SS「その後の咲子」
CAさん編に入る前に、1話、SSをはさみます。
巫女さん編の途中。根を詰めるいおりを心配するイッセーが、咲子に相談したあとの模様です。
「あああああぁ! もう! 私! バカ? バカなの!?」
家に帰り着くなり、咲子は制服のままベッドに突っ伏して、大声を上げていた。
「しゅれーなんとかのパンツとか! はいてないパンツとか! なに言ってんだか! 言っちゃってんだかーっ!」
も。恥ずかしい。死にたい。
咲子はクッションをひっかぶって頭を隠す。だけど尻は隠れていない。スカートがひらひらと揺れてパンツが見えそうになっている。
だいじょうぶ。いまは、はいている。
なんであんなことしちゃったんだかーっ!!
思い返すだけでも恥ずかしい。
穴があったら入りたい。もうこのまま一生クッションに埋もれていたい。
イッセーがはいてないパンツを見たいなんて言うからっ……!!
巫女さんのところに通いつめるイッセーを、咲子は屋上に呼びだした。
急接近する二人に危機感があったのだろう。自分でも信じられないのだが、イッセーを呼びだして屋上に上がる前の廊下で、咲子は制服のスカートの下からおパンツを脱ぎ下ろしていた。
そう。はいてなかったのだ。
あの時。屋上にいる時。
なんであんなことしちゃったんだかーっ!!
うわーっ!! うわーっ!! わーっ! わーっ!
「イッセーが見たいって言ってたら……、わたし……、どうしてたんだろ……?」
咲子は自問自答した。
そこまで考えて行動していたわけではない。単なる勢いだ。イッセーが巫女さんより自分に関心を持ってくれれば――と、それしか考えていなかった。
だけど、もし――。
イッセーが「見たい」と口にしていたなら――?
「見せちゃってた……?」
パンツはいていない、そこを……?
「きゃーっ! きゃーっ! きゃーっ!」
クッションを被って、咲子は身悶えた。
もう恥ずかしい。なにそれ。もうほとんど性行為。なんて大胆な。
「だけどイッセー……、マジ許さん」
咲子ふつふつと沸き上がる怒りを覚えていた。
決意を、乙女の純情を、踏みにじられた。
なんの興味もない。
――イッセーはそう言ったのだ。
許さん。
ぼすぼすと、クッションにパンチを入れる。
人があれほど頑張って、あんなに恥ずかしい思いをして、あんなに勇気を出して――パンツを脱いだのに!
――興味ないだと。
ぼすん、ぼすん。
――パンツしか興味ないのだ。あの男は。
ばすん、ばすん。
――あの変態め。
ぽす、ぽす。
「はぁ……っ」
咲子は力尽きて、クッションにほっぺたを預けた。
お尻をつきあげた変なポーズでベッドの上に撃沈したまま、乙女の思考でイッセーのことを考える。
はぁ……。
あいつがあんなに変態じゃなければよかったのに……。
パンツパンツって言いださなければ、カッコいいし、頼り甲斐があるし、ちょっとズレたところあるけど、優しいし、まえは無神経だったけど、最近は気の利くようになってきたし……。
もし、イッセーがあんな変態じゃなくて、まともだったら……。変態が直って、まともになったら……。
咲子は想像した。ていうか、妄想をはじめた。
――咲子。余はようやく気がついた。おまえがこんなにかわいいということに。
「か、かわいいだなんて……、そんなっ」
――本当のことだ。余がこれまで嘘をついたことがあるか。
「ほ、ほめたって――! なんにも出ないんだから!」
――下心などない。ただ本当の気持ちをおまえに伝えたかっただけだ。
「ほ、本当の気持ち……って?」
――咲子。余はおまえのことが……。
「ちょっ……だめっ! イッセー!」
――嫌ならば、逃げるがいい。
「嫌じゃないけど……、嫌じゃないけど……! まだ早いのっ!」
――すまん。余はもう抑えきれそうにない。
「きゃーっ! きゃーっ! きゃーっ!」
咲子はベッドの上でじたばたと暴れた。もう辛抱たまらん感じだった。
その時、ドアが壊れる勢いで開けられる。
「お姉ちゃん! うるさい!」
中学生の妹だった。莉子という。
「もう! サカってんじゃないよ! お姉ちゃん!」
「さ……!? サカってなんてなーい!」
めっちゃびっくりして、咲子は妹に叫び返した。
真っ赤っかだった。妄想の最中に踏みこまれて、もう、恥ずかしいったらありゃしない……。




