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村長

 「ええっ、鍛冶屋族の皆さんは人間のことばを話せるんですか」

 大声を出すジンベジを手で制するが、私もまったく同じ気持ちだった。

 「人間のことばを話せるもなにも、わしらは人間だよ」

 平均的な男性より、頭一つは背が低い鍛冶屋たちが普通の人間だとはすぐには信じられない。だが、背が低いこと以外は、角があったり、羽が生えたり、毛むくじゃらだったりするわけでもない。

 「人がこの村を訪れるのは十年ぶりくらいかな。歓迎するぞ。わしはベエカ。村長のところへ案内する。馬は預けておけばいい」

 そういうと、男は私たちについてくるように手を振った。

 もともと鍛冶屋たちとの友好関係樹立が目的なので、断る理由はない。ベエカと名のる男の後をついていくことにする。

 「ユリアンカさん、鍛冶屋たちは人間じゃないっていっていってましたよね。どういうことなんですか」

 私の質問に、ユリアンカは不思議そうな顔をした。

 「いや、お前達人間とは全然違うじゃん。みんなちっこいし。その割には体はゴツイし」

 鬼角族からすると、確かに異種族に見えるのかもしれない。

 「それより、人間のことばが話せるのはビックリしたよ。だったら、最初からあたしがくればよかったじゃん」

 おそらく、鬼角族にとっては鍛冶屋たちが人間であろうとなかろうと、どうでもいいのだろう。むしろ、鬼角族がなぜ、この寒村を自分たちの支配下に置かないのかということの方が興味深い。

 そんなことを考えて歩いているうちに、一軒の家の前でベエカが止まった。

 「村長。珍しい来客ですよ。人間の男が三人もきました」

 大きな声で、家の中にいるらしい村長をよぶ。

 このあたりの家は、日干し煉瓦レンガでつくった壁の上に、茅葺かやぶきの屋根という独特のものだった。入り口には麻のようなもので編んだ布が掛けられている。その麻布の奥から、一人の男があらわれた。

 やはり背こそ低いが、長く伸ばした髭が臍の下あたりまで伸びた貫禄のある風体である。

 「おう、ベエカか」髭の村長は、私たちをしばらく見つめた後にいった。「これは驚いた。本当に人間だな。何年ぶりだ」

 「村長、せっかくのお客さんに失礼じゃないか。挨拶ぐらいしなよ」

 「これは失礼した。村長のノアルーという。遠路はるばる、このルビアレナへようこそ。旅人を歓迎するぞ」

 冷静になった村長は、頭をペコペコ下げて何度も謝った。頭を下げるたびに髭が地面に触れそうになる。

 突然の訪問に、わびる必要などないことを伝えると、村長は我々を家の中に招き入れてくれた。

 日干し煉瓦の家は、まだ太陽が高いというのに涼しく、なにかの植物で編んだ椅子と木のテーブルが置かれている。村長は奥から椅子を持ってくると、座るようにいい残し、また奥の部屋に入っていった。

 水差しと陶器のコップを手に戻り、水を注ぐ。

 「なにもないところだが、とりあえず冷たい水で喉を潤してくれ。女房が死んで今は男手ひとつだが、晩飯はなにかうまいものを食わせてやる」

 革袋の中で、ぬるく変な味がするようになった水を飲んでいた私たちにとっては、きれいな冷たい水はなによりの御馳走であった。

 「それで、今日は何の用でルビアレナまで来たんだ、旅の人よ」

 「はじめまして、私はローハン・ザロフといいます。この大男がホエテテ、こちらがジンベジです。この女性がキンネクの族長ハーラントの妹ユリアンカさんです」

 ユリアンカ以外は、みな頭を下げて感謝の意を示す。鬼角族には、鍛冶屋への敬意というのはないのだろうか。

 「私たちがここへきたのは、皆さんと交流を深めるためです。鬼――キンネクの皆さんが持っていた大太刀は、みたこともないような業物わざものでしたので、どれほどの優れたたくみが鍛えたのかということに興味を持ちました」

 「ふーん、そうかそうか」

 村長の目が怪しく光ったように見えた。

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