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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第四章 不穏からの確信
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第8話 特殊部隊との乱戦! なのに……!

「これが陽動って事も……ないか」


 これは別所で大攻撃を匂わせておいて、別所から本格侵攻する、前線ではもうやりつくされていて、二重三重に陽動するか、陽動と思わせて実は本命だとか、そういう駆け引きが常套になっている。

 だから、これが陽動の側だってこともあり得るんだが……。


「ないですね、右翼と見せかけて左翼、ならあるでしょうけど、魔法使いを捨て駒に使って陽動なんて、出来ないでしょう。あるとすれば、皇帝城ではなく、軍本部を襲撃、ですけど」


 確率として低い。

 シルラ人居住地方面でテロが起きたとして、内軍だけでなく外軍が出払う可能性は十分にある。

 内軍の本部、外軍の作戦本部の両方とシルラ人居住地近辺の動線に関わらないとなれば、確かに皇帝城の西(九時)だ。


 そして、飛んで来るという事は魔法使いを使うということだ。

 そして、シルラ軍が魔法使いを侵攻に使うほど追い詰められているとはいえ、軍の本部を狙う程の馬鹿でもないだろう。

 全員生還の可能性が高く、帝国にダメージを与えられるターゲットが皇帝なのだ。


 となれば、狙いは皇帝城、方向は西(九時)

 その結論に、トゥーリィはすぐ思い至った。

 俺より二歳年下の、少年士官学校を出たばかりの子が。


 自分が魔法使いだからと言って、こういう前例のない侵攻を、よく推測出来たものだ。

 これで本当にそっちから来たのなら、増長を覚悟しても褒めるしかないな。


「! 魔力確認、来ます! 準備をお願いします!」


 トゥーリィの声が真剣身を帯びる。

 本当に来やがったか!


魔力防御の壁(ソーサリィウォール)!」


 トゥーリィの周囲に魔法陣が発生し、そして淡い光を放つ透明な壁が、高くそびえ立つ。


「きゃっ!」


 上空で悲鳴。


「四体確認。うち一体魔力あり!」


 敵は四人、うち一人魔法使い。

 当然、特殊部隊クラスの精鋭だろう。

 さっきの素人たちとは格が違う。


 だが、俺だって同じだ。

 伊達に子爵の子にして大元帥を目指してるわけじゃない。

 曹長は……まあ、弱くはないが、特殊部隊相手ならどうだろうか?


 少なくとも、曹長に二人を相手にさせないようにしないと──!

 空から落ちて来た四人のうち三人は、あらかじめ想定していたかのように、着地して散開(ブレイク)し、それぞれ俺、曹長、トゥーリィに向かう。

 トゥーリィはとっさに防御魔法(ガード)を発動し、曹長は、身動き一つしていなかった。


「危ないっ!」


 俺は自分に向かってきている敵を躱し、曹長を狙っている奴に体当たりをした。


「ぐっ!」


 鍛え上げられた身体は、吹き飛ぶことはなく、多少バランスを崩すだけだった。

 ああ、くそっ!


 このまま二人を相手にするわけには行かない、俺はそいつの足に絡み転ばせ、その下に潜り込んで首を絞めた。

 これならもう一人は俺を狙いにくいはずだ。


「ぐがっ!」


 確実に首の骨を折る。

 もう一人は俺ではなく、曹長へ、だが、曹長は全く動かない。

 何してんだよ!


「ふんっ!」

「くっ!」


 俺はクソ重い俺の上にいる奴をもう一人にぶつけるように投げつける。

 そいつは無言でそれを、味方の死体を払いのける。

 だが、俺が立ち上がる程度の隙は出来た。


 しかし、敵は短剣を取り出して切りつける。

 その刃は黒く塗られている。


 完全に暗殺用だ。

 毒が塗られているかもしれない。


「シスリス! 何をしているの!」


 背後からトゥーリィの叫び。

 曹長はまだ、突っ立っているだけだ。

 トゥーリィの様子を確認することは出来ない。


 曹長の様子も問うことが出来ない。

 俺は今、一瞬の隙も許されてはいない。

 俺の元に来たこいつが一番強い奴か。


 まずいな、勝てるかどうかギリギリだ。

 曹長がいれば、数で勝てるから簡単なのに。

 曹長も体調とか精神的な心労とか、そんな場合じゃないことくらい分かってるだろ?


 トゥーリィも奇襲はともかく、乱戦では弱い。

 俺も目の前の敵で精一杯だ。

 なんて言ってる間もなく、俺を襲う敵が。


「っ! 」


 速い。

 ──が。


「くぁっ!」


 曹長との演習が功を奏し、俺は一瞬すらない隙をついて、下から顎を攻撃した。

 バランスを崩したそいつが二、三歩下がって体勢を立て直そうとするが、もちろんそれを許す俺じゃない。

 奴の軸足がぶれている間に、再度視界を外れた低位置から──。


「がぁぁっ!」


 二人目を仕留めた。

 俺は状況を確認。

 後は二人か。


 曹長は後回しだ、もう危機はないだろう。

 トゥーリィは、防御(ガード)を張ったまま、火の玉を投げつけているが、ほぼ避けられているようだ。

 やはり通用しないか。


 そして、もう一人、魔法使いの女の子は何か呪文を唱えている。

 おそらく防御(ガード)を解除する魔法だろう。

 俺が特殊部隊の方を狙うか?


 いや、リスクを考えると逆だ。


「トゥーリィ、防御(ガード)があるなら呪文を唱えろ!」


 俺は回り込んで特殊部隊を回避して、魔法使いを──。


「ぎゃぁぁぁぁっ!」


 俺はさっきの奴から奪った短剣を、魔法使いの首に刺し、そして、そのままもう一人に──。

 バン、と爆発のような音。

 いや、これは雷か。


 トゥーリィの放った雷を直撃した最後の一人が倒れる。

 これで全員倒せたか。


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