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Peaceful  作者: 石丸優一
13/24

Million

ガヤガヤと各々が騒ぎ始める。

 

「何をバカな事を!トライアドごときが出過ぎた真似ぬかしてんじゃねーぞ!」

 

「はるか昔から居を構えるスタテンアイランドのイタリア人マフィア達と肩を並べようってのか!」

 

「いや待て。厳密に言えばスタテンだって未だに混沌としているはずだ。五大ファミリーに協調性なんて皆無だからな」

 

「それにマンハッタンやブルックリンは激戦区だ!世界中から一旗揚げようって悪党たちが集まってきてる。日本のヤクザだってそうだ」

 

…当のジャックは身体の痛みが強いのか、顔をゆがめている。

 

「その手始めにマフィアではなく俺達ファントムズを?」

 

「だが確かにそれならわからねー事もない。

何かを作るときは何かを壊す。

そうやって時代は繰り返すわけだな…伝統は継承ではなく感染するもんだ」


スティーブの言葉に一同が目を見開く。

 

「感染だぁ?伝統を引き継いできた俺達ファントムズにも、マフィア連中と同じようにそう言うつもりかよ」

 

まずスコットが唾を吐く。

 

「けっ、病気みたく言いやがって。

俺らも街にとっちゃ疫病だって事なんだろ」

 

これはパーシーだ。

 

「上等じゃないか、ボス。

目には目を、歯には歯を、だろ?

三合会みたいな毒を制するのは俺達ファントムズっていう猛毒だけだ。警察や役人はお呼びでないって話だな」

 

アンディだけはそう言いながら一人満足したように何度も頷いた。

 

「俺達はもっと自覚するべきだぜ。

確かに疫病みてーに感染して成り立ってる存在だって事をな。だが、アンディの言うとおり、俺達だからこそ…いや、俺達にしかできねー事があるはずだ。

ブルックリンの玉座に座ってんのは今も昔も俺達ファントムズMCだ。この街のキングは王冠被ってふんぞり返ってるジジイじゃねー。大鎌担いで寝首をかっ斬る死神だって事を思い知らせねーとな!」


一時はスティーブの言葉に不信感を抱いていたメンバー達の瞳に光がさした。

だがそれは、ヒーローもののコミックなどによくあるキラキラと輝く美しい眼ではない。

 

「そうと決まれば戦争の準備だろ、スティーブ?」

 

「東アジアの田舎もんとはいえ、マフィアを相手にしようってんだ。この際、なりふり構ってらんねーぞ。

ファントムズが今までにねじ伏せてきたギャング連中やバイカー共にも声をかけて兵隊を集めろ。言うことが聞けねー奴は迷わず弾け」

 

暴れる事を嬉々としている、言わば悪役の眼という表現が適当だろう。

 

「何をグズグズしてんだ?てめーの仕事もわからねー奴は全員この場で殺すぞ!

さっさといけ!カス共!」

 

一同が「ファントムズMC!」というかけ声と共に散っていく。


「…ご機嫌だな?」

 

「どう捉えりゃそうなんだよ、ボウズ。お前から先にやっちまうぞ」

 

「…」

 

か細い声で煽ってくるのはもちろんジャックである。

タカヒロやアンディは動けるのを理由に、他の連中と同じように退室していた。ここでスティーブにどやされるのを待つわけにもいかないからだ。

 

「キズは?まだ痛むか?」

 

「へっ、かすり傷だぜ…と言いたいどころだが、さすがに効いた。

アンタも撃たれてみろよ。死ぬほどいてーぞ…」

 

「上等だよ。死ぬほどいてーなら早く死ね、クソガキ。

トライアドのネタ、どこからだ?」

 

「有名な話さ…前々からアイツらは何か企んでいたに違いないからな。

冗談だろうって鼻で笑ってたが、このザマだ…阿羅漢潰しが引き金になっちまったか…だが、先に仕掛けてきたのはあっちだからな」


ジャックはバツが悪そうにするが、スティーブや仲間達はジャックに何の責任も感じてはいない。

先ほど警察に捕まってしまった者を除けば、動けない自分だけが何の役にも立てていないと思っているのだろう。

 

