転生者、ショップ確認中、生測地が違う魔物発見する
すいません。
遅くなってしまいました。
リヒトside
アッペンがこの場を離れた後にミランダのことを考えていた。
幼馴染のミランダは柔軟な思考力を持っているのだが、一度こうだと決めると考えを改めようとしない頑固さがある。
私が人拐いから助けてからというもの私を守るという目標の元にかなりの無茶をしてきた。
b騎士になるためにあの化け物騎士団長のバルトレックスの弟子になったのはあまり驚くことではないが、その修行に無理矢理やめさせられるまで続けたことは驚きの記憶として残っている。
バルトレックスの修行は厳しく最後まで残ったものはほとんど居らず、その残った者達は超一流の戦闘者であることはよく知られている。
そして、バルトレックスの話では根性だけで後継者を選ぶならば、ミランダを選ぶと言わしめるほどにミランダの根性は抜きん出ている。
そんなミランダを説得する妙案が簡単に浮かぶはずもなく、条件を満たす被験者を探す方が難易度が下がると考えてこの問題を先送りにした。
ミランダの問題を一時棚上げした私は取り敢えず、ショップの確認をすることにした。
『ラストジェネシス』のスキルを発動して立体映像が現れると今では無かったスキル覚醒というコマンドが現れていた。
これが天使が話していた新しい能力だと当たりをつけてコマンドをタッチすると上級職の宝珠が無いので使用することができませんとメッセージが出てきた。
やはりこれが新しい能力であること確認したので、ショップのコマンドをタッチした。
するとショップの画面が新しくなっており、見慣れぬ選択肢が出ていた。
本来ならば、ショップの画面では生産材料、拠点物資、戦闘物資、アイテムの四つ選択しに分かれており、生産材料が武器など元になる鉱石や薬品の材料になる植物などの素材を売っており、拠点物資は拠点の増設に関する物資を売っており、戦闘物資は戦闘に使用されるアイテム売っており、アイテムは『スキル強化』などの特殊なアイテムを売っていた。
「食品とはなんだ?」
そこに新しく食料の選択肢が増えていた。
取り敢えず、食料を選択すると夢にまで見た日本の食材が表示された。
米である。
転生してから一口も口にしたことの無い米の名前があった。
私が転生したこの大陸に少なくとも米は無く、主食は固いパンだった。
前世でも外国では当たり前なのだが、日本国内では柔らかいパンになれていた私にとって固いパンであることに不満しか無かった。
そして、この世界に調味料の種類は少なくおかげで私はこの世界での食に関しては不満しか無かった。
要するに転生して食べるという行為にストレスを常に感じるハメに陥った私は転生してから前世の食事に飢えていた。
私も何もしなかった訳では無い。
味噌や醤油の作り方はわからなかったが、辛うじてわかっていたウスターソースを再現するために様々な野菜と果物をすりつぶし、砂糖、塩、酢を混ぜて熟成させてウスターソース擬きを作ったが、やはり、香辛料が高くあまり入れることができずに不満が残るできとなった。
もっとも、現在はとある商人にウスターソース擬きの技術を渡してより洗練されたウスターソースを手に入れてはいるのだが、日本食が食べたい私にとっては不満だった。
本当は味噌と醤油が作りたかった。
何よりも米が食べたかった。
その米があることに興奮が隠せなかった。
私は米を入手しようとしてあることに気がついた。
米を炊く方法が今は無いということに。
そもそも、今世で課金もしていないのに購入できるはずも無いのにバカみたいだ。
そう思い課金額を見ると五億と表示されていた。
どうやらあの神様は課金額を元に戻したようだった。
初めて神に感謝して米は諦めたが調味料を購入する事にした。
醤油に味噌、ステーキソースに焼肉のタレなどを購入してアイテムボックスに片っ端から放り込んでいく。
この作業は調味料だけで一万円に達するまで続いた。
調味料を使用することを楽しみに思いながらも衝動的に購入したことを後悔していた。
課金方法がわからない上に課金によるリスクもわからないのに五億という金額は膨大だが、計画的に使用しなければいけないはずのお金を使用してしまったためだ。
購入してしまったことは仕方ないと諦めつつ、私は米を炊くために『火仙』のコントロールを完璧にするための方法を考えてしまっていた。
