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三つの道

 原隊復帰しない責任をすべてホエテテに押し付けて、のうのうとしている自分を嫌悪しながらも、私たちは次第に鬼角族たちの生活に慣れていった。鬼角族は年に五回野営地を移動するという。春から秋にかけて、おおよそ二月ふたつきごとに羊へ草を食べさせるために移動し、冬には少し長く同じ場所に留まる。

 日の出が遅くなり、早く夜になるにしたがって、草原を吹く風が冷たくなってきていた。

 あと数日で冬の野営地に移動するということをハーラントにきいて、私は今後のことを考える。野営地はここからさらに西になるとのことなので、とりあえずターボルに戻って連絡が届いているかどうかを確認するべきか。冬に入る前に羊の半数程度は肉にするので、これから鬼角族は忙しくなるはずだ。その仕事を手伝うという道もある。本格的な冬になる前にターボルで買い付けた食料を持って、バウセン山へ交渉に向かうという任務も忘れてはいけない。冬があける頃が、命令書に書かれた六か月がちょうど経過する時期なので、いっそのこと、このまま冬を越すという方法もある。いろいろと考えた結果、私は一番つまらない選択肢を選ぶことになった。


 「ハーラントさん、ひとつ頼みがあるんだがいいかな」

 族長の天幕の中で、私は筋肉ダルマに声をかけた。

 「君たちがこれから忙しくなるというのはわかっているのだが、冬になる前にぜひともやっておかなければならないことがある」

 「それはキンネクを害するようなことか」力のこもった視線が、私を射る。「もちろん、お前がそんなことをするとは思っていないがな」

 「そういうことにはならないと思っている。ひとつは私たちの町に、伝言が届いていないかを確認したい。これにはジンベジを送る」ハーラントから返事はない。「そして、私は鍛冶屋たちとの約束を果たすためにバウセン山へ向かう。警護にユリアンカさんに一緒に来てもらえば助かる」

 そのことばに、ハーラントはニヤニヤと下卑た笑顔をみせた。

 「妹を望むのか。だったら、バウセン山から戻れば盟約式をあげるか」

 ここでは、結婚式ではなく盟約式と呼ぶらしい。私は、そのことばに真面目な顔で返答する。

 「盟約式はぜひおこなってほしい。大男のホエテテと、ウーリンデさんとの盟約式だがな」

 「おお、それはいい。あの男は人間にしておくにはもったいない。角がないのが残念だが、あれなら生まれてくる子どもは立派な戦士になるだろう」

 やはりホエテテは鬼角族へのうけがいいようだ。

 「ホエテテは置いていく。君たちの仕事を手伝ってもらうつもりだから、立派なキンネクの男にしてほしい」ハーラントがうなずく。「だが、私たちの軍という組織では、勝手に部隊を離れると逃げ出したとして命を奪われることになる。私があの大男を法律的に問題ないように軍隊から離れられるようにするまでは、もうしばらく盟約式を待ってほしい」

 ハーラントの笑顔が消え、例の射抜くような目つきにかわった。

 「もし、あの男がキンネクの一員になったのであれば、何人なんびとであろうと傷つけさせるわけにはいかないがな」

 理解していることを伝えるために、首を縦に振る。

 「私がバウセン山へ行くのには別の理由もある。君たちは、定期的に黒鼻族の皮を代金として、鍛冶屋たちになにか仕事を頼んでいたんじゃないのか。私の持ってきた小麦で、その品物を手に入れてきてやるぞ」

 ハーラントによると、二足歩行の羊の皮を麻布を、包丁のような金属製品と交換していたらしい。キンネク族の戦士が半数死んだため、今は金属製品が余っているそうなので、すぐに必要になるものはないそうだ。

 必要なものがあれば、明日までに伝えるよう頼み、その夜は旅の準備をおこなった。

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