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ガイジの女の子達をまとめることになった。  作者: 真木あーと
第一章 ガイジの問題ある女の子たち
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第10話 色然とした准尉

「それで、貴官は何を買われたのか?」

「え? 何ですか?」


 曹長の軍人体質もどうかと思うけど、この伍長の軍人気質の全くない、そこらの女の子の口調もどうかとは思う。

 いや、それを言い出すとさっきの軍曹もなんだけどさ、いや、あの子は一応は軍人口調だったか? まあ、でも若手女性下士官の口調ではなかった。


「貴官が一等兵から養成所を経ずに伍長に昇進した、という事は前例も珍しいと思われる事態だ。それは貴官には他に類を見ない特徴があるものと思われる。それは何か? と尋ねているのだ」

「? ??」


 伍長は不思議そうな表情をしている。

 曹長の口調が威圧的であるため、怯えているようにも思える。


「曹長、君の話し方は理想的な軍人の話し方で素晴らしいと思う。だけど、おそらくさっきの軍曹も含めてこの伍長にも、その口調は合わない気がするんだ。もう少しソフトに出来ないかな?」

「…………はっ! 命令のままに!」


 一瞬色々考えたんだろうけど、俺の命令に従うようだ。


「伍長、曹長が言いたかったのは、君は人事局のヤグニス大尉に何を褒められて職業軍人にしてやろうと言われたのかが知りたいんだよ。君だってせっかく軍人になったんだから活躍したいだろ? だから、君が何を素晴らしいと言われて軍人になったのかを知っておきたい」

「あ、はい!」


 俺が穏やかに丁寧に言ってやると、スプラ伍長はほっとしたように笑う。


「私は耳と鼻がいいと言われました! それはこれから作る特殊部隊に欲しい能力だと言われました」

「……耳と鼻がいい?」

「はいっ!」


 満面の笑みのスプラ伍長。

 うん、素朴だけど可愛い笑顔なのはいいんだけど。


 耳と鼻がいい?

 え? それをどう使うんだ?


「伍長、それを今ここで使えるか……使えますか?」

「は、はい……えっと……」


 目を閉じる伍長。

 じっとしていると緊張しているのがよく分かる。


「ドアの外に人がいます。中の様子を窺っているようです!」

「……?」


 俺より先に、曹長が動いた。

 ドアの前に張り付き外を警戒しつつ、勢いよくドアを開け、一旦引っ込んでから外に出て──。


「きゃっ!」


 女の子の悲鳴。

 少なくとも曹長の声ではない。


「何者だ! ここは帝国軍本部施設であるぞ!」

「し、知ってるわよ! 離しなさいよ!」


「何者かと聞いている」

「痛い痛い! だから! 離してって言ってるのよ!」


 外で、曹長が誰か女の子を捕らえて、おそらく床にでも押しつけているのだろう。

 もちろん曹長が正しく、ここ軍本部に知らない者がうろついていたら捕まえるのが当然なんだけど……相手は女の子みたいだし、手荒にするのもどうかと思うし、見に行ってくるか。


「あ、伍長、ありがとう。たて込みそうだから一旦詰め所に戻ってて?」

「は、はい」


 スプラ伍長はててて、と戻っていった。

 さて、俺は──。


「だから! 離しなさいよ!」

「何者かと聞いている!」


 全く話が進展していない外に行くか。


「曹長、あまり手荒な真似は──」

「あ、先輩!」


 廊下では、曹長が誰かを床に押さえつけていたが、その子が俺を「先輩」と呼んだ。

 何でこんな軍の主要施設に軍服着てない子が入り込んだのか、そしてその子はどうして俺を先輩と呼ぶのか?


「あれ? トゥーリィ?」

「先輩っ!」


「……お知り合いですか?」

「あー、うん、少年士官学校の後輩だけど」


 何でこんなところにいるんだ?


「ほら、離しなさいよ!」

「失礼しいたしました」


 士官学校卒と言うことは、少なくとも准尉であり、曹長よりは階級が上なのだ、こんな子供でも。

 曹長は立ち上がって敬礼をする。

 それにぶち当たるように立ち上がるトゥーリィだが、彼女の小柄な身体では鍛えられている曹長のふらつかせることも出来なかった。


「先輩! お久しぶりです! 会いたかったです!」


 長い金髪をツインテールにした、十五歳の女の子。

 年相応の、まあ若干低い身長で、年相応のスタイルの女の子、なんだけど。


 十三歳の子供のころから知ってるから、本当、成長したなあ、と感心してしまう。

 あの子がこんなに可愛い子になるなんてなあ。

 服装は白いミニスカートドレス、これは昔からこの子が好きだった服装だったっけ。


「……うん、卒業以来だね。あれ、トゥーリィは今年卒業なんじゃなかったっけ?」


 この子は俺が三年の時に一年だったから、二つ年下のはず。


「はいっ! この前、晴れて卒業しました!」

「そっか、准尉就任おめでとう」

「ありがとうございますっ」


 相変わらず笑顔の可愛い女の子だ。


「そして、初所属が先輩と同じで嬉しいです!」

「……え?」


 何言ってんの、この子?


「トゥーリィ・スティー・パラエル准尉、本日マルキューより、外事警察隊副隊長を拝命いたしましたっ!」


 びし、とした敬礼は、さすが少年士官学校卒なんだけど……え?

 たった五人の隊に、隊長、副隊長、副官がいるの?

 俺は部屋に戻り、もう一つの書類を確認する。


 副隊長トゥーリィ・スティー・パラエル准尉、十五歳。

 十五歳で、少年士官学校を卒業。

 父はスティー伯爵。


 ……うん、確かにトゥーリィの書類だけど……。

 え? 卒業したての准尉って、半年くらいは現場に慣れるために、大きな隊で、いてもいなくてもいいような副小隊長とかするんじゃないの?


 まあ、俺はそこで功績を上げたんだけどさ。

 何でこんな、少数精え……人数の少ない隊に来るの?


「……ん?」

「どうしました?」


「お前の人事書類だけ、発行日付が昨日になってるんだけど」

「そうですか?」


 いや……上官の承認とかあるから配属は本人に伝える数週間前から決まってて、他の子の書類もみんな先月になってるんだけど……。


「スティー伯爵って、そう言えば、人事局の大佐だっけ?」

「はいっ!」


 元気な笑顔。


「お前、ねじ込んだな?」

「何のことでしょう?」


 おそらく、俺が隊長、シスリス曹長が副官兼下士官リーダで、この二人を中心とする隊で決まっていたんだと思う。

 そこに人事局大佐殿の力で副隊長にこいつを入れ込んだんだ。


「お前なあ……」

「まさに神のお導きですね! 私と先輩に愛し合えという」


 満面の笑み。


「……お前って敬虔な信者だっけ」

「はい、魔法使いですから」


 ああ、そう言えばそうだったな……


「あのなあ、初めての隊はもっと大きい方がいいんだよ。こんな小さいところ選んだら、将来苦労するぞ?」

「将来なんてどうでもいいんです。今、私が先輩を好きって事と、先輩の側にいたいってことが重要なんですよ!」


 今さらリと、ねじ込んだこと認めやがったな?

 トゥーリィは学生時代、俺に告白したこともある、三回ほど。


 こんな可愛い子に好きと言われたのは確かに嬉しかったんだけど、俺たちは貴族であって、自分の好き嫌いで異性を選べないんだよ、と言って断ったんだけど。

 その時に毎回言われた言葉がある。


「大丈夫です、スティー伯爵家は、恋愛体質なんですから」


 これだ。

 スティー伯爵家は、何よりも恋愛を優先する家系らしい。


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