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六十二話『屋敷へ いそげ』


――― …


『マコトさん! い、今すぐ… 町長の屋敷へ、来てください!』



『この街の異変の、原因が… 分かりました !! 』


突然入った、カエデからの通信(チャット)装置からの声に、俺は耳を疑った。

それに俺はすぐ反応し、返事をする。


「カエデ…!? ど、どういう事なんだ!?」


『とにかく今すぐ町長の屋敷へ来てください!ボク達はマコトさん達の到着を待って―――』

『――― ッ!?』

『わ… わぁああああっ!?』


「…!? カエデ… おい、カエデ!? どうした!?何かあったのか!?」


『――――― …』



返答はない。

突然入り、突然に途切れたカエデからの通信。

切羽詰まったような声色が突然焦り始め… そして、途絶えた。


「センパイ…? か、カエデちゃんに…何かあったんですか?」


「… … …。 カエデから通信(チャット)が入って… 急に切れたんだ…!」

「この街の異変が、分かった、って…。 でも突然声が聞こえなくなった…!」


「…! マジかよ! じゃあ…何かあったんじゃねぇのか!?」


敬一郎が俺に一歩詰め寄った。


…カエデのレベルは10。そしてベルクさんはそれを大幅に上回る18。

この街のスケルトンで太刀打ち出来るレベルではないと考えられるが…。


ひょっとして、スケルトンではない何かが、この街に潜んでいたのか…!?


