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天使、新たな力説明し、幼馴染、天使から受け取る

投稿に失敗して後ろの部分が投稿されていませんでした。誠にすいません。

 一時間の時間を経て喧騒はおさまった。

 ただし、ミランダの興奮がおさまったというより、ミランダの体力が尽き、絡むことができなくなっただけにすぎない。

 実際、ミランダは荒い息となり、大の字になって寝転がっているが、目はリヒトを睨むように鋭い眼差しを向けていた。

 ミランダに睨みつけられるように見られているリヒトだが、一時間ほどずっと服の襟を捕まれて絶え間なく揺すられていたというのにまったく堪えてはいなかった。

 止めようとしていた天使もリヒトと同じようにまったく疲れている様子はなかったのだが、鋭い視線をミランダに向けていた。

 この天使にとってリヒトは間違いなく救世主だった。

 いや、リヒトを転生させた神直属の天使達にとって、リストラ(消滅)の危機から救ってくれた救世主だった。

 そのリヒトの胸ぐらをつかみ、力の限り揺するなど神が許そうと自分達が許すわけにいかない暴挙だったが、救世主リヒトにとってミランダのいつも通り行動は安らぎを感じる行為であり、リヒトの目の前でもあったので怒りを抑えた。

 もっとも、視線があらん限りの怒りを視線でミランダに対して表現していたのであまり意味のがなかった。

 何より直接的な干渉をする事が禁止されていた天使にとってはミランダの存在自体が、嫉妬を掻き立てる邪魔な存在だった。

 同時に天使達にとってミランダという少女は自分達と同じように見守ることしかできない存在に落ちることが決定した哀れな存在だった。

 理由は簡単なことで共に旅をする上で彼女の力でははっきり言って足手まといでしかない脆弱な存在でしかなかった。

 それはミランダ自身にも自覚があった。

 彼女の職業は下級職の『盗賊』でしかないからだ。

そんな彼女が先ほどの戦闘を見てついていけると思うほど現実を見ることができないお花畑のような思考回路は持ち合わせていなかった。

 何処をどう考えても彼女では戦闘面では足下にも及ばず、情報収集でもリヒトならば、ミランダが動くよりも『千里眼』などのスキルを使用すれば、より多くの情報を得ることができる。

 彼女にできることはメイドなどの直接代わりを持つことができないような縁の下の力持ちになるしかなかった。

 天使はミランダのことは取り敢えず、後にして本来の役目を果たすことにした。

 天使にとってそれは何よりも優先すべきことだったからだ。


「救世主様、開放された能力を説明させてもらってもよろしいでしょうか?」


 リヒトは救世主という言葉に嫌そうな顔を浮かべた。


「本当に何とかならないか。救世主と呼ぶのは」

 

その言葉に対して天使は変えるつもりがまったく無いので。


「救世主様、すみません。先ほども申しましたが、我らが主が決められたことです。我らでは変えることができません」


 そう言って天使は自らの主に全てを擦り付けた。

 そうとは知らないリヒトは大空に眩しすぎる笑顔で親指を立てた転生させた神が現れたので転生してからの理不尽に対する恨みを全部込めて呪詛の念を送った。

 その呪詛のせいかわからないが、後日、とある神が一週間ほど酷い目に遭い続けて天使達の溜飲大いに下げる結果となった。

 天使はその様子をしばらく眺めていたが、時間がミランダの暴走で無駄に消耗してしまったことに気づき、不敬ではあるが話を進めることにした。

 

「救世主様、かなり時間をロスしています。説明させて頂きます」


 その言葉にどす黒い念を送っていたリヒトは我に返り説明を聞くことにした。


「すまん。説明してくれ」


「では説明させて頂きます。今回、開放された能力はショップで新たに購入する事ができるようになった上級職の宝珠を『太極』に捧げることにより特殊なスキルを習得することができます。ただし、一度捧げてるとやり直しはききません。よく考えて捧げてください。また、レベルが10の倍数になることにより『太極』に捧げることができるスロットは増えていきます。ですので、現在、レベルが12なので1つ捧げることができます」


 その説明にリヒトは少し考えて質問した。


「『太極』に捧げることで得ることができる特殊スキルは事前に知ることができるか?」


 羞恥心のために詳しく説明を受けなかった転生させられた時のようにならないようにするためにリヒトは多くの情報を求めた。


「可能です。ですが、その場合、複数の同じ上級職の宝珠を前もって購入する必要があります。なぜならば、宝珠を捧げる際に習得されるスキルの説明を閲覧する事ができます。その後、スキルを習得するか、しないかの選択する事ができます。この時、習得してもしなくてもその宝珠は消費してしまいます。(もっとも、キャンセルしたとしても『太極』は宝珠取り込みスキルは習得できませんが、その代わりにステータスを上昇させますが、救世主様が強くなり英雄になるためには必要なこと、ここは黙っていましょう)」