「そういえば、始めに襲いかかってきた奴ら…なぜ撃ってきた?」

 

「…さぁ?俺が分かる範囲では、奴らに対して個人的な恨みもファントムズMC全体としての恨みも無かったはずだが。

…むしろ、お得意様扱いしてもらいてーくらいだよ…」

 

「いつもと違う武器注文の仕方に、勝手な勘違いを起こしたのかもしれねーな。

『ウチを潰す気なんじゃないか?』ってよ」

 

「…そんなに頭が悪いって?いや、矢面に立たされる末端の売人だ…

そのくらいのミスはしでかすくらい脳みそツルツルかもしれねーな」


人をバカにするようなセリフはジャックのお手のものである。

もちろんスティーブを始めとして、ファントムズの人間は日々互いを罵っているからだろう。

 

「トライアドは一枚岩じゃねーと思ってたが、阿羅漢の件の報復も混じってると考えてイイだろうか?」

 

「そうだな…だが、考え方としちゃあ…『味方がやられた事をきっかけにして、報復と同時にファントムズを攻撃し…一気にブルックリンを手中に収めたい』っつうところだろう。

一枚岩じゃねーってのは間違ってない。でも、どこの組もこぞって手柄を欲しがってるはずだ。実際…俺達を潰す事が出来たとしたら、その組がブルックリンを任されるのが自然だ」

 

「そんなもん返り討ちだろ、ボウズ。

おめーもここで狙われる可能性が高い。さっさと家に帰してもらえよ」


スティーブに気遣われるのも珍しい。

ジャックはポリポリと頭を掻いて苦笑いした。

 

「チッ…そうだな。自分の足で満足に立てりゃそうしたいところだが、医者がうるせーんだよ。

やれ検査だの安静だの療養だのってな。帰りたくても帰れやしねー…」

 

「そうか?本気で帰りたきゃ、とっくに帰ってるだろうが。

誰かに迎えを呼べば無理やりここから消えちまう事も出来るはずだぜ?口さえきければ可能だろ。

てめーは心のどこかでびびってんだよ。医者の言うことをきく事で納得してんだ」

 

「そう…かもな…

死にたくねーって思った。

命が助かるなら従ってりゃイイってな…アンタの言うとおり、俺はびびってんのさ」

 

「ガキが。ファントムズのサブリーダーに他人から保証された命なんてねーんだよ。

自分で考え、自分で走れ」


ピリリ…ピリリ…

 

「俺だ」

 

病院内での携帯電話の使用など誉められたものではないが、看護師や医者がいなかったおかげでお咎め無しだ。

 

「ラファエルだ」

 

「あ!?てめー、パクられたんじゃ!?」

 

なんとラファエルからの連絡である。

 

「おうおう、そりゃ嬉しい悲鳴って奴か?

スコットに迎えを頼んだ。アンディがエコノラインに俺のバイクを積んで警察署まで来てくれる手筈だ。

あのおっさんもタフだな、マジで。もう動いてんのかよ」

 

「分かった。

でもどういう事だ、兄弟」

 

「俺はあの場に居合わせただけだからな。

任意の事情聴取って奴だ。

周りは警官だらけ、下手に騒いだら入れられちまうだろーが」

 

「なるほどな。合流したらまた教えてくれ」


iPhoneをしまう。

この最新機器を扱う姿もなかなか様になってきたものだ。

 

「ラファエルは無事だったか…」

 

「お察しの通りだ。ジャック、てめーの知り合いのクソガキ共で兵隊に出来そうな奴は?」

 

「いねーよ…ピストルぶら下げて戦う学生が今時いるか…?」

 

「腰抜けの知り合いが多くて羨ましいぜ。さっさと帰れ、いいな?」

 

スティーブも戦力を増やす為に病室を出て行く。

 

「待て待て」

 

「あ?」

 

「三合会の…組事務所のリストだ。狙う先を知らなくてどうすんだよ」

 

ジャックが自分の携帯の画面をひらひらと見せた。

 

「全員に送っといてくれ」

 

「了解。もちろんここに…載ってねー場所だってあるからな。

俺だって…全部調べれるわけじゃねー」

 

「大目に見といてやるぜ」


ガタン!

