次回予告「冥界の王アヌビス」
まず気づいたのは、乾きった風の匂いだった。
イッセーは意識を取り戻すと同時に、目を開けて、起き上がっていた。
砂ばかり続く灰色の世界が、どこまでも広がっていた。
ここはどこだ、とか――。
なぜここに、とか――。
そんな〝あたりまえ〟の思考は、天才であるイッセーの頭には浮かばなかった。
考えても結論に至るだけの情報が、明らかに不足している。よって考えることは無駄である。そして天才は無駄なことはしない。
「おお。目覚めたか」
傍らに人が立っていた。……いや。〝人〟であるのかどうかは、定かではない。
女は古代エジプトの女王のような服装をしていた。だが露出度の面でいえば、アラビア風ベリーダンサーといった趣だ。
「おまえは余になんの用がある?」
イッセーがそう聞くと、女は、切れ長の目をさらに細めた。
「ほう。……面白い人間だな。第一声でそんなことを聞いてきたやつは、ほかにはおらなんだ」
女は愉快そうに笑うと。――言った。
「妾はアヌビス。この冥界の王。――神であるぞ」
「ほう」
ここがどこで、この女が何者なのかが確定した。
なんの用があるのかということについても、手がかりが得られた。
だがイッセーの心を占めるのは、別なことだった。
腰巻きのスリットスカートから、日焼けした太腿が覗いている。
その下に下着はあるのか……? 神とやらは、どんなパンツを履いている?
「おまえのパンツが見たいぞ」
イッセーは〝神〟に向けて、そう言った。
次回から、数話、冥界編となります。
また冥界編突入につきまして、作品に「異世界転移」タグをつけることにしましたー。
冥界は異世界に入るかどうか微妙ですが、予防措置ということでー。