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お土産

 「我らの鍛えた剣に目をつけるとは、お前たちも目が高いな。あれほどの得物は、このルビアレナの職人でなければ鍛えられん。だが、しかるべき対価を支払ってもらえるのであれば――」

 「いえ、今回はあくまで名高い鍛冶屋族のみなさんに、ご挨拶するためにおうかがいしただけです。持ち合わせもないので、剣の依頼はまた後日にいたします」

 私の返事に、村長は目に見えてガッカリした表情になった。なにかことばの選択を間違えたのかもしれない。

 「ご挨拶ということで、今回はいくつかのお土産を持参いたしました。いかんせん、軍人が手に入れることのできる素朴なものですが、なにかお気に召すものがあれば、次回からはその品物をお持ちします。ホエテテ君、私の馬に結わえてある大袋を持ってきてくれないか」

 村長の許可を得て、ホエテテは表に出ていった。

 「村長におうかがいしたいことがあります。なぜ、人間のあなたたちが、このルビアレナでひっそり暮らしているのでしょうか。周囲には鬼角族しかいない、この西方に」

 それまで退屈そうにしていたユリアンカが、鬼角族ということばに険しい顔をする。だが、今は我慢してもらうしかない。

 「別に隠すこともない」村長は事もなげにいった。「いまから二百年ほど前、この山の近くに人間の植民市があった。このあたりには背の高い木々が生い茂っていたから、はじめ植民市への木材供給のためにこのルビアレナ村ができたんだ」

 かつて、このあたりに人間による植民市があったというのは初耳だ。そもそも、この村に住んでいる背の低い人々は、本当に私たちと同じ人間なのか。

 「だが、あっというまに木という木は切り倒され、この山は禿山になってしまった。だが、禿山になってはじめてわかったんだが、この山からは良い砂鉄が取れるんだ。そこで、このあたりに職人たちがあつまり、鍛冶屋の村ができた。燃料にするために山には再び木が植えられ、植民市の人々の生活を支えていた」

 村長は陶器のコップを手に取り、水をゴクリと飲みほした。

 「ところが、植民市が――」

 ちょうどホエテテが戻ってきたので、村長は唐突に話をやめた。その視線は大きな袋に釘付けで、チラチラとこちらに期待した顔をむけるのがわかる。贈物を渡さなければ、話の続きもきけないだろう。

 ホエテテに礼をいい、袋の口を開いて中から贈物を取り出す。

 まずは酒だ。陶器に入った、火酒が三本。

 「酒は兵士の血液といいます。周辺で一番おいしいとされる火酒です」

 軍の酒保しゅほで手に入るものなので、それほど高級品とはいえないが、ハーラントが蒸留酒を飲みたがっていたことから持ってきたのだ。

 「おお、酒か。どんな味なのかたのしみだ」

 思ったより反応がないことに失望する。あまり酒は飲まないのかもしれない。

 「こちらは、肉をおいしく食べるための香草セージと、肉荳蔲ニクズク。味に刺激を与える辛子です」

 小さな壺を三つ取り出し、テーブルの上に置く。村長は不躾に壺を手に取り、ふたを開けて中身の匂いをかいだ。

 「なんともいえん匂いだな。これで肉がうまくなるのか」

 これも反応が悪い。

 「一度お試しください。こちらは私たちが日常的に使う、牛の皮です二頭分持ってきました」

 二つあった大きな袋のひとつには、牛の大きな一枚皮を二組入れていた。鬼角族たちが、鍛冶屋たちと取引するとき、黒鼻族の皮を渡すという話から、大きな牛の皮なら受け入れてくれるのではないかと考えたのだ。まさか黒鼻族の墓を暴くわけにはいかないだろう。

 「大きな皮だな。うし――のことは知らんが、固くて分厚くて、馬や羊の皮とは違うのがいいな」

 牛皮は気に入ってもらえたようだ。

 「そして、こちらは塩です」

 塩にも反応はなかった。岩塩の採掘地などが近くにあるのかもしれない。袋から、最後のお土産を取り出す。

 「これは飴といって、子どもたちのおやつです。甘いので、ぜひ召し上がってください」

 ユリアンカの目が光った。

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