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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第三章 最年少の士官VS最年長の下士官
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第2話 トゥーリィの作戦と曹長の見解

「待たせたわね」

「……待ちました」


 憮然とした曹長。


「ま、そんな態度も許してあげるわ。アルメラス、来なさい?」

「何か、トゥーリィおじょうさま」


 軍曹が前に出……って。


「何でお前だけお嬢様付きで呼ばれてるんだ?」

「あの子、甘いおやつが好きだから、甘いおやつを与えながら教え込んだわ」

「…………」


 好物を与えて教え込むって。

 動物じゃねえか。

 俺のいない詰所では何が行われているんだろう?


「こっちに来なさい?」

「うむ」


 ゆうゆうと、小さな軍曹が大物感を出して、トゥーリィの元へ歩いて行く。


「さて、本当はシスリスを相手にしたいけど、大けがをされるとこの後私との演習に差し支えるわ」

「今日もやるつもりですか?」

「当然よ。ま、あなたがもう許してくださいって言うならやめてあげるけど?」


 ふふん、と笑うトゥーリィ。

 いや、昨日結構無様に負けたのに何でそう、自信たっぷりなんだよお前?


「ま、今日はそこの木偶(でく)を使うわ? スプラ、立てなさい?」

「は、はいっ!」


 伍長が慌てて木偶を持ってくるけど、重いので結構苦労してる。

 ていうか、トゥーリィはすっかり詰所側を支配してるみたいだよな。


「じゃ、行くわ? アルメラス、三秒後!」

「うむ」


 軍曹が剣を構える。

 その軍曹をトゥーリィが魔法で浮かせる。

 そして、高速で木偶の前まで飛ばせ──。


 ズバン、と巨大な剣が振り下ろされる。

 正確に、木偶の脳天へ。


「どう? この子は反射神経がないだけで、秒数を指定すれば正確に振り下ろすわ。だから、こっちの側で正確にその時間で対象物の前に連れて行けばいいだけ。足腰もしっかりしてるし動じることもない。最適の兵器よ」


 うん、いや、うん……。

 ドヤ顔で言われるけどさ。


「まあ、確かに俺たちでは想像もつかない使い方だよな」


 少なくとも弓矢火矢が飛び交う前線でこんな使い方したら、ただの味方殺しでしかない。


「ですがこれは──」

「あなたの意見なんて聞いてないわ、シスリス」


 曹長の意見を止めるトゥーリィ。


「ま、これからの演習に勝ったら、意見くらい聞いてあげてもいいわ? 来なさい?」

「……分かりました」


 ため息交じりに曹長が歩いて行く。


「じゃ、行くわよ?」


 言うが早いか、トゥーリィは、火の玉(ファイアボール)を二つ出して、曹長へ飛ばす。

 曹長はそれを躱して、トゥーリィとの間合いを詰める。


「え? え……?」


 慌てて何も出来ないトゥーリィの頬の辺りを、短刀の柄で叩く。

 そして、もう一方の手はトゥーリィの足を押さえ、そのまま転倒させる。


「て……っ!」


 そのままマウントポジションを取った曹長は短刀を突き付け、動きを止める。


「負けを認めてください」

「……っ!」


 悔しそうな表情で曹長を睨むトゥーリィ。


「……分かったわ、私のふぐっ!」


 え?

 今まさに負けを認めようとしていたトゥーリィの顔面を曹長が平手で叩いた。


「ちょ……何で叩くのよ! 負けを認めたじゃないの!」

「おや、そうでしたか、声が小さくて気づきませんでした」


 しれっとそんなことを言いながら、立ち上がる曹長。


「僭越ながら、副隊長殿は、戦いの組み立てをご存じないようです。戦いは常に外れた場合、失敗した場合を想定して一連の流れを組む必要があります。副隊長殿は常にご自分の技が成功することしか想定しておりません」

「…………」


 正論であり、それはトゥーリィも分かっているので何も言い返せない。


「先ほどの軍曹を使った技も同様です、あれは確かに素晴らしい発案かと存じます、ですが、あれだけでは成り立ちません。あれを組み込んだ作戦を考案していく必要があります」

「…………そうね」


 トゥーリィはゆっくり立ち上がる。


「ま、私は士官だからそういう作戦を立てる事が任務だからね。ま、たまにはこういうお遊びをしてもいいけど、作戦を立てることに集中したいわね?」


 凄まじい、見事なまでの負け惜しみを発するトゥーリィ。


「これから我々は演習を続けます。副隊長殿はいかがしますか?」

「そうね、私は士官だから、作戦を立てて来るわ」

「承知しました。副隊長殿のお着替えが終わる一時間後(サンロクマルマル)には、私も参ります」


 悔しそうに、曹長を睨むと、トゥーリィは演習場を出て行った。


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