 この時に天使に罠を仕掛けられていたのだが、その事には気がつかずに天使の思惑通りに資金が許す限り上級職の宝珠を購入しようと心に誓ったのだが、ふと上級職の宝珠は『太極』に捧げるしか使用方法がないのか、気になったので天使に尋ねた。


「ラストジェネシスではなかった上級職の宝珠とは他に使い道はないのか?」


「もちろんあります。一度だけならば、救世主様以外の者を上級職にランクアップする事ができます。また、武器、防具、アクセサリーを製作した際に使用することによりランダムでその上級職のスキルを宿すことができます。その他にもあるので後で確認してください」


 基本的に『仙人』は個人としてはそれほど強い職とは言えない。

 ただし、戦闘に参加する者が増えれば増えるほどその能力が発揮される。

 生産職としての武具、防具、アイテムを生産する能力、パブ・デパブ能力のある『仙陣』を使用した際の付与師としての能力、鏢や仙符を使用した罠設置能力、そして、『宝具(パオペイ)』という特殊な能力を持つ専用アイテムなどがあり、全ての状況に対応することができるのだが、個人として見れば、やはり器用貧乏としか言えない。

 もっとも、覚醒者である『神仙』になれば、ある程度改善されるが、やはり、職業の特色は生きており、個人よりも集団戦闘の方が得意なのは変わらない。

 現在、リヒトは拠点がないのでスキル『ラストジェネシス』の編成ができなくなっている。

 編成とはキャラガチャにより引いたキャラを編成することにより、冒険パートのパーティー編成、軍団戦の部隊を編成、拠点の管理ユニットの設定などを行うことができる。

 ただし、編成を行うには拠点のコストが必要になる。

 そのために、拠点を持たないリヒトは編成を行うことはできない。

 ならば、現状でリヒト自身の力を発揮するにはキャラガチャによらないこの世界の者達が必要になる。

 ただし、転生させられた神にかなり底上げされたリヒトの能力について行けるほどの者は限られている。

 そんな都合の良い者が簡単に見つかるはず無い。

 だが、この上級職の宝珠を使えば、リヒトのために着いてきてくれる者達の能力の底上げをすることはできる。

 そのために、話を聞いたミランダが先ほどまで秘密を隠されていたことに怒りを宿した目をしていたが、一転目を輝かせて一言一句聞き逃さないように話を聞いていた。

 先ほどの戦闘で何もできなかったことに苦々しく思っていたミランダにとってはチャンスであることに違いないだろうが、リヒトはミランダが望んだとしても少なくとも誰か一人でも試してからではないと幼馴染であり、故郷を追放されたリヒトに着いてきてくれたミランダには安全が確保されるまで使用するつもりがなかった。

 ただ、試す人員は慎重に選ばなければいけないとリヒトは感じていた。

 条件が力を望んでおり、口が固く、無闇に力を誇示せず、犯罪を犯す心配のない、家族・親類が親しくなく、親しい友人もいないなど咄嗟にリヒト自身が思いついた条件は多岐にわたった。

 リヒトはここまで考えて溜め息を吐くしかなかった。

 できる限り、自身の情報を秘匿したいリヒトの立場からいっておのずと条件は厳しくなり、人材は限られてくる。

 問題は割と抑えが効かない幼馴染みを持つリヒトとしてはそのような都合の良い人物が見つかるまで我慢してくれるか、どうか、目を輝かせる幼馴染みを見たリヒトの心配は尽きることが無かった。

 そんなリヒトの様子を見てチャンスと見た天使は素早くリヒトを時間停止空間に隔離して、ミランダとアッペンに視線を向けた。

 その表情は今までのリヒトに向けていた朗らかな笑顔ではなく、忌々しげさを隠すことなく見下した表情でアッペンとミランダを見ていた。




ミランダsido


 何かをリヒトが考え始め、すぐに天使が何かをしたと思った瞬間にリヒトが灰色になり、まったく動かなくなった。

 天使が何かをしたのだと思った私は次の瞬間に身も凍る様な悪寒に襲われた。

 それが天使から放たれた殺気混じりの威圧感だと気がついた私は後に飛び退き、父の横に並んだ。

 そして、横に並んだ父の表情を見ると執事らしく表情が変わらない父の顔にびっしりと汗をかいており、顔が青白くなっていた。

 そして、天使を見ると今までの可愛らしい表情を捨て、明らかにこちらを見下した表情を向けた天使は放たれた殺気混じりの威圧も伴っており、ひどく恐ろしく感じた。

 そのために、今の私にできることは歯を食いしばり、視線を逸らさずに向けることしかできなかった。

 