 

病室のドアを閉めてスティーブが動き出す頃、院内では消えたアンディとタカヒロを探して従業員達がてんやわんやし始めていた。

 

 

「ちぃと、別の線からたどってみるか」

 

ファントムズが蹂躙してきたギャングやチームは、メンバー達によって集結されるはず。

 

ならばと、スティーブは高校時代の悪友や、刑務所にいた時に気が合った連中(もちろん出所していて連絡先が分かる者だが)に片っ端から電話をかけ、または近ければ家を訪ねて回った。

 

だがもちろん何の報酬も無しに好き好んで争いごとに首を突っ込む者などいない。

収穫はゼロで、肩を落とす。

 

ピリリ…

 

「ボス」

 

アンディだ。

 

「よう、どんな具合だ」

 

「問題なく兵隊は集まってる」

 

やはりあちらは順調なようである。


「どこに集合させるんだ?数で言えば200近いぞ」

 

「あ?あー…ホームベース?」

 

何も考えていなかったのが見え見えである。

 

「…使えないんじゃなかったのか?」

 

「そうだそうだ。だったら引っ張ってきた連中の誰かが集まってる場所のどこかを使えばイイじゃねーか」

 

「それなら先に訊いた。皆無だ」

 

「何っ!クラッチロケッツはどうなってる?奴らが使ってる空き地なら問題なさそうじゃねーか」

 

スティーブは頭にパッと閃いた事を口にした。

 

「…クラッチロケッツは首を縦にふらなかった。奴らは今回のケンカ、不参加だ」

 

「あぁ!?どういう事だよ!

順調なんじゃなかったのか、おい!」

 

もちろんクラッチロケッツは最大の戦力になると踏んでいた。


「俺も驚いているよ。だが、奴らは未だに自分達を襲った奴を探している」

 

「んなもん阿羅漢だった、で片付けちまえばイイだろうによ!仕方ねー、俺が話してくる」

 

「ビッグ・ペインとは話せないはずだが?」

 

確かにビッグ・ペインは捕まっている。あちらから連絡がくることはあっても、まだスティーブの好きなタイミングでコンタクトを取るのは難しいだろう。

 

「誰だってイイ!今、クラッチロケッツを動かしてる奴ならな!」

 

「随伴は?」

 

「いらねーよ!」

 

 

 

ドルン!

 

ドドドドド…!

 

クラッチロケッツのアジトである、湾沿いの空き地はガランとしていた。

 

「見張りすら立てていないとは、腑抜けた奴らだぜ」

 

文字通りの空き地なので、そんなものは必要ないといえば必要ないのだが。


ウォン!

 

ウォン!

 

ボォォ…

 

「…チッ」

 

疾走してくる赤いニンジャ。

 

マーカスはスティーブの真横に停車し、フルフェイスのヘルメットを脱いだ。

 

「よう、兄弟!」

 

「エラくタイミングのイイご登場だな」

 

「単騎でエリアに近づくハーレーダビッドソンの改造車有りって報告がありゃ、てめー以外に心当たりが無くてな!すっ飛んで来たぜ」

 

自慢げに話すマーカス。

姿は無くとも、やはりこのあたりにはクラッチロケッツの眼がそこら中に潜んでいるのだろう。

 

「で?」

 

「で?じゃねーだろ!ウチの庭にいるのはてめーの方だろうがよ!」

 

「やたらと兄弟分を名乗りたがる割には、ウチが手ぇ貸せって時にだだこねるガキがいるって聞いたもんでな。

お尻ぺんぺんの時間だ」


冗談めいた事を言ってはいるが、スティーブの額にはピクピクと脈打つ血管。

かなり怒っているのが分かる。

 

「んだよそれ!ウチのリーダーの判断に納得がいかねーってか!」

 

「当たり前だろうが!ペインが決めたのかよ?中に入ってる奴に指示をあおぐとは本気でおめでたい奴らだぜ!」

 

またいつものように二人は詰め寄って言い争いを始めてしまった。

 

「黙ってろ!とにかくクラッチロケッツは動かねーからな!

