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兄妹喧嘩

 「まず、一つ確認しておきたいんだが」私はハーラントを見つめていった。「キンネクでは、人の家に勝手に押し入って、鍵のかかった箱を壊し、大切なものを奪い取ることは罪になるのかな」ちらりとユリアンカの顔を見る。「そして、その罪への罰はどのようなものになるだろう」

 ハーラントは面白そうに、私とユリアンカの顔を交互に見ながら答える。

 「そうだな、そのようなことは我がキンネクでは許されない。我も決してそのような者を許さないから、そんなやつは死刑だな。よほどの理由があれば、罪一等を減じて右腕を切り落とす」

 ユリアンカが、腕を切り落とされることを心配していたのには理由があるわけだ。

 「少なくとも、私たちの軍隊でも同じだ。腕は切り落とさないが、死刑か、罪一等を減じても鞭打ちの刑に処される。だが、友人の妹さんを死刑にするわけにも、鞭打ちにするわけにもいかないので、形だけの処罰をおこなった」

 「それで、我の妹にどんな罰を与えたのだ」

 「尻叩きの刑だ」

 それをきくと、ハーラントは大声で笑いはじめた。ユリアンカは顔を伏せている。

 「子どもへの罰としては、そのあたりが適当かもしれんなローハン。妹からきいていた話とは違うが、お前の話の方が信用できそうだ。なにより、こいつが黙っていることが証拠だろう」急に真剣な顔をしたハーラントが、低い声でたずねた。「だが一つだけ確認したい。妹の尻を叩いたのは誰だ」

 「もちろん私だ。すべての責任は私にある」

 その答えに、ハーラントは相好を崩した。

 「だったら尚のことよい。キンネクでは女の尻を叩いてもよいのは、親と夫だけだ。これでユリアンカは、お前以外と血の盟約をむすぶことができなくなった。まさか、面白半分に妹の尻を叩いたのではないだろうな」

 ホエテテとジンベジは、私たちの話をきいて目を丸くしているし、ユリアンカはうつむいて顔を見せない。

 「その話は前にしただろ、ハーラントさん。君の妹は美しいたまだ。そして私は石にすぎない。石に玉はもったいな――」

 遮るようにハーラントが、強いことばをかぶせる。

 「我も以前、お前に頼んだなローハン。妹のユリアンカを嫁にもらってくれと。だが、お前は若い嫁に裏切られ――」

 「おい、ハーラント!」思わず怒鳴ってしまうが、すぐに冷静さを取り戻す。「いや、ハーラントさん。そのことは、いま関係ないと思いますよ」

 二人の部下の方へ視線を走らせると、二人ともこちらに視線を向けないようにしているのがわかった。

 「兄貴! なんであたしがこの爺と血の盟約を結ばなけりゃならないんだ」

 突然ユリアンカが叫んだ。これはいい機会だ。

 「ほら、ユリアンカさんも嫌がってるじゃないですか。私も、嫌がっている相手と結婚することなんてできませんよ。妹さんは、わがままで、そこらの兵士を片手で捻るような女丈夫じょじょうふです。それに、若い嫁はもうこりごりです」

 ハーラントがなにか答えようとしたが、ユリアンカの声でかき消された。

 「なんで、この爺のほうが断ってることになってるんだよ。あたしが断っても、爺が断るとかありえないだろ」

 ジンベジが俯きながらニヤニヤしているのがわかるが、ここで出ていけとはいえないだろう。大男のホエテテは、できるだけ目立たないように体を小さくしている。

 ハーラントが妹をなだめ、ユリアンカは兄を罵倒する。

 途中から人間のことばではなくなったので、その意味はわからないが、内容は手に取るようにわかる。 

 ああ、もうムチャクチャだ。長年かけて築き上げた私の歴戦の勇士というイメージが、ガラガラと崩れていくのがわかる。

 それに、そもそもここに来た目的のことを伝えなければならない。おそるおそる、兄妹の会話に割り込んだ。

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