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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第二章 彼女たちに何が出来るか
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第6話 怪力でバランスの良い軍曹

「トゥーリィ、いや、パラエル准尉、お前を含めて隊員は全て俺の部下だよ」

「先輩の部下ってことは、私の部下でもあるんですよね?」

「准尉に隊の代理権はないよ。少尉になったら、隊の代理権をもらえるから、お前の部下でもある。昇進に努めるといいよ」


 准尉ってのは尉官ではあるけど、正確には準尉官だから、尉官と同じ権限は与えられない。

 准尉はあくまで、俺がいなくて急を要する時や、俺が戦闘不能になった時にのみ指揮権を得られる。


「先輩、ですから──」

「隊を私物化するな。そもそも彼女たちは俺の物でもない。これはお前の家(伯爵家)の侍従たちもそうだ」

「……はい。それは、分かってます……」


 さっきまでの勢いを失い、項垂れる。

 この子も冷静になればそんなことが分からない子じゃない。

 ただ、浮かれやすい子ってだけだ。


「お前が何を思っていようが、遊んでる時に何を言おうが俺はいちいち問わない。だが、仕事中くらいはちゃんとしてろ」

「…………」


 少し、抗議するように俺を見上げる。

 恋愛体質のこの子には、それは相容れない事なのかも知れない。


「……分かりました。人前ではちゃんとします」


 トゥーリィは少し反省したようにうつむく。


「曹長、彼女はもう限界だ、もう少しゆっくり育てることにしよう」

「了解しました。下がりなさい、伍長。それでは次、アルメラス軍曹」

「うむ。よかろう」


 相変わらず、大物のように前に出てきた軍曹。

 その手には彼女の背よりも大きなジャイアントバトルハンマーを持っていた。

 練習用の木槌だけど、でも、あれ直撃したら大怪我すると思うんだが。


「私と戦う以上、死を覚悟せよ」


 無表情の小さい子供のような女の子に、漂う凄み。


「……いいでしょう。私も本気で行きます」


 曹長の構えが、先ほどより、深い。

 最初から本気の対戦となりそうだ。


「では、行く」

「来なさいっ!」


 ひょい、と軽々と木槌を振り上げる軍曹。

 そして、走り込む曹長。


 勝負は一瞬だった。

 曹長の木製短剣の柄が、軍曹の腹にめり込む。


 だが、小柄な軍曹は倒れることもなく、もちろん泣くこともなかった。

 同じ攻撃をされて号泣した伍長と違い、さすがに兵士としての貫禄ありというところか。


「まだまだっ!」


 軍曹の背後から、再度の攻撃を加えようとする曹長、そして──。

 軍曹がぶん、と振った木槌。

 それは、十秒前に曹長が、最初の攻撃の際、通過した場所。


 攻撃の意図が全く不明であるため、曹長は動きを止める。

 だが、思い直して、再び攻撃。

 今度は足払いだ。


「っ!?」


 伍長が弾き飛ばされて派手に転んだ曹長の足払い。

 軍曹はまるで足に根が付いているかのように、それを逆に弾き、ほんの少しだけ崩れたバランスを、立て直し──。

 いや、こてん、と転んだ。


「…………?」

「やるな?」


 やるな、じゃねえよ。


「ここからの反撃は、本気で行く」

「……来なさい」


 曹長は、思うところがあったのか、今度は攻撃に出ない。

 大きな木槌を軽々と持ちあげる軍曹は、それをぶん、と振り抜く。


 三秒後くらいに。

 ああ、分かった。


 アルメラス軍曹は小柄な体型に似合わぬ巨大な武器を軽々と持てる怪力の持ち主。

 そして、強靭な足元に防御性の高い身体。

 兵士として何の申し分もない。


 のだが……。

 この子、壊滅的に、反射神経がない。


 ああ、そうか、この子の経歴は、建設とか破壊工作が多かったな。

 安全な場所でゆっくり出来るときにしかこの子は通用しないんだ。


「どうしてこんな兵ばかり……」


 曹長がため息を吐くが、俺も同じ思いだ。

 この隊は前線に戦うわけじゃないけど、有事の際には戦うことが当然の義務だ。

 が、この二人は少なくとも前線で戦うことが出来そうにない。


「もういい、下がりなさい」


 これは基礎訓練からすべきだと悟ったのか、曹長が軍曹を下げる。

 ちなみにこれ自体演習の基礎訓練なのだが。


 演習って一対一で戦うんじゃないからな?

 色々な事態を想定して作戦を実行練習するのが演習だからな?


「私はまだやれる」

「いいから下がりなさい」


 軍曹は木槌を持って、戻る。


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