どうやら私の食に対するこだわりは深いようだ。
もっとも、米を美味しく炊くために土鍋か、お釜、飯盒が必要なのでやはり年単位の時間が必要だろう。
テンションが上がっていた状態から一気に下がり、陰鬱な気分になりながら、次は上級職の宝珠を調べるためにアイテムをクリックした。
そして、今までよく見ていたアイテムの中に見慣れない上級職の名が入った宝珠を発見した。
上級職は全45種類あり、それぞれが様々な特色を持っている。
宝珠一つの値段が十万円もするために45種類全部購入すると四百五十万も払うことになる。
これはかなり痛い出費となることを覚悟して全45種類を購入した。
スキル覚醒の画面に戻り、クリックすると捧げる宝珠を選択してくださいと画面に浮かび上がり、今購入した宝珠の名前が出てきた。
私は獲得するスキルの詳細をメモするために紙を取り出した。
一つ一つを何度も繰り返して見直しながら間違いない様に詳細を宝珠一個に一枚ずつ記入していった。
詳細を調べる上でわかったことは一つの宝珠につき、二つのスキルを得ることができるということと全てのスキルが破格の能力を有していることだった。
現状で捧げることができるのは一つしか無い現状を考えれば、長所である生産性を高めるか、短所である戦闘面を高めるかが問題になった。
生産性を高めるとなればいろいろ候補があったが、『道士』と『魔法使い』から至ることができる上級職の『錬金術師』の宝珠から得られる『創成術』と『万物眼』が生産性を高める上で最も良いと思われた。
『創成術』は大気中にあるマナや使用者の魔力を消耗して様々な物を創成する事ができる術でこの世界ではショップからしか手に入れることができそうに無い仙石なども創成する事ができる。
現状でアイテムボックスに十分な材料があるといっても無限にあるわけでは無いのでこれからのことを考えればこのスキルは早めに欲しい。
早ければ早いほど材料に余裕を持つことができる。
そして、『万物眼』はありとあらゆる物体を解析することができる瞳だ。
その物体の強度、加工方法、弱点など様々な情報を見るだけで入手する事ができる。
ただし、現象や事象などは解析することができない。
この二つのスキルは確実に私の特性を高めてくれるだろう。
ユニット召喚をすることができるのなら間違いなくこの宝珠を選んでいたことだろう。
だが、現状では即決することができないことが悩ましい。
次に候補にあげているのは『武士』の宝珠になる。
『武士』の宝珠から得ることができるスキルは『五行剣技』と『流水舞踏』の二つになる。
『五行剣技』は刀と弓の才能を上昇させ、五行の特性を持った特殊な剣技を習得することが出来るようになる。
これは他の宝珠から得られるスキルと似たり寄ったりなのだが、私は転生前は日本人だったので刀に憧れを持っていたのでちょうどよかった。
私がこの宝珠にしたのは『流水舞踏』にある。
『流水舞踏』は反応速度と速力を上昇させて回避力を大幅にあげ、更に全ての感覚を研ぎ澄ますことができるようになる。
割りと術者関係の職は回避力が低くなっている。
また、感覚が研ぎ澄まされていれば、回避することができなかったとしても『仙術』による防御が間に合うはずだからだ。
そこから考えて感覚を上昇させる『流水舞踏』を有する戦闘職である『武士』の宝珠を候補にいれた。
候補を二つに絞り込んだ私はこの二つからどちらも選ぶことができずに悩みに悩んでいた。
次の新しく捧げることができるのがレベル20ではなく、レベル15であれば即決したのだが・・・・。
現状で作ることはできないが、鏢などの製作に緊急でも無いのにショップを利用したくない私はのどから手が出るほど『創成術』が欲しいが、旅の仲間であるアッペンとミランダの安全を考えれば『武士』の宝珠が望ましい。
しかも、夜が明ける前に決める必要もあった。
ミランダは私が金貨をアッペンに渡したことを知っており、しかも、あの金貨は街の滞在費や旅費などの生活費に充てられるために私的な理由で使用することができない。
そのために、流量可能な資金がない現状で購入することができないと思っているはずだ。
だからこそ、購入するできないと思っている間ならば、ミランダを誤魔化すことは難しくないはずだ。
