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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第四章 不穏からの確信
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第2話 調査の結果

「さて、残りの仕事、片付けようかな」


 俺は隊長室に戻ると、曹長に聞かせるようにそう言った。

 曹長は軽く頭を下げただけで、仕事に戻っている。

 この部屋に緊張感が漂ってると感じるのは、俺だけなんだろうか?


「さっきの件は今、トゥーリィに調査に行かせてるよ」

「そうですか」


 いつもなら「あの方ならそのまま遊びに行くのではないですか?」などと言いそうなのに、今日は言わない。


「伍長もつけたから大丈夫だと思う」

「そうですか」


 それでも何も言わない曹長。

 いつもなら──ってのは、もういいか。


「……今日さ、夜に時間はあるかな?」

「特に予定はありませんが」


「もしかすると、仕事が入るかも知れないから、空けておいて欲しい。トゥーリィの報告次第になるけど」

「了解しました」


 何もなければ、食事にでも連れて行って、励まそうかとも思うけど、そんなことをしたらトゥーリィが黙っていないし、部下の貴重な自由時間を奪うことにもなる。

 連れて行くなら、トゥーリィも連れていくことになるだろうし、そうなると……ああ、隊全員で行くのもいいかも知れないな。


 そんなことで曹長が元気づくとはなかなか思えないけど。




「せんぱーい、いますか?」


 しばらく無言で仕事をしていると、トゥーリィが部屋に入ってくる。


「思ったより時間かかったな? って、出て行った時と服が違うじゃないか」

「さすが先輩、私をよく見てますね」

「いや、分かるさ普通」


「それで、報告しますねー」

「あ、そっちに行って、伍長も交えてにしよう」


「でも、スプラはシルラ語話せませんよ?」

「聞いたニュアンスも確認したいからな」

「そんなことくらい、私でも出来てますけど……」


 半ばトゥーリィを押し切るように、待機室へ入る。


「で? 何か分かったか?」


 こちらも服装が変わっている伍長と三人になって話を切り出した。

 ちなみに軍曹は、甘そうなおやつを食べていた。

 多分、トゥーリィの土産だろうな。


「さて、話をしましょうか? スプラ」

「は、はいっ!」


 緊張でがちがちになっている伍長。

 この子、もしかして、俺がそばにいれば筋肉痛になってある程度筋肉つくんじゃないか?


「それで、この子が言葉を聴き私がそれを訳していたのですけど、どうも今日の夜七時に集合して、テロを起こす計画があるようです」

「は……?」


 トゥーリィの口調が、あまりにも普通だったので、俺は何か冗談でも言われたのかと、何度も反芻したが、そこに冗談の要素はなかった。


「え? 本当か?」

「本当です。本当に運が良かったとしか言えませんね」


 確かに、今日の今日でたまたま警邏に行って不審に思って調べたら、今日テロがあるとか。


「それは、本当なのか? どこを襲撃する計画か分かるか?」

「それは、大火事を起こし、あと市民を何人か殺戮するだけのようです」


「…………それって何か意味があるのか?」

「そこまでは分かりませんけど……」


 テロの計画、というのは当然事例として俺も研究した。

 だが、想定したのは、この国の主要施設の破壊、主要人物の殺害など、帝国に直接的なダメージを与えることが目的のものばかりだ。

 だからこそ、俺たち外事警察隊が結成され、未然に防ごうとしているのだ。


 それが、火事と平民の殺害?

 いや、確かに家が焼かれたり焼死する人も出るだろうし、そういう人には申し訳ないけどさ。

 前線で人が死ぬことを考えたら、大したダメージは帝国という国家にない。


 それに、何の意味がある?

 治安は確かに悪くなるし、全くダメージがないわけじゃないけどさ。

 わざわざ、海外から大量にこの国に入って来て、その結果が治安の悪化って、さすがに割りが合わないだろう。

 偽漏洩(ブラフ)か?


「……とにかく、今夜の七時にテロがあるってことだな?」

「違います、実行は八時です」

「さっき七時って言ってただろ?」


「それは集合時間ですよ。実行は八時からです」

「紛らわしい言い方するなよ!」


「でも、この場合、テロの時間より集合時間の方が重要なんじゃないですか?」

「…………っ!」


 正論を、トゥーリィから聞かされると妙に納得は出来ない。


「……分かった、じゃあ、今夜六時半に集合だ。えーっと、どこにしよう。指令! 十八時半(ヒトハチサンマル)、エリア十三、二、十字路(ジュウ)軍本部側(エッジ)

「ヒトハチサンマル、エリア十三、二、ジュウ、エッジ了解」

「ひとは……りょ、了解」


 伍長が少し不安だが、まあ、何とかなるだろう。

 今夜は長くなりそうだな。



「曹長、時間外で申し訳ないけど仕事が入った。指令を聞いてくれるか?」

「もちろんです」

「悪いね。指令! 二十時(ニマルマルマル)、エリア十三、二、十字路(ジュウ)軍本部側(エッジ)。詳細は臨機にて!」

「ニマルマルマル、エリア十三、二、ジュウ、エッジ了解」


 曹長の敬礼。

 そう、俺は、彼女に俺たちの集合から一時間半後の時刻を命じた。


「定刻不在の際、警戒せよ」

「……はっ!」


 曹長が一瞬躊躇してからそう応答する。

 「俺が時間通りに現れなかったら、何かあったと思って欲しい」と、続けた。

 聡明な曹長の事だ、これで俺の指示の意図が分かっただろう。

 そう、俺たちは、戦争に行くのだ。


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