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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第二章 彼女たちに何が出来るか
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第5話 演習、にもならない訓練

「さて、それでは軍事演習を行います。本隊は少数精鋭であるため、全員が強いことが求められています。ですから、この演習が最重要となります」


 軍服の美少女が三人。

 うち二人が直立で話を聞いていて、もう一人が説明をしている。

 演習という事で、全員軍服に着替えている。


 「動きやすい服装」となると、全員これになったのだ。

 前に俺が指示した、軍人口調をやめて説明をしている曹長は、見て分かるほど活き活きしている。

 久しぶりの軍服、そして身体を動かすという事で、日頃たまった鬱憤を解消したいのかも知れない。


 トゥーリィは事あるごとに曹長に突っかかって行くし、曹長は上官だから粛々と話を聞いてる。

 本当に出来た子だと思うよ、これまでもあんなことあったのかも知れないけど。

 とは言え、どれだけ彼女が理想の軍人だったとしても、あれを毎日聞いていたら、ストレスもたまっていることだろう。


 だからこその、演習だ。

 ちなみに下士官の演習だから俺は参加しない。

 だけど、演習場に私服でうろうろして、全く参加する気ありません感丸出しだと士気に関わるので、一応軍服に着替えている。


 トゥーリィは、着替えてきます、と言って出て行ったきり帰って来ない。

 まあ、別にあの子は士官だから参加義務はないんだろうけど、俺に「動きやすい服」ってのを見せたいんだろう。

 曹長も到着を待たずに始めようとしてるし。


 でも、せっかく彼女がいるんだし、魔法使いに備えての演習は貴重なのでやれるならやっておきたい。

 俺もまあ、最悪見本を見せる必要がある場合は参加するつもりでもいる。

 トゥーリィも演習は士官学校でやってるだろうし、俺の代わりに見本を見せられるなら──。


 ……そう言えば、魔法使いって士官学校の戦闘演習、武器演習とか、免除も多かったんだよな。

 あの子、ちゃんと戦えるよな……?


「ではまず、スプラ伍長!」

「は、はいっ!」


 文字通り飛び上がって驚く伍長。


「あなたがどのくらい出来るか知りたい。好きな武器を持って来なさい!」

「え? は、はい……」


 おそらく、得意な武器などない伍長が、練習用の武器が格納してある隅に行き、なんか、木製のロングソードを持ってこようとして、重くてその場にごとん、と落とし、それが足に当たってうずくまった。


「早くしなさい!」

「は、はいっ!」


 慌てた伍長は、今度はもう少し小さな剣を持ってきた。

 それは左手に盾を持つことを前提とした片手剣だけれど、彼女はそれを両手で持ち、構えた。


「では、あなたから来なさい」

「は、はい……えぇぇぇぇいっ!」


 両手で振り上げた片手剣はふらふらとした線を描き、曹長の頭上へ──。


「まるでなってませんね」


 曹長の頭上の剣は、彼女が両手でそれぞれ持っている剣の一方で払い落され、伍長は剣の制御を失い、剣は弾き飛ばされた。


「脇を締める、相手から目を逸らさない、力まない、踏み込む力を利用する」

「は……」

「力がないなら、ないなりの攻撃方法はいくらでもあります。剣を拾いに行きなさい」


 伍長が慌てて剣を取りに行って構え直す。


「えぇぇぇぇいんぐぁっ!?」


 走り込んだ伍長に、今度は足払いをかける曹長。


「まったく変わりませんね。進歩を見せなさい。考えてかかって来なさい」


 半泣きでもう一度剣を構える伍長。


「え……えぇぇぐぇっ!」


 再度の攻撃で、今度は後攻のはずの曹長が先んじて伍長の腹に、剣の柄をめり込ませた。


「見ていますか、私は三度攻撃され、三度とも別の反撃をしました。あなたも同じことばかりせず──」

「ふぇ……ふぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 伍長が、泣き出した。

 女の子が泣くのを見るのは久しぶ……ああ、この前トゥーリィ見たか。

 あの子はあざと泣きだったけど、この子がそんな器用なことが出来るとは思えない。


「その程度で泣かない! あなたは望んで兵士になったのでしょう!」

「ふぇ……ふぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「立ちなさい! 立って構えなさい!」


 容赦のない曹長。

 もはや虐めにしか見えない。


 いや、だって、これ、兵が兵を訓練してる姿ですよ?

 伍長ってさ、本来なら兵卒を四、五人まとめて班長として前線で戦うんだよ?

 職業軍人として、兵卒の手本として戦うんだよ?


「さっさと立て!」

「ヴァァァァァァァァッ!」


 伍長は、ガチ泣きを始めた。

 それはもう、十五歳の女の子の泣き方ではなく、幼児の号泣だった。


「泣いても終わらない! さっさと立て!」


 曹長の怒号。

 まあ、そりゃ曹長が正しいんだけどさ……。

 これはちょっと……。


「お待たせしました~。あれ? あいつ、私の部下を虐めてるんですか?」


 遅れて来たトゥーリィが、開口一番、曹長にも聞こえる声で言う。


「おま……な……」


 俺は遅れて来た小言の一つも言おうと思ったが、その格好の突飛さに言葉が出て来なくなった。

 トゥーリィの姿は、服装だけで言うなら、魔法使いの服装だ。

 マントにつば広の三角帽。


 が、その三角帽、そしてマントの表がワインレッドという派手さ。

 そして、中の服が薄ピンクにポケットやボタンなど、ポイントのみ、濃い目のピンクという服装。


 しかもスカートは膝上かなり際どいミニだ。

 これを見て、由緒正しき魔法使い名家の子女だって、誰が思う?

 いや、感想訊かれたら可愛いとしか言えないけどさ!


「虐めではありません、訓練です」


 こんな格好を見ても一切怯まずに曹長が答えるけど、その前にこの子たち、俺の部下だからな?


「とにかくやめなさい? その子にいきなり戦闘演習は無理よ」

「ですが、鍛えなければいつまでも──」

「まだ早いって言ってんのよ! それ以上やったらトラウマになるわよ? 私の部下を壊さないで!」


 あー。

 俺もちょっとトゥーリィと同じことを思ってたから、やんわりと止めようかと思っていたけど、それを怒鳴って言っちゃったなあ。


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