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刑罰

 ユリアンカを起こし、後ろ手に縛った紐を握る。鬼角族のことばで、ユリアンカが侍女達になにかを告げると、心配そうな顔をしていた三人の女は安心したように敷物の上に座った。

 私に導かれるままに天幕をでたユリアンカは、さきほどまでの形相が嘘のように心配そうな表情で、罰とはなんなのか、まさか腕を切り落としたりはしなよねと、さかんにその内容を知りたがった。

 「キンネクでは、泥棒は腕を切り落とすのかもしれないが、明日にはハーラントのところへ向かうのに妹の腕を斬り落としたりするわけがないだろう。だが、多少は痛みを感じてもらわないと、他の兵士たちに示しがつかないから、覚悟はしてほしい」

 途中で、声をきいたツベヒが来たので、本部天幕の前にできるだけ大きなテーブルを持ってくるように頼んだ。テーブルが来ると、全員集合の鐘を鳴らす。兵士たちがぞろぞろと集まってきたので、ツベヒに頼んで整列させる。

 「ホエテテ君、ジンベジ君、少し手を貸してくれるか」

 大男のホエテテと、ジンベジが前にでてきたので、ユリアンカをテーブルに向かってギリギリのところに立たせる。

 「ユリアンカさん、体を前に倒してテーブルの上にのせるんだ」

 ユリアンカははじめ驚いたような顔をし、次に真っ赤な顔をして叫んだ。

 「なんで、なんでそんなことしないとダメなの。なにをしようっていうんだよ!」

 「強盗への罰を与えるんだ」

 私はそういうと、二人に目配せして、三人でユリアンカの上半身をテーブルの上に押さえつけた。蹴られないように注意することを指示し、整列している兵士たちに向きなおる。

 「諸君、軍法に照らすと、ユリアンカさんの罪状は死刑だ」

 ジタバタ暴れていたユリアンカの動きが止まった。

 「だが、異邦人であること。我々の法を知らないことをふまえると、罪を一等減じてもよいと考える。死刑の次の刑罰はなんだった、ツベヒ君」

 「鞭打ちだったと思います、隊長」

 ちらりとユリアンカを見ると、また逃げ出そうと暴れている。ホエテテとジンベジが、なんとか動かないように必死で押さえつけていた。

 「そうだな。鞭打ちが適切だが、ユリアンカさんは我々の朋友であるハーラント氏の妹君でもある。鞭打ちで、玉の肌を傷つけるわけにはいかない」

 「なんで玉の肌って知ってるんですかー」

 誰かが茶々を入れるので、右手で制して続ける。

 「そこで、懲罰として尻叩きの刑とする」

 ドッと笑い声がおき、中には口笛を吹くものもいた。

 この刑罰は痛みを与えるのが目的ではない。恥をかかせることで、二度とやらないという反省をうながすためにおこなうのだ。ユリアンカの性格からして、逆恨みされる可能性は極めて高いことはわかっているが、規律の面から放置しておくわけにはいかなかった。

 「それでは刑を執行する」

 いっそう暴れるユリアンカを、ホエテテとジンベジは全力で押さえつける。

 「爺やめろ、ブッ殺すぞ」

 テーブルの方向に向きなおり、右手を大きく振り上げた。

 できるだけ大きな音が鳴るように、ユリアンカの臀部でんぶを平手で叩く。

 パチンという音が鳴ることを期待したが、ボツンという重く小さな音しか鳴らなかった。腕を振り抜かないとダメなのか。

 「覚えてろよ、絶対に殺すからな。切り刻んで、鳥の餌にしてやる」

 右手を振り上げ、今度は表面だけ叩いて振り抜くことを考えた。

 パン、という乾いた大きな音が鳴る。

 「痛てーんだよ、殺すぞ」

 無視して右手を振り上げ、振り下ろす。

 「兄貴にいいつけて殺してもらうからな」

 振り上げ、振り抜く。

 「いいかげんにしとけよ、クソ爺」

 だんだんと罵りの声に力が無くなってきたが、最後までやめるわけにはいかなかった。

 振り上げ、振り抜く。肉体的な被害ないはずだが、精神的な被害が大きいのだろう。

 規定の十回が終わるころには、ユリアンカはぐったりとして抵抗する気もなくなっていたようだった。

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