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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第四章 不穏からの確信
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第9話 衝撃の協力者

「掃討開始! 油断するな!」


 特殊部隊は倒してからが重要だ。

 場合によっては死亡と同時に爆発する呪いがかかっている場合もある。

 そして、死んだふりをして生きている場合も。


 俺たちは敵を念入りに刺して確実に倒す。

 が、それをやってるのは指示を出した俺一人。


 トゥーリィは、まあ仕方がない、魔法使いだしな。

 だが、経験豊富でこういった経験も十分にあるであろう曹長はいまだ、立ち尽くしたままだ。


「シスリス!」


 ぱぁん!


 トゥーリィが平手で曹長の頬を引っ叩く。

 曹長はうつむいたまま、何も言わない。

 いつもなら、トゥーリィの攻撃が当たる前に反撃しかけて「申し訳ありません、ハエが飛んできたと勘違いしました」などと言う曹長が、されるがままだ。


「何してんのよ? どうして戦わなかったのよ? それでも軍人なの!?」


 もちろん、今の攻撃が、いつものそれではなく、上官の叱咤であることを理解しての事だ。

 トゥーリィの怒鳴り声にも、曹長はうつむいたままだ。

 だが、それにしてもおかしい。


 曹長はいつもならトゥーリィを叱咤する側だ。

 トゥーリィは俺が絡むと途端に甘えるから、それに対して進言するのがいつもの彼女だ。


 曹長らしくない、なんて言葉でも表現できないくらい、おかしい。

 やっぱり、これは、俺の仮説が正しいという証明にしかならない。


「なあ、曹長、俺の仮説を話してもいいか?」

「……仮説、ですか?」


「ああ、正しいなら正直に言って欲しい。間違っていたら……悪い、もちろん謝るけど、それ以上に必ず何かする」

「…………?」


 うつむいていた曹長も顔を上げる。

 上官である俺が、曹長に何を言っても、基本的に許される。


 どんな罵詈雑言でも、直属の上官であれば許される、それが軍組織だ。

 実際、トゥーリィの発言は、上官だからという理由で許されて……いや、でも、最近は反論してるよな。


 まあ、ともかく、上官はたとえ若い女性隊員の下着の色を聞いても、罰せられることはない。

 答えない女性に罰を強いても、罪に問われることはない。

 もちろんそんな奴は、男しかいない隊に回されることになるだろうが。


 だが、それでも曹長の名誉を傷つけることを、それが間違っていれば、誠心誠意謝罪をすべきひどいことを、彼女に言うのだ。


「曹長──君はこの一連の、シーラ王国の奇襲の、協力者じゃないか?」

「…………っ!」


 表情の変化。

 いつもあまり表情が出ない曹長の顔が、一瞬で怯えに変わる。


うち(外事警察隊)しかいないんだよ、入国を民族別に分類して管理しているのってさ。それで、分類と分析ってさ、悪いとは思ってるけど、曹長に任せっきりになってるよな?」

「…………」

「今の状況を、曹長がおかしいと判断しないわけがないんだ。いや、思わなかったとしても、俺の報告しないわけがないと思う」


 狼狽していく曹長の表情。

 少しはそう思ってはいたんだろうけど、やっぱり驚いているトゥーリィ。


 信じられない。

 思っていても信じることなんて出来なかったんだろう。


 だって、あの曹長だぞ?

 俺の副官で、何より信頼できるし、仕事も任せていた、あのシスリス曹長だぞ?


 トゥーリィだって曹長を嫌ってるけど、曹長が真面目で裏切りなんてしないと思っていることだろう。

 というか、そういうところがそりが合わなくすらある。


 だが、入国を民族で分類して書類を受け取っているのは外事警察隊で、それを提案したのは彼女。

 現状、彼女さえ見逃せば、あれだけのシルラ人が増えていても見逃されてしまう。

 そんなこと、絶対にしないと、思っていた。


 本人たちには悪いと思うけど、トゥーリィが愛のためとか、伍長が金のためとか、軍曹が、えーっと、なんかよく分からない理由のためにやったって言うなら、分かるし強く叱る。

 だけど、曹長は俺と同じ立場、つまり強く叱る立場だと思い込んでいた。

 そんな彼女だからこそ、誰もやると思っていないからこそ、「価値」があったんだ。


「なあ、曹長」

「…………」


 曹長は、俺の大切な部下だ。

 出来れば、罰したくはない。


「少佐、シスリス少佐が関係しているのか?」


 俺が訊くと、曹長がびくん、と身体を揺らす。


「そうなの? あなた、お父様のために国を売ったのよね?」


 トゥーリィが曹長に近づく。

 小馬鹿にしたような、いや、それはいつものそれじゃない、侮蔑したような態度で、何も出来ない曹長を見上げる。


「何とか言いなさいよ、売国奴! 力が強い? 精神はこんな薄弱じゃないの! そんな根性でよく英雄の娘なんて務まっているわね! 何よこの発達した身体は! そんなものを見せびらかせて歩いてるから、こっちも気が気じゃないんでしょうが! 少しは反省しなさい!」


 後半は全く関係のない、ただのやっかみでしかなかったが、それでも曹長は反論できず。


「反省してるの? このデカ女! 脳筋女! あんた、死刑になっても仕方がないんだからね? 死刑! 娘が自分のために死刑になったらお父様はどれだけ悲しむでしょうね?」

「おい、トゥーリィ……」


 何の反論もしない曹長に変わり、俺が止めに入る。

 ちなみに擁護のために言うと、曹長はトゥーリィより一回り身長は高いが、女性としては長身なだけで、デカ女でもないし、シェイプアップされて細いので、美しく見える。


 知識はトゥーリィに負けるだろうけど、馬鹿ではないし現場知識は俺よりも豊富だ。

 だが、何度も泣かされた身長の低いトゥーリィから見れば、そう見えるのだろう。


「あー、すっきりした!」


 その曹長が涙目になるのを見て、トゥーリィが満足の笑みを浮かべる。


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