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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第三章 最年少の士官VS最年長の下士官
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第4話 仲良くトイレへ

「曹長、気持ちは分かるがやめろ。どうせ彼女は指示されただけだろう」

「そうです……わ、私は、副隊長さんに音を聴けと言われて……」


 既に半泣きになってる伍長。


「なあ、それってどこから聴いてた?」

「は、はい? えっと、この部屋からですけど……ずっと聴き耳を立てていて、おトイレに行く、曹長さんの方を聞き続けろって言われたので……」

「そうか……」


 ここは軍事施設、とはいっても周囲も軍事施設なので、盗聴を警戒するほど防音になっているわけでもない。

 とは言え、ここから隊長室の談話が隣の下士官待機所に漏れるほど安い作りではないし、ましてや女の子のトイレの中の音が部屋まで聴こえてくる、なんてことはありえない。

 例えちょっと耳が良くてもだ。


「あ、あの……いつも聞いているわけじゃありません。ただ、聴こうと思えば聴けてしまうのです……!」


 特異体質、もしくはそのレベルの聴覚か。


「なるほど、では全ての元凶は彼女(副隊長殿)、という事ですね?」

「そうなるわね。下痢女?」


 あ、ヤバい。

 曹長がにっこり笑った。

 そんな表情、毎日一緒にいる俺でも見たことがない。


「副隊長殿、ちょっと本日は演習に参加していただけないでしょうか?」

「断るわ。だって私、士官だし? たまに参加してもいいけれど、毎日参加するなんてあり得ないわ」


 トゥーリィはあっさり拒否する。

 さすがにこのまま演習になれば自分がどんな目に遭うのか分かっているのだろう。


「それに、シスリスも体調が悪いんでしょ? 無理しない方がいいわ。もし無理なんかして力んでしまったら、大変なことになって、死ぬまで語り継がれるわ、ええ、私が語り継いであげるわ」


 こっちも煽る煽る。

 まあ、前線に行けば、その場で漏らすなんてよくあることだし、漏らしたまま敵と戦い続けることも割とあるんだけどな。


「ほう、確かに小官は体調が優れませんが、よもや、そんな小官にも敵わないなどと仰られるとは思いませんでした。どうやら小官は副隊長殿を過大評価していたようですね」

「はあ? 何言ってんの? 私がシスリスに負けるわけないじゃないの。私は士官だから戦わないと言ってるのよ」


 乗った!

 乗ったよ、あんな安い挑発に!


「士官だから、弱くてもいいと、なるほど分かりました。これからは弱い副隊長殿を保護するよう作戦を考えましょう」

「弱くないわよ! シスリスの方が弱いに決まってるわ!」


「それなら、今日もお手合わせをお願いします」

「いいわ、やってあげる」


 意気揚々と部屋を出ていくトゥーリィ。

 可哀想なことが起きるのが分かってるから見たくないけど、いざという時、曹長を止めなきゃならないし、俺も見に行くか。

 いや、その前に。


「伍長」

「は、はいっ!」


 隊長である俺に声をかけられてびくびくしている伍長。

 まあ、殺意ある目で曹長に睨まれた後だからしょうがないか。


「貴官のその特徴は、大いに役立つと思うから、今後貴官にしか出来ないことをやってもらうつもりでいるよ?」

「え……は、はいっ!」


 「耳と鼻がいい」では分からなかったが、そこまでいいのであれば、盗聴などの役に立つこともある。


「後は、もう少し状況に驚かないようにしていく必要がある事かな。それと」

「はい……」

「今後、副隊長の命令があっても、仲間のことを聴くのは禁止だ。副隊長に言われても、隊長命令です、と言いなさい」


 これは、本来、トゥーリィに言うべき事だし、もちろん本人には厳しく言うけど、念のためこの子にも言っておいた方がいい。


「わ、分かりましたっ!」


 ま、トゥーリィもこの子の特徴を見つけたんだし、軍曹の役立て方も考えたんだし、結構いい活躍はしてる。

 ただまあ、曹長とあまりにも険悪なのが困りものだけど。


 ちなみにその後の演習で、トゥーリィは複数の火の玉を五月雨式に出したが、全て避けられて腹パンされ、声が出ない状況で、平手打ち。

 その後執拗に腹パンされ続け、「降伏してください、降伏してください、降伏してください」と、何度も声の出せないことを分かっているだろうに言い続けた。


 「ごめんなさい! 許してください!」と、絶対にトゥーリィが言いそうにない言葉を振り絞って泣き叫んだので、曹長は殴るのをやめた。

 身動きすら取れないはずのトゥーリィは、ふらふらになりながら這うように慌てて出て行った。


「なるほど、淑女とは大したものですね。そこは尊敬出来ます。私も見習う必要がありますね」


 正直、惨めで無様としか思えないトゥーリィの様子を見て、そんなことを言う曹長。

 ……ああ、この子、下腹部攻めて、トゥーリィの便意尿意を促したのか。

 トゥーリィがあんなことを叫んだのは、人前で漏らすよりマシだと考えての事で、目先のプライドより淑女のプライドを優先したことを曹長は尊敬できる、と言ったのだ。


 曹長も最近割とえげつなくなってきたなあ、やり返しとは言え。

 まあ、多分こんなことをされても懲りない子だから、どんどんエスカレートして行くんだろうけど。


「それでは私も所用がありますので失礼します」


 敬礼をして、悠然と、おそらくトイレに行く曹長を、俺はただ、見守っていた。


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