「さて、これで救世主様に邪魔なをされず、お話ができますね」


 そう言った天使の存在感は大きく気を抜けば、気絶してしまいそうなほどまで上昇した。

 それでも、視線だけは逸らさず、睨み付けんばかりの強い視線を天使に向け続けた。


「いささか、貴女のような美人にそのような強い視線を受けますと照れてしまいますな」


 冷や汗を流しつつ、父は命が縮まる様な圧迫感の中で天使に軽口を言った。


「やはりこの程度ですね。予定調和過ぎて笑えません」


「どういう意味よ!!」


 天使の言葉に反発を覚えて、思わず叫んでいた。


「言葉通りの意味ですよ。この程度の威圧程度出す存在など数多くいます。貴女達程度が救世主様の同行者などととても笑えません」


「うるさい!それを決めるのはあいつよ!それに何であいつが救世主なのよ!」


「確かに旅の供を選ぶのは救世主様ですが、本来なら救世主様の旅には私たちのような最上位管理天使が守護者として同行するのが正しいのですが、主の命令で許されませんでした。まったく忌々しい」


 そう言って忌々しそうにブツブツ言う天使に聞きたいことをはぐらかされたように感じた私は叫んでいた。


「話逸らさないでよ!救世主ってどういうことなのよ!」


 そんな私に天使は面倒くさそうに言い放った。


「救世主様はその行いにより複数の世界を救われました。その過程で私たちもお救いになられました。それ故に救世主様なのです」


 その言葉にアイツの嫌そうな顔を思い出し、今まで何度も意図せぬ行動で人を救ってきた時の表情だったことを思い出した私はどうやら前世でも同じことをやってたんだとどうでもいいことを思った。

 

「まったく、アレは何考えてるんでしょうか?私達にも直接的な干渉を禁止するとは・・・・・・・・・」


 また、天使は呪詛を吐くようにブツブツ言い始めた。

 そんな天使らしからぬ姿を見せる天使にむかって叫んでいた。


「リヒトが持つ上級職の宝珠があれば、私だってアイツについて行くことだってできる」


 そう天使にむかって叫んでいた。

 そんな私に天使は首をヤレヤレと言わんばかり振ると


「貴女は結局、救世主様頼りなのですね。そんなことで旅の供などつとまると思っているんですか。本当に嘆かわしいですね」


 そんなわかりきった正論を言われ私は叫んだ。


「うるさいのよ!情けないことぐらいわかってる!」


「それに貴女には戦いの才能が欠落しているとは言いませんが、それほど高くありません。その程度の実力で上級職になることができたとしてもついていくことは難しいでしょう」


 そんなわかりきったことは私自身がよく知っている。

 たくさんの人に言われ続けたことだ。

 私自身が必死に努力しても届くことなど無かったからだ。

 あの誘拐された時に血塗れになったリヒトに助けられたが、血塗れになったリヒトを恐怖してその時は拒絶してしまった。

 後であんなに必死になって助けてくれたリヒトに恐怖して拒絶してしまったことに自己嫌悪を感じた私は謝るためにリヒトの元に部屋に行こうとして何かを洗う音に気がつき、気になった私は音の方にいくと手を洗うリヒトがいた。

 ただ、ひたすら奇麗な手を洗うリヒトに違和感を感じ、近くに行くとリヒトは驚いていたが、謝るチャンスだと思い何かをしているのかを聞くと血がついているから洗っていると言っているリヒトに愕然とするしかなかった。

 この時、私は自分に対する嫌悪感に吐き気を我慢することに必死になった。

 幼馴染みが私なんかを護るために人殺しをして幻覚を見るほど苦しんでいたというのに気まずいというどうでもいい理由で何日も謝りに行くことがなかった自身という存在が心底気持ち悪かった。

