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六十話『骸骨の まち』


――― …


東の門が、開く。


爆炎の先、鉄の門には人一人が通れるほどの大きさの穴が開き、その先には…。


「…!」


俺は、息を呑んだ。


魔物だ。


骸骨型の魔物が、街のあちこちを徘徊するようにうろついている。


夜の街灯に照らされ、その魔物達が薄暗く、不気味に照らされていた。


1匹や2匹ではない。

門の穴から見るだけでも、至るところにその魔物は存在していた。


街角。店先。路地。

骸骨の魔物達は、目的なくただただムークラウドの街中を彷徨う。


「な… なんだ、これ…!」


「…一見するとスケルトン…。アンデッド系のモンスターに見えますな。しかし…」


ベルクさんは口に再び魔法道具を銜えて、鉄門に空いた穴に身体を通し、先にムークラウドの街中に足を踏み入れた。

続いて俺、敬一郎、悠希、カエデと、街の中に侵入する。


【消え去りの輪】の効果がしっかりと効いている。

スケルトン達は辺りを徘徊するのみで、俺達の事に気づいてもいない。東門の爆発音も静かだったし、穴が開いた事にも気づいてないようだ。


口に消え去りの輪を銜えているせいで、会話は出来ない。

俺達はお互いに顔を見合わせ、頷く。


魔物が街中に蔓延っているのは想定の範囲内だ。


今は【消え去りの輪】の効力が続いている間に、それぞれの目的地へ急ごう、という確認の合図を、アイコンタクトで行った。

俺、敬一郎、悠希は教会へ。

ベルクさん、カエデは町長の屋敷へ。


俺が親指を上向きで立て、道を真っ直ぐに行く。それに敬一郎と悠希が続いた。

ベルクさんとカエデは、道を左に曲がり… やがて見えなくなる。どうやら近道を知っているようだ。


… とにかく、事態を把握しなくては。


この街に何が起きているのか。


そして住民は、どうなったのか。


俺達は教会へと急ぐ。



――― …


「ギ、ギギ…」

「ガ、グガガ…」


スケルトン達に俺達は察知できない。しっかりと魔法が効いている。

俺は教会へ急ぎながら、辺りのスケルトンの動きを見る。


口が閉ざされているから観察(ウィデーレ)は使えないけど… おそらく消え去りの輪が効く程度の魔物なのだから、俺達でも倒せる相手だろう。


ただ… 数が未知数だ。

こうして教会まで歩いて行く中でも既に数十体のスケルトンとすれ違っている。


ムークラウドの街全体だと… こいつらはどれくらいの数いるのだろう。それを考えるとゾッとする。


そして…。


教会に向かうまでの間に、『人間』とは誰ともすれ違わないのだった。


「… … …」


魔物に喰われた?殺された?

嫌な考えが次々と頭の中に浮かんでくる。


しかし、幸か不幸か… 人間とはすれ違わない。つまり、人間の死体も、一つも見かけてはいないのだ。


これだけの数のスケルトンがいて道端にも何処にも人間の死体がないという事は、やはり…。



そんな事を考察しているうちに、俺達は教会にたどり着いた。




懐かしの教会。

数日しか間が空いていないというのに、まるで数年ぶりに帰ってくる我が家のようにその教会を見上げる。


「… !」


灯りが、ついている。


カーテンで締め切られた教会の窓から、微かに灯りが漏れていた。つまりこの中には誰かがいるという可能性が出てきた。


「… … …」


俺は戸をノックしてみる。


… ダメ元だ。

これだけ魔物の徘徊している街中では、ドアを不用心に開けるのは自殺行為に等しい。


戸をぶち破るわけにもいかないが… とにかく、やってみるしかない。

俺は数度にわたって戸をノックし続けた。



――― すると。



ドアが、ゆっくりと開いた。


「… !」


まさかあちらから開くと思っていなかったドアに俺は少し驚き…。


ドアを開けた人物に、更に驚くことになる。



俺は銜えていた消え去りの輪を思わず口から離して、その人物の名前を言った。



「し… シャーナ、さん…!」


戸を開けた人物も、俺の姿に驚いた。


「…っ…!? マコト、さん…!?」



驚き。安堵。戸惑い。 様々な感情が俺の中に一瞬で生まれる。


おもむろに、俺はシャーナさんに手を掴まれた。


「とにかく…中へ…! ケーイチローさんとユウキさんも、早く…!」


「は… はい…!」


俺達三人は、言われるがままに慌てて教会の中へ入り… 急いでドアを閉めた。


――― …


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