


 トゥーリィが何かを促す。

 曹長は軍人でしかなく、一個人としての彼女を、俺も、トゥーリィも知らない。

 だけど、トゥーリィは、軍人ではなく、エメタール・シスリスとして何と返せばいいのかを訊いたのだ。


 曹長はそれに反抗するか従うか、迷ったのか、答えに一秒の間があった。

 そして、曹長は脚を正し、敬礼をする。


「感謝いたします、隊長殿」


 それでもトゥーリィに言われたのが、悔しかったのか。

 それは、どっちつかずの答えだった。


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