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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第二章 彼女たちに何が出来るか
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第3話 国境警備の協力

「ところで、先ほどのものは何でしょうか?」

「はあ? 魔法に決まってんでしょ?」


 まだ少し気が悪かったトゥーリィが、不愉快の原因である曹長に話しかけられて冷たく返す。


「失礼しました。副隊長殿は魔法がお使いになれるのですね」

「あのね、スティー伯爵家は魔王を倒した魔法使いの一族なのよ? 今では希少になった魔法を使う一族なのよ?」


 トゥーリィは小馬鹿にしたように言う。

 おそらく曹長だけでなく、軍曹や伍長に聴かせるためだろう、少し大声だ。

 そう、スティー伯爵家、というのはただの恋愛体質一族ではなく、魔王を倒した勇者に随伴した女魔法使いの子孫なのだ。


「凄いです! 私、あの魔王を倒した方と同じ隊にいられるなんて!」

「いえ、私が倒したわけじゃないのよ?」


 さすがのトゥーリィも苦笑する。

 伝説ってのは、まあ、俺たちが生まれる遥かに前、ってなってるけど、もしかして伍長は伝説は知ってるけど、昔の事とは聞いてないのかな?


「それに、あんなにおいしい物を食べさせてくれるなんて夢のようです」

「ちょ……! それはしー!」


 慌てて伍長の口を塞ぐトゥーリィ。


「……どこかに寄ったのですね?」

「い、いいでしょ別に?」


 はあ、とため息を吐く曹長。

 さっき言った警邏でサボることが証明されてしまったようだ。


「先輩、それでこれからどこに行くんですか?」

「んー、警邏の場所をもっと調査しようかと思ったけど……」


 この人数のオルジリア人が、海外から来たシルラ人居住地に行って話をするのはまずいな。


「ちょうどみんないるし、入国調査に行こうか。馬車がいるかな?」

「必要ないです! それっ!」

「うわっ!?」


 俺はトゥーリィの一言で浮いた。


「それで、どこに行きますか?」

「いや、入国審査してる、えーっと、カサラ王国との国境がいいけど……曹長も連れて行くよ?」


 四人が浮き上がっているのに、一人浮いていないシスリス曹長がしたから俺たちを見上げていた。


「えー? あいつも連れて行くんですかぁ?」


 嫌な顔をするトゥーリィ。


「いや、むしろ彼女を連れて行かないと詳細な業務が決められないんだよ」

「分かりました、先輩がそう言うのなら」


 トゥーリィが乱暴に曹長を浮き上がらせる。


「じゃ、行きますよ?」

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」


 さっきも飛んでいたはずなのに、伍長が泣き叫ぶ。

 まあ、確かに自分で浮いているわけではないので、いつ落ちるか分からない恐怖はあるし、速いから風が痛いくらいだが、まあ、軍事演習でこの程度普通に経験してるから問題ない。


 ああ、伍長はそういうのしてないんだっけ。

 俺たちは高速で飛び続け、すぐに国境管理事務所に到着する。

 私服なので当然止められたが、身分を提示して通してもらった。


「お待たせした、カサラ王国国境入出国管理隊隊長、ゼラス大尉だ」

「新設の外事警察隊隊長のブレウ中尉です、こちらが副隊長のパラエル准尉に副官のシスリス曹長」


「お初にお目にかかります。大尉殿」

「お時間をいただき、ありがとうございました、大尉殿」


 ちょっと不安もあったが、トゥーリィは軍人としてちゃんとした挨拶と敬礼をしてくれた。

 俺の面子を潰さないように配慮してくれているのだろう。

 ちなみに配慮出来そうにない二人は、外に待たせている。


「早速だが、本日はどのような用件で?」

「はい、私は外事警察隊という新設の隊を任されたのですが、どのような目的の隊かと申しますと──」


 俺は大尉に隊の概要を説明する。


「それで、お手数ですが我々に入国者の情報を回していただけないでしょうか?」

「入国者の情報が何に必要なのか?」

「それについては副官から説明いたします」


 これは曹長の提案なので、曹長に説明してもらう手はずになっている。


「国境入出国管理隊の方々が、入国審査を十分にしていただき、そのおかげで帝国の平和が保たれていることは存じており、また感謝もしております。それを我々は別の観点から、再度検証しようかと考えております」


「どのような検証だ?」

「例えば、先ほど拝見させていただきましたここ数日の入国者に関して、民族としてシルラ人が多いように思います」

「確かにその通りだ。だがそれの何が問題なのだ?」


 曹長は慎重に説明する。

 言い方を間違えば、国境入出国管理隊が無能なので、我々が別で検証する、ということになりかねない。


「個々人を審査する国境入出国管理隊の方々はそれで問題なしとすることでしょう。個々人に問題がなければ通過を止める必要はありませんので」

「その通りだ」

「ですが、我々はその現象を不審とみなします。カサラ王国の民族構成は現在、カジーラ人が七割、オルジリア人が二割。シルラ人は一割にも満たしません。それが何故このように大量に入国しているのか。個々人の目的に統一がないにもかかわらず」


 大尉が腕を組んで考え込む。


「そのような、テロを怪しむような現象を見つけ出して、既に国内にいる者達を警戒する、それが我々の部隊です。ですから、ご協力願います」

「ふむ、つまり、入国者の情報を提供すればいいという事か?」

「はっ、ご協力お願いいたします」


 曹長が敬礼する。


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