ほら、とっとと帰れよ!」

 

「これは街全体の問題だぞ!嫌でも協力してもらわねーと困るんだよ!

ペインと話させろよ」

 

「無理だっつーの!明日以降にでも面会して来いよ!」

 

「てめーらの仲間を襲った連中の手がかりになる可能性だってあるだろーがよ」


マーカスがピタリと止まった。

誰が見ても心変わりしたのが分かる。

 

「…」

 

「大根役者かよ?マーカス。頼む。

俺達ファントムズにはクラッチロケッツの力が必要だ。

それだけじゃねー。

今、香港マフィアの連中がブルックリンを支配しちまおうと動き出してる。てめーらが大変なのも分かるが、そうなっちまったら元も子もねーだろ」

 

「何?支配?おいおい、話がとんでもない方向に転んでるな。

ブルックリンがどうこうって話は聞いてたが、ファントムズだけのケンカじゃねーってのは嘘じゃ無かったのか…」

 

やはり。ファントムズのメンバー達は、クラッチロケッツに協力は頼んでいたが、詳細までは伝えきれていなかったようである。

 

即決はしないものの、さすがのマーカスもこれには反発できず、しばらく考える仕草を見せた。


「バカげてるだろ?

ブルックリンでデケェ面していいのはファントムズMCだけだってな」

 

「バカか。そういう言い方したら頷けねーぞ、スティーブ」

 

「うるせーな!てめーはこっちの味方だろ!」

 

「とにかく、その連中の話がマジで、尚且つビッグ・ペイン達にちょっかい出してきた奴らと関わりがあるなら話は変わってくるな」

 

 

 

ものの数分で彼等は集まってきた。

 

クラッチロケッツの面々である。

 

「みんな!ファントムズのドンが直々に有力な情報を持ってきてくれたぜ!」

 

クラッチロケッツにスティーブを知らない者はいない。

まずは彼が取り巻きも連れずにここに立っている事に数人が驚く。

だがスティーブが初めてここへやってきた時の状況もそうだったのは言うまでもなく、それは伝説化しているらしい。


「一体どうしたって?」

 

「なんだぁ?レペゼンブルックリンの話ってのは」

 

クラッチロケッツの面々がバイクを停めてスティーブとマーカスの周りに群がってきた。

 

「てめーらの敵、見つからねーんだろ?

使えねーペインに代わって、俺達ファントムズMCがソイツを突き止めた」

 

スティーブのこの言葉に、歓喜より先に怒号が飛ぶ。

 

「使えねーとは何だ!」

 

「バカにしてんのかてめー!」

 

「クラッチロケッツをなめんじゃねーぞ!」

 

スティーブが腹に力を込めて、それらをすべてかき消す。

 

「うるせぇぇぇ!!とにかく聞け!!

てめーらのボスを襲ったカスはどこのどいつでどういう変態かはわからねー!」

 

「おい、兄弟!言ってる事がむちゃくちゃだぞ!」

 

「黙ってろ、ゴリ!

とりあえず、それっぽい奴がクラッチロケッツどころか、この街の破落戸を全員まとめてシメようとしてやがんだよ!分かるか!?」


とんとネゴシエーターには向かない男である。

キョトンとする者もいれば、やはり怒号を上げる者、腹を抱えて大笑いする者。

 

最もそばにいるマーカスは、スティーブを睨みつけてわなわなと震えている。

 

「てめーは…俺達を煽ってケンカふっかけに来たのかよ…」

 

「選べ!」

 

「はぁ?」

 

「選べっつってんだよ!

今回ばかりはクラッチロケッツ以外にもいろんな連中が俺達につく!

香港マフィアの連中のもくろみについて未確認の情報が多いのは間違いねーが、それは何も俺達の責任なんかじゃねーはずだ!

てめーらはそれでも自分達の仇を探しつづけるのか?一から十まで俺達ファントムズが用意した場がないと動けねーか?