俺は判断して、悠希と敬一郎に伝える。


「…とにかく、急がないと! 町長の屋敷だ、すぐに出よう!」


「真。消え去りの輪は此処にくるまでに既に使っちまった。…生身で屋敷まで行くことになるが… 用心していくぞ…!」


スケルトンは、今のところ人間を襲っていないらしい。

だが、この街の侵入者に対して魔物達がどう出てくるかは… 正直、不安な要素だ。


だが、蹴散らしてでも先に進むしかない。俺は敬一郎の言葉に大きく頷いた。



「…マコトさん…?」


シャーナさんは立ち上がり、俺の方を心配そうに見ている。


俺は恥ずかしげもなくシャーナさんの方を見て、告げる。


「… 俺の仲間が、この街の異変の元凶を見つけたと伝えてくれました。…俺達はその現場にすぐに行ってみます」


「… … …」


シャーナさんは申し訳なさそうに斜め下を俯くが… 少しして、決意を固めた真剣な表情を俺に見せて、一礼した。


「お仲間が危険なのですね。…申し訳ありません。 …私に何か出来ればいいのですが、今は…」

「お礼なら後で何でも致します…! …この街を… そしてマコトさんのお仲間を、どうか… よろしくお願い致します…!」


「… ありがとうございます! その言葉だけで…十分です!」


俺は笑顔でガッツポーズをして、教会の扉まで駆けだした。



「待て、マコトよ!」


扉を開けようとする俺の元に、安田先生… キオ司祭が駆け寄ってきた。


「…! キオ、司祭…!」


今の今まで、ずっと教会に逃げ込んだ人の介護をしていたのであろう。疲れで顔色は悪く息も上がっているが… それでも、俺の元に来てくれた。


そして、俺に、伝える。


「この街を… 再び守ってくれるというのだな」


「… はい!必ず…!」


「… … … すまない。僧侶のお前に司祭のワシが頼むのも情けない話だが… よろしく頼む」


深々と頭を下げる司祭に、俺は首を慌てて振った。


「この街は、俺の街でもあるんです。 …必ず守って見せます!俺の力で…!」


「… … … マコト。その懐にある石を見せてみよ」


「え…?」


俺は司祭にそれを伝えてはいない。


取り出したソレ(・・)は… 獣人の集落で村長から貰った『覚醒の宝石』だった。


「その石… 覚醒の宝石。 その事について、急ぎ、伝えよう」


「! 知っているんですか、キオ司祭…!」


「その石を持つ者は、文字通り新たな力へ覚醒する力を手に入れる事が出来る」

「ただし… それには、二つの鍵(・・・・)が必要となる。 …その石に関する言い伝えじゃ」

「その石は昔から存在しておった。大いなる力を持つその石の使い道を探す者は数多におったが… いつの頃からか、単に神聖な飾り物として祀る場所が多くなってしまった」

「ワシの教会として、それは例外ではなかったからの。 …だが、その力はワシでも感じられるほどに大きい。だから、それに関する事を、伝えよう」


…だから、司祭は見なくてもこの石の事を感じられたのか。


そしてキオ司祭は、この石の、二つの鍵の事を話してくれた。


「一つの鍵。その石は、使う者を選ぶ。選ばれていない者が使っても、その恩恵は受けられん。選ばれた者が使ってこそ、覚醒の力を得ることが出来る」

「二つの鍵。その石は…いわば、大いなる力の『牢屋』に過ぎん。重要なのはその内側に秘められた莫大な『力』じゃ。それを解放してこそ、覚醒の時が生まれる…」

「古い言い伝えじゃがの。遥か昔には、『選ばれし者』がその宝石の力を使えたというが… 今となっては、選ばれし者の資格さえ分からん」

「だがもし、お主達の誰かが選ばれし者であれば… この街の瘴気を払えるほどの大きな力を得られるかもしれん」


「… 大きな、力…」


淡く手を青く光らせる丸い宝石を、俺はじっと見つめた。


力の、覚醒。

俺が選ばれし者であれば… その力を使えるというのか…!?



「…時間をとらせて、すまん。少しでもお主の力になれればと思ってな」


キオ司祭に、俺は大きく、力強く頷いた。


「ありがとうございます! …それじゃあ俺達、行ってきます!」


「… どうか、お気をつけて…!」


シャーナさんが一歩前に出て、祈りを捧げるように俺達を見つめた。


「任せといてくださいよ!もう一回、この街を守ってみせます!」


「何回でもやってやるっス!魔物退治ならプレイヤー… じゃなくて、私達の専売特許っスからね!」


敬一郎、そして悠希も、力強い言葉をキオ司祭とシャーナ… それに教会の人々に聞こえるように大きな声で伝えた。



「頼むぜ、英雄さん達!」

「お願いよ、この街を、取り戻して頂戴…!」

「何度もすまねえ…!だが、お前さん達しか頼れるヤツがいねえんだ…!」

「この街を…ムークラウドを、お願いします…!」


教会に避難している人々の激励を受けながら、俺達は教会の扉を開けた。


そして、俺は、大きく告げた。



「ムークラウドを… 必ず、取り戻します!!」



俺と、悠希と、敬一郎は、町長の屋敷へ向けて、全力で走った。



――― …



「グゴァアーーーーーッ!!!」

「ギィィィーーーーーッ!!!」


駆けていく俺達の目の前を、スケルトン数体が道を塞ぐように現れる。


俺の前に敬一郎と悠希が飛び出して…。


「龍爪回転脚ッ!!!」


「火遁の術!!」


敬一郎の回し蹴りが、悠希の炎が、あっという間にスケルトン達を消し去る。


華麗に敬一郎が着地し、俺に振り返った。


「どういう事だよ、スケルトンは人間を襲わないんじゃなかったのか…!?」


「… 多分、状況が変わったんだ。 カエデとベルクさんが元凶を突き止めたから… 侵入者である俺達を、排除する方向に移行したんだと思う!」

「つまりコイツらは、見張っていたんだ!普段は何もせず、有事になれば攻撃できるように配置されていた。だから…今は全力で俺達を潰そうとしているらしい!」


「ギャギャギャーーーーッ!!!」


そう言っている間に、路地から複数体のスケルトンが、敬一郎と悠希から離れた俺に襲い掛かってきた!


「…! センパイッ!!」



「! 聖なる結界(バリアフィールド)!!」


瞬時に地面に描かれた光の円と閃光に、スケルトン達は消え去った。

… 結界で浄化できる程度のレベルらしい。俺は一安心した。



俺は悠希と敬一郎の方を向き直り、作戦を伝える。


「とにかく町長の屋敷まで突っ走ろう!敬一郎が戦闘で、行く手を遮るスケルトンを蹴散らしてくれ!」

「悠希は真ん中で、四方からくる敵をクナイで撃破! 俺は最後尾で2人のサポートをする! いち早く屋敷にたどり着くぞ!」


「了解っス!」


「おうよ!俺の腕に任せしとけ!」



瘴気に包まれた、ムークラウドの街。


俺達3人は、教会から、町長の屋敷まで… 全力で駆けていった。


――― …


「… ククク」

「そうだ、急いで来いよ。 焦れば焦るほど…お前達は無駄な体力を消費する」

「所詮お前達は… 盤面の上で踊らされる、駒に過ぎないのだからな…」


――― …


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