とある普通の完璧主義者
ひどく独善的で傲慢で我儘で、何もかも見下したようなこの世界が大嫌いだ。
こんなもの壊してやりたいと思っている。
だけれども、俺にそんなことはできない。
なぜなら俺は平和な日本に生まれ育ち、退屈な日々を享受している男子高校生であり、ちっぽけで無力な存在でしかないからだ。
そう、俺は大衆のただの一部分でしかない。
そんな自分に嫌気が差す。
学生なのだから、こんなこと考える暇があるなら勉強しろとでも言われそうだが、今まさにこんなことを考えながらも手では必死にノートを取り、耳では授業を聞いている。
隣で寝息を立てている坊主頭と違って俺は至って真面目な高校生なのである。
自分で言うのも何だが、頭だってかなり良い方だ。運動だってできるし、天才ではないが、自分が何かに劣っていると感じたことはほとんどない。
…いやそういう自分を偽っているのかもしれない。 いつだって自分は完璧でいたい。その気持ちだけは幼少期から変わらずずっと思って生きてきた。いわゆる完璧主義者なのだ。
とはいえ、さすがにこの授業は退屈だ。
先生の身の上話なんてはっきり言ってどうでも良いのだ。さっきから寝息を立てている坊主頭、もとい野球部の山田の気持ちも分かる気がする。俺だって世間体なんてきにせず寝てしまいたいほどだ。
いい加減、聞き飽きた声を遮るように
「先生ーもう授業時間過ぎましたよー!」
と明るく穏やかな声色で告げたのはクラス委員長の綺咲咲良だ。彼女は頭が良くて美人で愛想が良いため、みんなからの人気も高い。
そんなこんなで今日も同じ日常を繰り返す。この決まりきって退屈な日常を…
と、思っていたのだがそんな俺に転機が訪れた。
それは放課後のことだった。