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夜襲

 反乱軍と戦っている状況下ではあるが、この寄せ集めの部隊において、ナユーム族と私たちの間には微妙な力関係がある。もともとナユーム族百騎、ハーラントのキンネク族六十騎、私たちの騎兵二十騎という構成なので、最大の戦力を持つナユーム族が私の命令をきかないなどといいだす可能性を無視できないのだ。

 イングが拳闘ボクシング贈物ギフトで大男を打ち倒したことで、ナユーム族は私たちの実力についてはかりかねている部分がある。人数は少ないが、実はものすごく強いのではないかという勘違いだ。確かにジンベジに勝てる戦士はあまりいないだろうが、他の兵士たちは騎兵としての経験も少なく、鬼角族の兵士と比べると数段劣っている。かくいう私も、訓練なら負けることはないだろうが、実戦になると体が凍り付き役に立たないし、シルヴィオは風魔術が使えるが、遠距離まで弓を届かせることくらいにしか使えない。ツベヒは戦士というより、命令を下す指揮官なので強いとはいえない。私たちがキンネク族と力を合わせても、ナユーム族のほうが戦力としては上なのだ。

 本来、二十名の斥候を襲撃する部隊の指揮は私がとるべきただと思っていたのだが、ツベヒに任せざるを得なかったのも、それが理由だ。ハーラントと私が揃っていれば、ナユーム族のエナリクスも妙なことをしないだろうということだ。そもそも、なぜナユーム族が私たちを助ける気になったのかわからない現状では、敵と同じくらいに味方を疑わなければならない。

 日が暮れてくると、天幕を張り食事の準備をする。明日にはリヒハールという町に到着するが、前回とは異なり昼間に攻撃を仕掛ける予定だ。ライドスの分析によると、リヒハールに駐屯するのは槍兵小隊六十名程度。当然、私たちの存在は伝令により伝えられているだろうから、奇襲にはあまり意味がないという判断だ。槍衾やりぶすまに正面から突っ込むようなことをしないのであれば、十分に撃滅できる。小さな町の守備隊などとは戦いたくないが、敵をおびき出すためには必要な作戦なのだ。麦粥の食事をとり、見張りの順番を決めて眠りにつく。明日の戦いのために、できるだけ休養を取ってかなければならなかった。


 目が覚めると、天幕の中は真っ暗で、周囲からは規則正しい寝息やいびきがきこえていた。

 なぜ目が覚めたのだろう。立ち上がろうとしたとき、首筋にチリチリとした痺れを感じた。

 殺気だ。

 私に対するものではないが、間違いない。隣に寝るイングを揺り起こす。

 目をこすりながら、イングが体をこちらへ向ける。

 「なんだよ、親父。まだ夜中だぞ」

 「敵襲だ。できるだけ音を立てずに、眠っている兵隊たちを起こしてくれ。声は出すな。全員が武器を持ったら天幕を出る」

 イングは私の顔をマジマジと見て、冗談でないことを理解して動きはじめた。

 見張りは二人いるはずだ。気がついていないのか、それとも警告を発することができない状態なのか。戻ってきたツベヒたちと勘違いしている可能性もある。もしそういうことなら、敵は騎兵ということになるが、ツベヒたちはどうしたのだろうか。待ち伏せたつもりが、逆に襲撃を受けたのかもしれないし、予想以上に敵が多数であったのか。

 「みんな武器を持ったぜ、親父」

 さすがに鎧を着る時間はなかったが、まだまだ寒いということもあり、兵士達のほとんどは上着を着たまま寝ていたので、戦いの準備はすぐに終わったようだ。

 殺気は感じるが、まだ声はでる。大きく息を吸って腹の底から叫んだ。

 「敵襲! 敵襲! 敵襲! 武器を持って敵に当たれ! 騎兵は敵だ!」

 一瞬、ナユーム族が裏切った可能性が頭をよぎるが、おそらく違うだろうという予感があった。

 全員が天幕から躍り出ると、再び怒鳴る。

 「私を中心に円陣を組め! ハーラントさん敵襲だ! ナユーム族にも伝えろ! 敵襲!」

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