この画面を今はミランダに見られることは絶対に避けなければならない。
故にチャンスはこの時しかないのだが、この手の選択はじっくりと考えていたので即決できないでいた。
そんな時に結界の感知機能に二人の人間とその二人を追いかける獣系のモンスターが引っ掛かった。
何事か結界で確認した座標を『千里眼』で覗くとこの周りでは生息していないはずのSランクの魔獣であるタイラントタイガーが二人の村娘らしき少女を追いかけていた。
はっきり言ってこれはあり得ない光景だった。
タイラントタイガーは魔王の支配領域で発生する瘴気を取り込んだ虎タイプの魔獣が変化する魔獣で性格は凶暴かつ凶悪でどのような動物でも喰らい、しかも、大食らいなので村で暮らしていた人を含む全ての動物が一匹のタイラントタイガーの餌食になったという話は割と有名な話だ。
それ故に魔王の支配領域からこのタイラントタイガーが来たとすると魔王の支配領域から離れているこの国に来るまでに何らかの情報が入ってくるはずだ。
しかも、このタイラントタイガーは明らかに獲物であるはずの二人の少女を弄んでいる。
タイラントタイガーが本気ならすでに二人の少女は生きていないはずだ。
なぜならば、このタイラントタイガーはわざわざ速度を少女達にあわせて走っているからだ。
普通、タイラントタイガーは手早く獲物の息の根を止めて、できる限り周りの食料を確保してから喰らう。
そこから考えて、こいつは野生のタイラントタイガーでは無い。
何者かに使役されているタイラントタイガーだと考えて間違いないだろう。
では一体どのような存在にこの狂暴な魔獣を使役しているのか?
この魔獣の生息地と性質を鑑みれば、おのずと答えは出てくる。
魔族であることは疑いない。
この世界の魔族は魔王に属する種族で実際に見たことは無いが、膨大な魔力と強靱な肉体を持つ種族だという話だ。
性格は残虐で排他的な存在だという話だが、人にとって敵対関係であるので鵜呑みにする事はできないと思っている。
特にこの世界の主要な教会の話は存在すら許すことのできない世界に害になる存在だという話だが、話を聞いていて嫌になるほど差別的なことを言っているので当てにならなかった。
だいたい、宗教が関わると前世でもこの世界でもややこしくなるので嫌になる。
そこでふと思ったことだが、私が持つ『救世主』の称号のことが教会にバレるととても嫌な予感がした。
私が知る限り『救世主』などという称号など過去の記録には一切無い。
教会は必ず、取り込もうとするだろう。
そして、私としては教会などと関わり宅など無い。
故に最終的に教会の狂信者が暗殺しようとするだろう。
救世主というモノも勇者や英雄などと一緒で利用するメリットの高い存在であり、利用することができなければ邪魔な存在だ。
まったく、神という存在は余計なことしかしないと思いながら現状の問題であるタイラントタイガーをどうするか考える。
かなりここから離れているのでタイラントタイガーはここまでやってこないだろう。
その代わり少女達は殺されるだろう。
後味は悪いが同行者がいるのに無茶はできないのでベターな選択と言えよう。
私の良心を無視すればの話だが。
助けに行けば、タイラントタイガーならば問題なく対処できるだろうが、使役している魔族がタイラントタイガーを倒されてどのように動くかわからなかった。
もっとも、これはタイラントタイガーを放置した場合もこれは同じ話なのだが・・・・。
そう考えると介入することがベストだと思い直し、介入することに決めた。
ただし、私自身がタイラントタイガーの元に行く気は無い。
一枚の符を取り出して、その符に私の髪と血を一滴たらして仙氣込める。
「身外身の術」
術の名前を唱えると私そっくりの分身が現れた。
『身外身の術』とは本来ならば、無数の小さい分身で敵を攻撃する術なのだが、この術に強化の符を使用すると本体と同じステータスの分身を生みだすことができる。
ただし、この分身は太極の効果を得ることはできず、更に私自身が操作する必要もあり、フィードバックもあるのでダメージも受けてしまう。
それでも、偵察に使用するにはベストな選択だろう。
私は分身を操作して座標に捉えたタイラントタイガーの元に転移した。
読んでいただき、ありがとうございます。