 でも、ここで吐くわけにはいかなかった。

 ここで吐けば、リヒトを更に傷つけてしまうと思った私は我慢するしかなかった。

 それ以上にリヒトを助けねばならないと感じた。

 だから、私は唯一できる一緒にリヒトの手を洗うしか無かった。

 そして、小一時間一緒に手を洗い納得したリヒトがこの場を去った瞬間に私は嘔吐した。

 食事で食べた物を全て出しても止まることは無かった。

 嘔吐で苦しむ中私は誓いを立てた。

 必ず、リヒトを護る存在になると誓った。

 最初に騎士になろうと騎士団長のバルトレックス様に師事したが、数日鍛錬してバルトレックス様には自身の身を守ることを重点に考えよと言われ、その他の方々からも似たようなことを言われた。

 結局、行き着いたのは同じ『盗賊』職の人に戦い方ではなく、情報収集の仕方を学ぶしかなかった。

 だからといって、誓いを諦めることができなかった私がようやく手に入れたチャンスを棒に振ることはできない。


「うるさい!私は誓ったんだ!あの日に!たとえどんなことをしてもあの誓いを果たしてみせる!自分自身に誓った誓いを絶対に果たしてみせるんだ!」


 私は涙を流しながら天使にむかって叫んでいた。

 すると天使は急にまじめな表情をして私に向かってきた。

 

「私達天使は救世主様に直接的な干渉は先ほど言った様に禁止されています。ですが、間接的には干渉することはできます」


 そう言いながら天使はゆっくりと近づいてきた。

 ただ、手には光る何かを持っていた。


「貴女は見込みがあります。私達天使は救世主様の手助けがしたい、貴女は救世主様について行きたい。私達と貴女の利害は一致しています」


 天使は光る何か渡そうとしていた。

 私は逡巡していた。

 光る何か受け取っても問題が無いのかがわからなったから。

 それでも、光る何かに惹かれている私がいた。

 

「これは今は役に立ちませんが、いつの日にか日の目を見る日が来るかもしれません。ですが、それは貴女が諦めなければの話です」


 そう言って天使は私の目の前に来て、光る何かを私に尽きだしていた。

 それを私は。


「幼馴染を惑わせるのはやめろ」


 いつの間にかリヒトは天使の首に剣を突き立てていた。


「救世主様、お見事です。時間停止をこれほど速く解除されるとは私も予想しませんでした」


 本当に喜んでいる天使に対して、リヒトは冷めた瞳で天使を見ていた。

 本当に私を大切にしてくれていることに胸が熱い想いで満たされる一方で、護られる存在でしかない自身の存在にどす黒い何かが溜まっていくのを感じた。

 だからなのか、私はすでに天使から光る何かを受け取っていた。

 そして、リヒトに気がつかれないように天使は新しい光る何かを作り出していた。

 その様子に私は天使からの贈り物を受け取っていることを秘匿することにした。


「仕方ありません。ここまでにして退散させていただきましょう。あぁ、名残惜しいですが仕方ありません。では失礼します」


 そう言って天使は消えた。

 リヒトは苦虫を嚙み潰したような表情をしたが、溜め息をついて独り言を呟いた。


「神話の英雄のように悲惨な結末にならないように注意しないといけないか。神だろうと天使だろうと悪魔だろうとそこは関係ないよなぁ。特にイアソンにはなりたくないからなぁ。ハァ~~~~、前途多難だ」


 そう言って天使が消え去った場所をリヒトは強いまなざしで眺めていた。


「いやはや、何とも刺激的な時間でしたが、そろそろ野営の準備をしないといけない時間のようです」


 そう父は場を和ませるように辺りが暗くなってきたこと伝えた。


「そうだな。もう少し進みたかったが仕方ない。さすがにここで野営をするのは嫌だからもう少し行ったところで野営するか」


「確かにここでするのは嫌だ。仕方ないから行くわよ」


 戦闘後の盗賊の死体が残るここで野営などしたくなかった私は先頭に立って歩き始めた。

 だが、リヒトは後ろで地面に何かの札を二枚ほど地面に貼っていた。

 早く行こうと声をかけようとした瞬間に札が燃えて、死体は地面に沈んでき、戦闘の跡は綺麗になくなっていた。

 その様子を見て私はこの男なんでもありだと思いながら、本当についていけるのか不安になる自分がいた。


「後始末はこれでいいか」


 そう言ってリヒトはこちらに向かったきた。

 私は遠く感じるリヒトに対して諦めそうになる自身を叱咤しながら、改めて必ず護られるだけのだけの存在から脱却することを誓い前に歩き始めた。

 その瞬間に天使から贈られたモノが私の中で脈動するのを感じた。

 そして、私の今も顔はきっと歪んだ笑みを浮かべているように感じた。


 読んで頂きありがとうございます。

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