後の世でお前達一人一人が、腰抜けと呼ばれるか、英雄の一員と呼ばれるか、選べ。

てめーらの進む道、生き方…それを塀の中にいるボスに丸投げして、動けねー言い訳を考えるのが男だとは思えねーがよ」


未だにざわついているクラッチロケッツ。

 

「スティーブ、てめーは…」

 

もちろんこれはマーカスだ。

 

「あ?」

 

「俺達に選択を迫る前に教えろよ。

アンタはファントムズMCの為に戦ってんのか?それともブルックリンの為に戦ってんのか?」

 

「…!」

 

スティーブは胸を撃ち抜かれた気がした。

今までも戦ってきた理由。そしてこれから戦う理由。

 

ファントムズのリーダーに指名された日から、敵を排除し続ける事が当たり前だとして、『やらない』選択はすべて切り捨ててきた。

そして無意識の内に、それがチームの為になるのだと。

 

「さぁな」

 

「…ん?」

 

「俺が戦う理由が、お前達の選択に影響するか?

俺はファントムズMCを任された男だ。

敵を狩り続けねーと、死神の大鎌が錆びついちまう」

 

「は、だっせー理由だ」

 

マーカスが笑う。

だがその目は、何かを悟っていた。


「ふん!うじうじしてる方がよっぽどだせーんだよ!」

 

すかさず言い返す。

 

「要は、てめー自身も何の為に戦ってんのか分かってねーんだよ。

自分自身が何者なのか分かってねー。

チームの頭ってのは単なる肩書きだ。ファントムズを率いてクイーンズ辺りに戦わずに逃げるって選択もあるんだからな」

 

「ブルックリンが落ちても構わねーって言いたいのか!?」

 

スティーブが唾を吐く。

 

「そうだ。生活だけを考えりゃ、香港マフィアが裏を牛耳ったところで何の支障も無い。

ファントムズMCやクラッチロケッツとして街でバカやりてーから障害になるんだろ。それも、ブルックリンでなけりゃ関係ねーはずだ」

 

「だったらてめーらはそうするのかよ?」

 

「いや…それは違う。ただ、やるんなら何の為なのか、俺達も、アンタも、考える必要がある。

相手がトライアド全体だなんて、とんでもねーからな」


饒舌なわりには口下手だ、とスティーブは舌を打つ。

 

「チッ…さっぱりだな。腰抜け共は指くわえて観戦、って事でいいか?」

 

「話聞いてんのか?

俺達はメンバーの一人一人に選択肢を与えようと思う。

命を賭けてケンカする事に納得した奴はここに残る。そうじゃねー奴はこの場を去る。

そうすればペインの指示を待つ必要はない。それぞれが自分で決めるんだからな。

どうせ、すぐにでもおっ始めるつもりだろ?」

 

なるほど。ファントムズが強制動員なのに対し、クラッチロケッツは個人の意見を尊重するようだ。

 

「回りくどいな。せいぜい全員がいなくなる事を祈ってるぜ」

 

お得意の悪態をつき、スティーブはショベルヘッドの前にあぐらをかいて座った。

 

「みんな聞いたな!

どでかいケンカに参加しようって好き者はこの場に残るんだ!」


 

一台、二台とクラッチロケッツのメンバー達が走り去っていく。

 

スティーブとマーカスはそれを黙って見つめていた。

やはりマーカスはなんだかんだで手を貸してくれるらしい。

 

結果、かなりの数が減ってしまったが、およそ二十人程度のメンバーがその場にとどまった。

 

「上出来とは言わねーからな、ゴリ」

 

「いらねーよ」

 

「今、ウチのメンバー達が兵隊を集めて回ってる。

そこそこの数になってるだろうが、ここに集めるぞ。広くてちょうどイイ」

 

スティーブが携帯を取り出して言った。

 

「へいへい、ご自由に。

…残ったみんな!死ぬ覚悟をするには簡単すぎやしねーか!?最高の一日にしようぜ!」

 

「…マーカス」

 

「あー?なんだよ?命張るって男達に大事な激励中だぜ」

 

「ありがとな」


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