第7話 魔法使い、という存在
トゥーリィと俺と曹長は高速で城を越え、西側の少し離れた公園にたどり着く。
「で、そろそろトゥーリィの案を言ってくれないか?」
「そうですね、飛んで来るとしたら、あっちの空から、ですかね?」
トゥーリィは西の空を指さして言う。
「どうしてこっちなんだ? シーラ王国は北だろ?」
「そうなんですけどねー、私はこっちだと思ってます」
ほぼ、確信を持って言うトゥーリィ。
この自信は何なんだろう?
「先輩は、どうやってテロに紛れてシーラが侵攻してくると思いますか?」
「え? そりゃあ……ごめん、さっきからそれが疑問だったんだよ」
さっきから何度も考えているが、明確な答えどころか、想定すら難しい。
これら全て、もっと大きな作戦の陽動、という可能性すら考えてしまうくらいだ。
「答えは簡単です、魔法使いが兵と一緒に飛んで来るんです、さっきの私みたいに」
「あー……あー、そうか」
それは考えてなかった。
確かにこれはトゥーリィくらいしか思いつかない。
なるほど、それなら国境を飛び越えて来れるだろう。
だが、疑問がある。
「確かにそうかも知れないんだけど、じゃあなんでそんな事誰もやらないんだ?」
空からの攻撃に対して、地を走る兵というのはなかなか無力だ。
弓兵でも自由に高速で飛び回る魔法使い一人を打ち落とすことはなかなか難しいだろう。
だが、これまでの戦争で、魔法使いが宙から街に侵攻して攻撃、などという戦法は聞いたことがない。
「それは、魔法使いが各国とも貴重な存在だからなんですよ」
ああ、そうか。
帝国にも魔法使いの家系はスティー家を筆頭に数家程度。
これでも過去の歴史のおかげでかなり多い方なのだ。
「うちではお兄様も志願して前線にも行ってますが、それは帝国がまだ魔法使いが多い方だからで、他の国では戦死なんてさせたら大打撃を受けるくらいですから。一名、多くて二名いる程度で、家系として残っているのは帝国だけです。だから、国境を越えさせる、なんて無茶はそうそう出来ません。絶対安全ってわけじゃないですから」
まあ、そりゃそうだろうな。
魔法使いは、希少な存在だ。
いや、昔はそうでもなかったらしいけどな。
魔王がまだこの世にいたころ、冒険者の一定数は魔法使い、という程に溢れていた。
剣で戦いたいけど、自分には力がないから、と魔法を志す者もいた。
だが、魔王が退治された後、魔法使いは激減する。
その背景にいたのが、教会という存在だ。
彼らにとって魔法とは神の奇跡であり、それらを自分たち以外の信仰心すらないような者たちが使っているのが面白くはなかった。
教会は、魔法使いは魔族の力を使っている、魔族と繋がっている者たちだと根も葉もないことを言いだした。
そして、民衆を扇動し、魔法使い狩りを行った。
だが、オルジス王国はそれに抵抗した。
何しろ、勇者と共に戦ったスティー家は、民衆ではなく貴族だった。
それに彼らの仲間であった僧侶が、それには根拠がないと言って説いて回ったからだ。
この国において、教会よりも勇者とその仲間の方が発言力があった。
僧侶は教会からの圧力をものともせず説いて回り、やがて破門になった。
破門になった彼はその後、オルジス正教を開き、現在これがオルジス帝国の国教となっている。
そして、彼に救われた国内の魔法使いは特にその敬虔な信者となっている。
それが、トゥーリィみたいな子でもだ。
「シーラ王国に魔法使いがいる事は確認済みです。お兄様が前線の後方から魔力を感じたそうです」
「魔力って感じられるんだ?」
「そうですね、誰でも感じられるとは思いますけど、普通の人は、魔法にそんなに関わってないから気づかないみたいです」
知らないもの、興味ないものは気付かない、ということか。




